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カテゴリー「イギリス軍」の記事

第二次大戦後のイギリス空軍及び海軍の戦力消長について連載しています

2021年2月21日 (日)

第二次大戦後のイギリス空軍(RAF)とイギリス海軍航空隊(FAA)の)記事一覧

前回で一応の終了となった「第二次大戦後のイギリス空軍(RAF)及びイギリス海軍航空隊(FAA)の連載記事の一覧表です。

記事タイトル 記事内容
1950年代前半のイギリス空軍(RAF)・その1 1951年末時点におけるイギリス空軍の戦力概要
1950年代前半のイギリス空軍(RAF)・その2 1952年から55年にかけてのイギリス空軍
デ・ハビラント・ヴェノム戦闘機の実戦配備、イギリス最初の原子爆弾"ブルーダニューブ"の生産配備
1950年代後半のイギリス空軍(RAF)その1 1956年末におけるイギリス空軍の戦力概要
イギリス初の遷音速戦闘機ホーカー・ハンターの戦力化
全天候迎撃戦闘機グロスター・ジャベリンの実戦配備開始
イングリッシュ・エレクトリック・キャンベラ戦術爆撃機の戦力化
ヴィッカース・ヴァリアント戦略爆撃機の実戦配備開始
アブロ・シャクルトン海上哨戒機の戦力化
1950年代後半のイギリス空軍(RAF)その2 1956年から60年までのイギリス空軍概況
1957国防白書発表
中距離弾道ミサイル"ブルーストリーク"開発中止
イギリス初の水爆実験
水爆実用化までの繋ぎとなる暫定メガトン兵器"バイオレットクラブ"と"イエローサンMk.1"生産配備
1950年代後半のイギリス空軍(RAF)その3 米英相互防衛協定締結による、イギリスの核兵器開発の伸展
アメリカの核爆弾をイギリスに提供する"プロジェクトE"とアメリカの中距離弾道ミサイルをイギリス空軍の管理下で運用する"プロジェクトエミリー"について
1950年代前半のイギリス海軍航空隊(FAA) 1950年代前半のイギリス海軍航空隊及び航空母艦の配備概要
FAA初の実用ジェット艦上戦闘機スーパーマリン・アタッカー実戦配備
空母「イーグル」就役
1950年代後半のイギリス海軍航空隊(FAA) 1950年代後半のイギリス海軍航空隊及び航空母艦の配備概要
ホーカー・シーホーク艦上戦闘爆撃機とデ・ハビラント・シーヴェノム艦上夜間戦闘機、フェアリー・ガネット艦上対潜哨戒機の実戦配備
空母「アークロイヤル」就役
1960年代前半のイギリス空軍(RAF)その一 1961年末におけるイギリス空軍の戦力概要
超音速迎撃戦闘機のBAC・ライトニング配備開始
戦略爆撃機のハンドレページ・ヴィクターとアブロ・ヴァルカンの戦力化
1960年代前半のイギリス空軍(RAF)その二 1961年から65年にかけてのイギリス空軍概況
イギリス初の実用水素爆弾"イエローサンMk.2、戦術核爆弾"レッドベアード"、空対地戦略核ミサイル"ブルースチール"実戦配備
超音速戦術核攻撃偵察機"TSR2"計画中止
アメリカ製のF-4ファントム戦闘爆撃機の採用決定
1960年代後半のイギリス空軍(RAF)その1 1966年末におけるイギリス空軍戦力概要
海軍に先駆けてブリティッシュ・ファントムの実戦配備開始
1960年代後半のイギリス空軍(RAF)その2 1967年から70年にかけてのイギリス空軍概況
RAF戦闘機軍団(ファイター・コマンド)と爆撃機軍団(ボマー・コマンド)を統合した新組織のストライク・コマンド発足
RAF爆撃機による戦略核攻撃任務の終了
1960年代前半のイギリス海軍航空隊(FAA) 1960年代前半のイギリス海軍航空隊及び航空母艦の配備状況
艦上全天候迎撃戦闘機のホーカー・シーヴィクセンの戦力化
艦上攻撃機のブラックバーン・バッカニアの実戦配備開始
1960年代後半のイギリス海軍航空隊(FAA) 1960年代後半のイギリス海軍航空隊及び航空母艦の配備状況
新型空母「CVA-01」計画中止、艦隊空母の近い将来の全廃方針決定
1970年代前半のイギリス空軍(RAF) 1970年代前半におけるイギリス空軍の戦力概要
ブリティッシュ・ファントムの戦力化進行
1970年代後半のイギリス空軍(RAF) 1970年代後半におけるイギリス空軍の戦力概要
英仏共同開発の戦術攻撃機ジャガーとV/STOL攻撃機ハリアーの戦力化
1970年代のイギリス海軍航空隊(FAA) 1970年代におけるイギリス海軍航空隊及び航空母艦の配備状況
ファントムFG.1の配備と退役
最後のカタパルト装備艦隊空母「アークロイヤル」退役
1980年代前半のイギリス空軍(RAF) 1980年代前半におけるイギリス空軍の戦力概要
可変翼戦術攻撃機のトーネードIDS実戦配備開始
RAF最後の爆撃機アブロ・ヴァルカン退役
1980年代後半のイギリス空軍(RAF) 1980年代後半におけるイギリス空軍の戦力概要
トーネード攻撃機の戦力化
トーネードADV迎撃戦闘機の実戦配備開始
イギリス最後の純国産超音速迎撃戦闘機ライトニング退役
1980年代のイギリス海軍航空隊(FAA) 1980年代におけるイギリス海軍航空隊と航空母艦の配備状況
軽空母インヴィンシブル級とシーハリアーFRS.1艦上戦闘機の戦力化
1990年代前半のイギリス空軍(RAF) 1990年代前半におけるイギリス空軍の戦力概要
ブリティッシュ・ファントムの退役
第二世代ハリアーの導入
1990年代後半のイギリス空軍(RAF) 戦力削減に伴う指揮系統の一元化と戦術核爆弾の全廃
1990年代のイギリス海軍航空隊(FAA) 1990年代におけるイギリス海軍航空隊と航空母艦の配備状況
シーハリアーFA.2艦上戦闘機の戦力化
2000年代前半のイギリス空軍(RAF)とイギリス海軍航空隊(FAA) 2000年代前半におけるイギリス空軍とイギリス海軍航空隊及び航空母艦の配備状況
RAF実戦部隊のドイツ駐留任務終了
FAAのシーハリアー退役
2000年代後半のイギリス空軍(RAF)とイギリス海軍航空隊(FAA) 2000年代後半のイギリス空軍とイギリス海軍航空隊及び航空母艦の配備状況
RAFのタイフーン戦術戦闘機実戦配備開始
RAFとFAAのハリアー退役
2010年代のイギリス空軍(RAF)とイギリス海軍航空隊(FAA) RAFのトーネード攻撃機退役
RAFのF-35B戦闘機の実戦配備開始
イギリス海軍の新型空母「クイーン・エリザベス級」就役

 

2021年1月24日 (日)

2010年代のイギリス空軍(RAF)とイギリス海軍航空隊(FAA)

今回は前回「2000年代後半のイギリス空軍(RAF)とイギリス海軍航空隊(FAA)」に引き続いて、2010年代のイギリス空軍(RAF)とイギリス海軍航空隊(FAA)についてです。
この連載は今回が一応の最終回になります。
これまで同様に、英語版ウィキペディアや英語のサイト「ウイングアビエーション」、雑誌「世界の傑作機」などを参考に纏めてみました。

第二次大戦後のイギリス空軍(RAF)及びイギリス海軍航空隊(FAA)の連載記事の一覧表はこちらへ

ではまず、2011年末時点におけるRAFの戦力概要について。

戦闘機飛行隊:推定3個:
ユーロファイター・タイフーン飛行隊 x 3個(No3. 6. 11.の各飛行隊)

RAF待望の新戦闘機タイフーンは実戦飛行隊三個と作戦転換兼予備のNo29飛行隊、運用評価兼予備のNo17飛行隊、フォークランド防衛用のNo1435小隊に配備されています。
この時点でマルチロールタイプのFGA.4が大半を占めていると思われますが、空対空戦闘能力のみのF.2がどの程度残存していたのかどうか。
この後、タイフーン飛行隊は2012年9月にNo1飛行隊、2015年2月にNo2飛行隊、2018年7月にNo12飛行隊、2019年2月にNo9飛行隊がそれぞれ再編されていて、2020年初頭におけるタイフーン実戦飛行隊は計7個になっています。
なおトーネードADVは2011年3月に最後の飛行隊No111が解散したことで運用を終了しています。

攻撃機飛行隊:推定5個:
パナピア・トーネードIDS(GR.4)飛行隊 x 5個(No2. 9. 12. 31. 617.の各飛行隊)

1982年から実戦配備され、永きに渡ってRAFストライクコマンドの航空打撃力の主柱にあった可変翼攻撃機のトーネードIDSも、後輩のトーネードADVの後を追っていよいよ減勢フェーズに入いっていきます。
2014年3月にはNo617飛行隊、2015年1月にNo2飛行隊、2017年3月に作戦転換兼予備のNo15飛行隊、2018年2月にNo12飛行隊が次々と解散。
最後のトーネードIDS実戦飛行隊No9とNo31も2019年3月に解散して、RAFにおけるトーネードIDS部隊運用の37年の歴史もついに終わりを迎えたのでした。

2011年初頭をもってリタイアしたハリアー攻撃機の後継としては、遅まきながらアメリカと共同開発の形をとったロッキードF-35BがいよいよRAFの戦列に加わります。
2013年4月にRAFとFAA合同のF-35B合同評価兼予備部隊のNo17飛行隊が再編されて、2018年には予備指定を解除されて純粋な試験評価飛行隊になります。
RAF最初のF-35B実戦飛行隊は2017年に再編されたNo617飛行隊で、この部隊は当分の間FAAのNo809飛行隊と共同運用の形を取ります。
No617飛行隊は2019年初頭に作戦能力獲得を宣言して実働体制に入り、イギリス海軍の空母「クイーン・エリザベス」に展開しています。
F-35Bの作戦転換部隊としては2019年8月にNo207飛行隊が再編されて、これでRAFとFAAのF-35Bの戦力化もスムーズに運ぶことが期待されます。

早期警戒管制飛行隊:推定1個:
ボーイング・セントリーAEW.1飛行隊 x 1個(No8飛行隊)

戦術輸送飛行隊: 推定4個:
C-17A グローブマスターIII飛行隊 x 1個(No99飛行隊)
ロッキード・ハーキュリーズ飛行隊 x 3個(No24. 30. 47. の各飛行隊)

ハーキュリーズ装備のNo24飛行隊は2013年に輸送機の作戦転換部隊に変更されて、実戦任務から外れています。
また同機装備のNo30飛行隊は2016年末に解散していて、これでRAFの戦術輸送機フリートはグローブマスター、ハーキュリーズ、A400Mが各一個飛行隊という体制になっています。
そのA400Mを装備するNo70飛行隊は2014年10月に再編されていますけれど、欧州共同開発のこのA400Mは肝心の輸送能力が不足しているとかエンジンの信頼性とか色々な問題が生じているようで、それでもRAFがキャンセルせずに装備したのはイギリス航空産業に対する配慮があったのではと邪推したくなるところです。

戦術輸送ヘリコプター飛行隊:3個:
ボーイング・チヌークHC.2飛行隊 x 3個(No7. 18. 27.の各飛行隊)
チヌーク部隊については従来通りです。
戦術輸送任務を帯びるヘリコプター部隊としてはマーリンHC.3装備のNo78飛行隊No28飛行隊が存在しましたが、両飛行隊共に機材をFAAに譲ってNo78飛行隊は2015年から各種ヘリコプターの作戦転換飛行隊に改編、No28飛行隊は2014年9月に解散しています。

海上哨戒飛行隊:推定0個:
BAE・ニムロッド海上哨戒機はMR.2からMRA.4への大規模アップグレード計画が2010年10月にキャンセルされた結果、実戦飛行隊二個と作戦転換飛行隊1個が2011年5月に解散して、RAFは海上哨戒戦力を喪失してしまいました。
いくら周辺海域に重大な脅威が存在しないとはいえ、島国のイギリスに長距離海上哨戒能力が欠如しているのは極めて大きな問題と言えましょう。
それゆえか海上哨戒機選定は仕切り直しで再検討が行われ、2016年にアメリカ製のボーイングP-8ポセイドンが選定されて2019年10月に同機装備のNo12飛行隊が再編されて、RAFに約八年半ぶりの海上哨戒飛行隊復活となってまずは目出度い話です。
本年(2021年)にはポセイドン装備の二個目の飛行隊No201が再編予定で、この二個飛行隊によるグローバルな海上哨戒活動が期待されるところであります。

空中給油飛行隊:2個:
ロッキード・トライスターKC.1/K.1装備のNo216飛行隊、ヴィッカース・VC10K装備のNo101飛行隊

VC10K装備のNo101飛行隊は2013年9月に解散し、直後に新型空中給油機のエアバスA330装備部隊として再編されています。
トライスター装備のNo216飛行隊は2014年3月に解散していて、これでRAFの空中給油部隊はA330装備のNo101飛行隊のみとなりました。

一方、2011年末時点におけるイギリス海軍航空隊(FAA)の800番台実戦飛行隊の概要です。

戦闘攻撃飛行隊 x 0個:
FAA最後のハリアー飛行隊No800は2010年後半に解散して、ついにイギリス海軍の空母から固定翼機は姿を消します。
ハリアーの運用終了で存在意義がほぼ無くなったインヴィンシブル級空母は、予備艦として維持していた一番艦「インヴィンシブル」が2010年8月に除籍、三番艦「アークロイヤル」が2011年3月、二番艦「イラストリアス」が2014年8月に退役。
これでイギリス海軍から一時的にせよ固定翼機を運用可能な空母が消滅してしまいます。
インヴィンシブル級に代わる大型空母クイーン・エリザベス級二隻は、2010年の国防戦略見直しで現役に留めるのは一隻のみとしてもう一隻はインドへの売却やフランス海軍との共同運用などが検討されていました。
搭載機についても当初予定のF-35Bをカタパルト発進用のF-35Cに変更し、その舌の根も乾かぬうちにF-35Bに再変更と迷走を続けていました。
結局、新空母は二隻共にイギリス海軍が維持運用、搭載機はF-35Bとするというごく常識的な結論に落ち着いて、2017年12月に一番艦「クイーン・エリザベス」、2019年12月に二番艦「プリンス・オブ・ウェールズ」が就役しています。
「クイーン・エリザベス」は2020年時点で実働体制にあり、イギリス海軍の新たなシンボルとして世界の海に雄飛しつつある現状です。
前述したように現在「クイーン・エリザベス」にはF-35B装備のRAFのNo617飛行隊が展開していますが、この飛行隊はFAAのNo809飛行隊との共同運用になっています。
FAA主体で運用するF-35B部隊はこのNo809飛行隊が2023年にNo617飛行隊から独立して再編されることになっていて、この時点で洋上展開中の空母にF-35B飛行隊二個が展開できるようになるのです。

多用途ヘリコプター飛行隊 x 5個:
アグスタウェストランド・マーリンHM.2飛行隊 x4個(No814. 820. 824. 829.の各飛行隊)
ウェストランド・リンクスHAS飛行隊 x 1個(No815飛行隊)

その後、マーリンHM.1装備の飛行隊は2013年から14年にかけてアップグレード型のマーリンHM.2に機材を更新、さらにその後No829飛行隊は2018年3月にNo814飛行隊に吸収されています。
これでイギリス海軍の多用途型マーリン飛行隊は実戦2個(No814とNo820)と作戦転換1個(No824)の三個体制に移行しました。
またNo820飛行隊は2020年から後述のように早期警戒任務も兼ねています。
またリンクス装備で駆逐艦やフリゲートに展開するNo815飛行隊は2016年4月にリンクスを大幅に改良した新規量産型のアグスタウェストランド・AW159ワイルドキャットHMA.2に機種転換しました。

早期警戒ヘリコプター飛行隊 x 3個:
ウェストランド・シーキングAEW飛行隊 x 1個(No849、854、857の各飛行隊)

この後、2015年にNo854とNo857の各飛行隊はNo849飛行隊に吸収されました。
これら飛行隊は元々No849飛行隊の一部を2006年に独立させたもので、外野の素人から見ると意図が今ひとつわからない話だったのですけれど、これで元の鞘に戻ったことになります。
イギリス海軍唯一の早期警戒機部隊であるNo849飛行隊は2020年4月に解散。
これでFAAにおけるシーキングヘリコプターの第一線運用は終了です。
その任務は早期警戒用レーダーポッドを装備可能なマーリンHM.2を配備されたNo820飛行隊に引き継がれています。

輸送ヘリコプター飛行隊 x 2個:
ウェストランド・シーキングHC飛行隊 x 2個(No845とNo846飛行隊)

No846飛行隊は2013年に解散し、翌年にはマーリンヘリコプターの戦術輸送型HC.3装備で再編されています。
No845飛行隊は2015年夏にマーリンHC.3に機種改編しています。
なおこれら輸送型マーリンは、RAFのNo28及びNo78飛行隊から機材を委譲されたものです。

武装偵察・軽輸送飛行隊 x 1個:
ウェストランド・リンクスAHとガゼルの混成部隊No847飛行隊
この飛行隊は2013年にアグスタウェストランド・AW159ワイルドキャットAH.1に機種改編を行っています。
輸送ヘリコプター飛行隊へのマーリンHC.3導入と合わせて、コマンドー部隊に対する空中支援能力の向上が期待されるところです。

2020年12月26日 (土)

2000年代後半のイギリス空軍(RAF)とイギリス海軍航空隊(FAA)

今回は前回「2000年代前半のイギリス空軍(RAF)とイギリス海軍航空隊(FAA)」に引き続いて、2000年代後半のイギリス空軍(RAF)とイギリス海軍航空隊(FAA)についてです。
これまで同様に、英語版ウィキペディアや英語のサイト「ウイングアビエーション」、雑誌「世界の傑作機」などを参考に纏めてみました。

第二次大戦後のイギリス空軍(RAF)及びイギリス海軍航空隊(FAA)の連載記事の一覧表はこちらへ

ではまず、2006年末時点におけるRAFの戦力概要について。

戦闘機飛行隊:推定4個:
ユーロファイター・タイフーンF.2飛行隊 x 1個(No3飛行隊)
パナピア・トーネードADV(F.3)飛行隊 x 3個(No25. 43. 111.の各飛行隊)

トーネードADVに代わる待望の新型戦闘機タイフーンは、2002年9月に同機の運用評価及び予備飛行隊のNo17が再編、翌2003年には作戦転換兼予備飛行隊のNo29が再編されています。
タイフーン最初の実戦飛行隊No3は2006年4月に再編されていますが、当時の装備機は空対空戦闘能力のみのF.2でした。
タイフーンF.2装備のNo3飛行隊は2007年6月からイギリス本土において緊急発進任務に就いていて、同機の戦力化が軌道に乗り始めています。
2007年3月にはタイフーン装備の二個目の部隊であるNo11飛行隊が再編されていて、この部隊は2008年7月にマルチロール飛行隊として宣言されています。
タイフーンのマルチロールタイプはFGA.4なので、この時点でFGA.4の一応の戦力化ということになるのかどうか。
2009年後半にはフォークランド防衛任務に就くNo1435小隊が装備機をトーネードF.3からタイフーンFGA.4に改編しています。

タイフーンへの置き換えが始まったトーネードF.3は2006年末時点で実戦三個飛行隊と作戦転換兼予備部隊のNo56飛行隊、そしてフォークランド防衛用のNo1435小隊ですが、この小隊は前述のように2009年後半にタイフーン装備に変わっています。
この後、作戦転換用のNo56飛行隊が2008年4月に解散したことでトーネードADVはいよいよ本格的な減勢体制に移行し、No25飛行隊は2008年5月、No43飛行隊は2009年6月にそれぞれ解散。
2000年代末には唯一No111飛行隊が残るのみとなりました。

攻撃機飛行隊:推定10個:
パナピア・トーネードIDS(GR.4)飛行隊 x 7個(No2. 9. 12. 13. 14. 31. 617.の各飛行隊)、SEPECAT ジャガーGR.3飛行隊 x 1個(No6飛行隊)、BAE・ハリアーGR.7/9飛行隊 x 2個(No1. 4. の各飛行隊)

RAFストライクコマンドの航空打撃力の主柱であるトーネード攻撃機は、夜間攻撃能力向上を初めとした大規模アップグレード型のGR.4への改装が終了しています。
しかしタイフーンのマルチロールタイプFGA.4の配備開始に伴って、トーネードIDSの部隊もいよいよ減勢が始まって2011年5月にNo13飛行隊、6月にNo14飛行隊が解散して同機の実戦飛行隊もいよいよ片手で数えられる数になってしまいました。
なおトーネードIDS装備の部隊としては、他に作戦転換及び予備飛行隊のNo15があります。

1970年代半ばから実戦配備されていた英仏共同開発のジャガー攻撃機はついに最後の時を迎えていて、同機装備の最後の飛行隊No6が2007年5月に解散し、RAFにおけるジャガーの運用にピリオドが打たれました。

2000年からRAFのNo3グループの指揮下でFAAのシーハリアー飛行隊との統合運用が行われていたRAFのハリアーⅡ飛行隊は、No3飛行隊が2006年にタイフーン戦闘機への機種改編を実施したことで実戦二個飛行隊と作戦転換兼予備飛行隊一個(No20)の体制に変わっています。
これらハリアーⅡ部隊は2018年まで運用する計画だったようですが、イギリスの国防戦略の大幅見直しの嵐に巻き込まれる形で早期退役が決定。
作戦転換部隊のNo20飛行隊と実戦部隊のNo4飛行隊が2010年3月に解散して、No4飛行隊はすぐにハリアーの作戦転換及び予備飛行隊として再編されます。
これでRAFのハリアー実戦飛行隊はNo1飛行隊のみとなり、2011年1月にNo4飛行隊と共に解散。
これでRAFにおけるハリアー運用にピリオドが打たれたのでした。

偵察飛行隊:推定0個:
長期に渡って高高度偵察/電子偵察任務に就いていた古強者のイングリッシュ・エレクトリック・キャンベラPR.9を運用するNo39飛行隊は2006年7月に解散。
1950年代前半から続いていたキャンベラ・ファミリーのRAFにおける運用にもついにピリオドが打たれたのでした。

早期警戒管制飛行隊:推定1個:
ボーイング・セントリーAEW.1飛行隊 x 1個(No8飛行隊)

戦術輸送飛行隊: 推定5個:
C-17A グローブマスターIII飛行隊 x 1個(No99飛行隊)
ロッキード・ハーキュリーズ飛行隊 x 4個(No24. 30. 47. 70.の各飛行隊)

縮小していく一方のRAFにおいて唯一増強されているのが戦術輸送機の分野で、2002年に就役した最新鋭輸送機のC-17と新型のC.4及びC.5への改編が進むハーキュリーズ飛行隊の計五個飛行隊が任務に就いています。
しかしそれもつかの間、2010年9月にはハーキュリーズ装備のNo70飛行隊が解散して、戦術輸送飛行隊は四個になっています。

戦術輸送ヘリコプター飛行隊:3個:
ボーイング・チヌークHC.2飛行隊 x 3個(No7. 18. 27.の各飛行隊)
No7飛行隊が2001年4月に編成されたイギリス陸軍との合同部隊「合同特殊作戦航空団」(JSFAW)の指揮下に入っているのはこれまでと同様です。
戦術輸送任務を帯びるヘリコプター部隊としては他に、フォークランド駐留でチヌークと捜索救難型シーキングの混成編成のNo78飛行隊とマーリンHC.3装備のNo28飛行隊が存在しましたが、No78飛行隊は2007年にフォークランド駐留の任を解かれてイギリス本国に帰還して装備機材をマーリンHC.3に更新しています。

海上哨戒飛行隊:推定2個:
BAE・ニムロッドMR.2飛行隊 x 2個(No120. 201. の各飛行隊)
ニムロッド飛行隊は他に作戦転換部隊のNo42飛行隊が存在します。
ニムロッドのMR.2からMRA.4への大規模アップグレード計画は、中古機の改造に付き物の機齢の余命と改造経費を再検討した結果、2010年10月に計画中止になってしまいました。
電子機器にもエンジンにも主翼にも大胆に手を入れて今なお現役の米空軍のB-52爆撃機のようにはいかなかったのですな。

空中給油飛行隊:2個:
ロッキード・トライスターKC.1/K.1装備のNo216飛行隊、ヴィッカース・VC10K装備のNo101飛行隊

一方、2006年末時点におけるイギリス海軍航空隊(FAA)の800番台実戦飛行隊の概要です。

戦闘攻撃飛行隊 x 1個:
BAE・ハリアーGR.9飛行隊 x 1個(No800飛行隊)

シーハリアーFA.2装備の最後の飛行隊No801が2006年3月に解散して、ついにシーハリアーのFAAにおける運用にピリオドが打たれた一方で、2004年春に解散したNo800飛行隊はこの年の3月にハリアーGR.9装備の飛行隊として再編されています。
ハリアーからタイフーンに改編したRAFのNo3飛行隊から機材を譲られた形の再編です。
解散したNo801飛行隊も当初の予定ではNo800と同様にハリアーⅡ飛行隊として再編の予定でしたけれど、主に人員不足が原因で実施できず要員はNo800に移籍しています。
この措置でNo800飛行隊はその規模を拡大し、RAFのハリアー飛行隊二個と共に「海軍攻撃航空団」(NSW)を編成しています。
このNSWがイギリス海軍の空母に展開するのですが、国防戦略の大幅見直しでRAFとFAAのハリアー部隊は予定よりも8年も早い2010年中の解散が決まってしまいます。
結局、FAAのハリアー部隊No800は2010年後半に解散、RAFのハリアー部隊も2011年1月に解散してイギリス海軍のインヴィンシブル級空母の艦上から固定翼機が姿を消してしまったのです。

多用途ヘリコプター飛行隊 x 5個:
アグスタウェストランド・マーリンHM.1飛行隊 x 4個(No814. 820. 824. 829.の各飛行隊)
ウェストランド・リンクスHAS飛行隊 x 1個(No815飛行隊)

マーリン多用途ヘリコプターの実戦飛行隊3個(No814と820、829)及び作戦転換飛行隊1個(No824)とリンクス装備のNo815飛行隊の体制には変化無しです。

早期警戒ヘリコプター飛行隊 x 3個:
ウェストランド・シーキングAEW飛行隊 x 1個(No849、854、857の各飛行隊)

シーキングAEW飛行隊は2006年12月にNo854とNo857飛行隊が新編されていますが、これはNo849飛行隊を構成する三個の飛行小隊の内二個小隊が独立して飛行隊に格上げになったものです。
部隊管理上の問題なのか空母展開に関する戦術的問題なのか、この措置はよくわからないところなのです。

輸送ヘリコプター飛行隊 x 2個:
ウェストランド・シーキングHC飛行隊 x 2個(No845とNo846飛行隊)

武装偵察・軽輸送飛行隊 x 1個:
ウェストランド・リンクスAHとガゼルの混成部隊No847飛行隊

コマンドー部隊を支援するこれら三個飛行隊は従来通りの編成です。

次回は最終回「2010年代のイギリス空軍(RAF)とイギリス海軍航空隊(FAA)」です、ではまた。

2020年12月13日 (日)

2000年代前半のイギリス空軍(RAF)とイギリス海軍航空隊(FAA)

今回は前回「1990年代のイギリス海軍航空隊(FAA)」に引き続いて、2000年代前半のイギリス空軍(RAF)とイギリス海軍航空隊(FAA)についてです。
これまで同様に、英語版ウィキペディアや英語のサイト「ウイングアビエーション」、雑誌「世界の傑作機」などを参考に纏めてみました。

第二次大戦後のイギリス空軍(RAF)及びイギリス海軍航空隊(FAA)の連載記事の一覧表はこちらへ

ではまず、2001年末時点におけるRAFの戦力概要について。

戦闘機飛行隊:推定5個:
パナピア・トーネードADV(F.3)飛行隊 x 5個(No5. 11. 25. 43. 111.の各飛行隊)

イギリス空軍の戦闘機戦力を一手に担う可変翼機のパナピア・トーネードF.3飛行隊は1998年秋にNo29飛行隊が解散したことで5個飛行隊に減勢して21世紀を迎えています。
これらトーネードADV飛行隊は1999年まではかつてのファイター・コマンド(戦闘機軍団)の後身であるNo11/18グループの指揮下にありましたけれど、2000年に実施されたRAFの機構改革でNo1グループ(かつての爆撃機軍団の後身)に移籍しています。
後述のトーネードIDSとジャガーの諸部隊もこのグループの所属になっています。
なお、トーネードF.3装備部隊としては他に作戦転換及び予備飛行隊としてNo56、フォークランド防衛用としてNo1435フライトがあります。
実戦五個飛行隊のうちNo5飛行隊は2003年初頭、No11飛行隊は2005年秋にそれぞれ解散していて、迎撃戦闘飛行隊はとうとう片手で余る数にまで減ってしまいました・・・。
イラク南部の飛行禁止空域の監視任務に就いていた時、共に任務に就いている米空軍のF-15やF-16との機動性の差を痛感させられたというトーネードF.3の機材更新が急がれるところですけれど、イギリス、ドイツ、イタリア、スペイン共同開発の次世代主力戦闘機のタイフーンは、2001年末時点では実戦部隊や作戦転換部隊はおろか、運用評価部隊さえまだ立ち上がっていない状態でした。

攻撃機飛行隊:推定13個:
パナピア・トーネードIDS(GR.1もしくはGR.4)飛行隊 x 7個(No2. 9. 12. 13. 14. 31. 617.の各飛行隊)
SEPECAT ジャガーGR.3飛行隊 x 3個(No6. 41. 54. の各飛行隊)
BAEハリアーGR.7飛行隊 x 3個(No1. 3. 4. の各飛行隊)

RAFストライクコマンドの航空打撃力の中核であるトーネード攻撃機は大幅なアップグレードを施したGR.4への改装が1996年から2003年まで実施されていて、2001年末時点では多くの飛行隊がGR.4を装備しているものと思われます。
またこの年の9月にドイツ駐留のトーネード飛行隊がイギリス本国への撤収を完了していて、戦後ずっと続いていたRAF実戦飛行隊のドイツ駐留任務はこれで終幕となりました。
なおトーネード攻撃機運用部隊としては、同機の作戦転換及び予備飛行隊のNo15が存在します。

1974年秋から実戦配備されているジャガー攻撃機は湾岸戦争後にアップグレード改修を受けたGR.3実戦飛行隊が三個、作戦転換及び予備のNo16飛行隊が健在です。
しかしジャガー飛行隊はこの後、国防費削減で真先に削減対象とされてしまってNo16とNo54飛行隊が2005年3月に解散しています。

アメリカが独自に発展させた新世代のハリアーⅡをイギリスが逆輸入する形で導入したハリアーGR.7は、実戦三個飛行隊と作戦転換及び予備のNo20飛行隊に配備中です。
この時期のRAFハリアー部隊はFAAのシーハリアー部隊をRAFストライクコマンド隷下のNo3グループ(2000年に復活再編)の指揮下で運用する「ハリアー統合部隊」(JFH)に所属していて、イギリス海軍の空母に展開するようになっていました。

偵察飛行隊:推定1個:
イングリッシュ・エレクトリック・キャンベラPR.9飛行隊 x 1個(No39飛行隊)

早期警戒管制飛行隊:推定1個:
ボーイング・セントリーAEW.1飛行隊 x 1個(No8飛行隊)

戦術輸送飛行隊: 推定4個:
ロッキード・ハーキュリーズ飛行隊 x 4個(No24. 30. 47. 70.の各飛行隊)

これまでRAFに配備されていたハーキュリーズ輸送機はC.1及びC.3でしたが、2000年から新世代のC.4(C-130J-50)とC.5(C-130J)の配備が始まっています。
RAFの戦術輸送フリートはさらに2002年にC-17A グローブマスターIII 装備のNo99飛行隊が再編されていて、グローバルな輸送能力の強化が図られています。
なお、RAFの輸送機、空中給油機、早期警戒管制機の諸部隊は2000年に復活再編されたNo2グループの所属になっています。
これでRAF実戦部隊は、
No1グループ(戦闘機及び攻撃機、海上哨戒機)、No2グループ(輸送機、空中給油機、空中早期警戒機)、No3グループ(海軍と合同のハリアー統合部隊)
この三個グループに纏められています。

戦術輸送ヘリコプター飛行隊:3個:
ボーイング・チヌークHC.2飛行隊 x 3個(No7. 18. 27.の各飛行隊)
No7飛行隊は2001年4月に編成されたイギリス陸軍との合同部隊「合同特殊作戦航空団」(JSFAW)の指揮下に入っています。
この航空団はイギリス陸軍のNo657飛行隊(リンクスヘリコプター装備)と共に特殊部隊の作戦支援に当るものです。
なお、戦術輸送任務を帯びるヘリコプター部隊としては他に、1986年以来フォークランドに駐留するNo78飛行隊(チヌークと捜索救難用シーキングの混成部隊)と2001年7月にアグスタウェストランド・マーリンHC.3装備で再編されたNo28飛行隊が存在します。

海上哨戒飛行隊:推定3個:
BAE・ニムロッドMR.2飛行隊 x 3個(No120. 201. 206.の各飛行隊)
ニムロッド飛行隊は他に作戦転換部隊のNo42飛行隊が存在します。
この後、2005年にNo206飛行隊が解散しています。
この当時、ニムロッドはMR.2からMRA.4への大規模アップグレード計画が進行中でしたけれど、国防費削減の逆風でこの計画にも暗雲が立ち込めていたのでした。

空中給油飛行隊:2個:
ロッキード・トライスターKC.1/K.1装備のNo216飛行隊、ヴィッカース・VC10K装備のNo101飛行隊

一方、2001年末時点におけるイギリス海軍航空隊(FAA)の800番台実戦飛行隊の概要です。

戦闘攻撃飛行隊 x 3個:
BAE・シーハリアーFA.2飛行隊 x 3個(No800. 801. 899.の各飛行隊)

実戦飛行隊2個(No800と801)と作戦転換飛行隊1個(No899)の体制は従来通りです。
先述したように、FAAのシーハリアー実戦飛行隊2個とRAFのハリアーⅡ実戦飛行隊はRAFのNo3グループ「ハリアー統合部隊」の所属になっていて、イギリス海軍のインヴィンシブル級空母に随時展開しています。
防空と制空はパルスドップラーレーダーFCSを装備して視程外空対空戦闘能力を持つシーハリアー、対地攻撃は兵装搭載力と戦闘行動半径でシーハリアーよりも優れたハリアーⅡによって実施される小規模ながら充実した戦力構成になっていたのですが、シーハリアーは気温の高い中東海域での作戦に最適化させる為のエンジン換装計画がコスト高により中止されてしまい、国防費削減の逆風もあって当初の退役予定を6年も前倒しした2006年3月をもって退役する事が決定されてしまいました。
この決定に伴って、No800飛行隊は2004年3月に解散しています。
作戦転換部隊のNo899飛行隊も2005年3月に解散していて、シーハリアーの余命もあと僅かとなりました。
またこれらシーハリアー部隊が展開するイギリス海軍のインヴィンシブル級空母も、一番艦「インヴィンシブル」が2005年に予備艦となりました。

多用途ヘリコプター飛行隊 x 4個:
アグスタウェストランド・マーリンHM.1飛行隊 x 3個(No814. 820. 824.の各飛行隊)
ウェストランド・リンクスHAS飛行隊 x 1個(No815飛行隊)

長年に渡ってFAAで軍務に勤しんできたシーキングヘリコプターもいよいよ更新が開始されて、対潜任務用のシーキングHASを装備するNo810とNo819飛行隊が2001年末までに解散。
シーキングの後継機であるアグスタウェストランド・マーリンヘリコプターの多用途型HM.1の作戦転換飛行隊No824が2000年6月に再編され、実戦用のNo814とNo820飛行隊が2001年秋に相次いで再編されています。
これら施策によって、対潜型シーキングは2001年秋にFAAから退きました。
なお、マーリン装備飛行隊はこの後、No829が2004年10月に再編されてマーリン実戦飛行隊は三個になっています。
駆逐艦やフリゲートに展開する小型のリンクスヘリコプターについては今までと同じ体制です。

早期警戒ヘリコプター飛行隊 x 1個:
ウェストランド・シーキングAEW飛行隊 x 1個(No849飛行隊)

輸送ヘリコプター飛行隊 x 2個:
ウェストランド・シーキングHC飛行隊 x 2個(No845とNo846飛行隊)

前述のように対潜任務からは退いたシーキングですが、早期警戒任務と輸送任務ではまだまだ健在です。

武装偵察・軽輸送飛行隊 x 1個:
ウェストランド・リンクスAHとガゼルの混成部隊No847飛行隊

この部隊はコマンドー部隊の直接支援用で、元々はコマンドー飛行隊であったものを1995年にFAAに移籍したものです。

次回は「2000年代後半のイギリス空軍(RAF)とイギリス海軍航空隊(FAA)」です、ではまた。

2020年11月 1日 (日)

1990年代のイギリス海軍航空隊(FAA) (RAFと共同運用のハリアー統合部隊発足)

今回は1990年代のイギリス海軍航空隊(FAA)とその活躍の舞台であるイギリス海軍の空母の状況についての概要です。
これまでと同様に、ウィキペディア英語版と英語サイト「ウィングス-アビエーション」、雑誌「世界の傑作機」を情報ソースとして纏めてみました。

第二次大戦後のイギリス空軍(RAF)及びイギリス海軍航空隊(FAA)の連載記事の一覧表はこちらへ

では最初に1991年末時点でのイギリス海軍航空隊の800番台実戦飛行隊の概要です。

戦闘攻撃飛行隊:3個
BAE・シーハリアーFRS.1飛行隊 x 3個(800 801 899の各飛行隊)
実戦飛行隊2個(800NAS及び801NAS)と機種転換飛行隊(899NAS)なのは従来通りです。

フォークランド紛争における戦訓からシーハリアーの大幅な能力向上が計画され、ルックダウン・シュートダウン可能な新型レーダー「ブルーヴィクセン」を搭載するシーハリアーFA2の開発がこの時期には進んでいて、試作一号機は1988年9月に初飛行し90年11月には空母での運用試験も実施されています。
既存のシーハリアーFRS.1の改造と新造機の二刀流で進められるシーハリアーFA2は93年から海軍への引渡しが始まり、95年末までには上記の三個飛行隊が全てシーハリアーFA2装備になっています。
この新型シーハリアーと本機装備の米国製アクティブレーダー誘導空対空ミサイル・AMRAAMの組み合わせによって、イギリス海軍の空母は1978年秋にファントムFG.1が運用終了して以来の戦闘機による全天候迎撃能力を回復することになりました。
しかし飛行性能自体は従来のシーハリアーと同等で、RAFが装備するアメリカ由来の第二世代ハリアーと比較して戦闘行動半径や兵器搭載能力が劣る点は解消されずに残っています。
この点が後々、シーハリアーの早期退役にも繋がっていくことになるのでした。
世紀末の2000年4月には、FAAのシーハリアー部隊とRAFのハリアー部隊を臨機応変に運用するためのハリアー統合部隊が編成されています。
この部隊はRAFストライクコマンド隷下で再編されたNo3グルーブの指揮下に入ります。
この施策によって、RAFのハリアー飛行隊が海軍の空母に展開して作戦することになりました。
防空制空にシーハリアー、対地攻撃にRAFのハリアーという両機の特性を生かした理想的な戦闘実力を海軍の空母は持つことになって実に慶賀の至り。
しかし海軍の戦闘機部隊が平時において空軍の指揮下にあっさり入るとは、万事が縦割り組織な日本に住んでいる我々には驚かされまた新鮮な話なのであります。
私がイギリス軍に対して興味を持つのも、古めかしい伝統とこのような革新が同居している点にあるのですよ。

対潜ヘリコプター飛行隊:7個:
ウェストランド・シーキングHAS飛行隊 x 5個(801 814 819 820 826の各飛行隊)
アグスタウェストランド・リンクスHAS.2飛行隊 x 2個(815 829の各飛行隊)

この後、リンクス飛行隊は829NASが93年3月に解散して一個飛行隊体制になっています。
シーキングHAS部隊も93年7月に826NASが、2000年12月に814NASが相次いで解散していて世紀末のシーキングHAS飛行隊は3個にまで減勢してしまいました。
一方、シーキングの後継となる新世代の対潜ヘリコプターである英伊共同開発のアグスタウェストランドAW101は1987年の初飛行以来長期間の改良とテストを経て、97年にようやくFAAへの納入を開始しました。
マーリンHM.1と命名されたこの新型ヘリを装備する最初の実戦飛行隊824NASは2000年6月に再編されています。

早期警戒ヘリコプター飛行隊:1個:
ウェストランド・シーキングAEW飛行隊 x 1個(849飛行隊)

輸送ヘリコプター飛行隊: 2個:
ウェストランド・シーキング飛行隊 x 2個(845 846の各飛行隊)

イギリス海兵隊(コマンドー)支援用の飛行隊としては、この輸送ヘリコプター飛行隊の他に1995年9月にリンクスAHとガゼルの混成飛行隊847NASが再編されていますが、これは海兵隊のヘリコプター部隊である第3コマンドー旅団飛行隊がFAAに移籍する形で誕生した部隊で、任務はコマンドー所属時代と同じくコマンドー部隊への空中火力支援です。
コマンドー支援用飛行隊の運用はFAAに一元化して運用を柔軟化、効率化しようという考えなのかもしれません。

これら航空隊が展開するイギリス海軍の空母は80年代半ばから変化無く、インヴィンシブル級三隻(「インヴィンシブル」「イラストリアス」「アークロイヤル」)です。
湾岸危機、それに続く湾岸戦争では地中海での警戒任務に留まって作戦海域に入ることはなかったこれら空母は、1993年に始まったボスニア紛争に対するNATOの作戦に参加して、当時配備途上にあったシーハリアーFA2もこの時に初の実戦任務に就いています。
また前述の「ハリアー統合部隊」構想に合わせる形でRAFのハリアー運用能力の付与や艦首のシーダートSAM発射機の撤去による飛行甲板の拡張などの改装が行われて、本級の当初の呼称「全通甲板型巡洋艦」から航空機運用を最優先する完全な「軽空母」への脱皮がなされたのです。
さらにこの時期にはコマンドー部隊輸送母艦の再整備が図られて、98年には新造のヘリコプター強襲艦「オーシャン」が竣工。
かつてのコマンドー母艦が退役もしくは対潜任務/シーハリアー展開を主任務とするようになってからは、コマンドー輸送飛行隊はインヴィンシブル級に展開して任務に就いていたのですが、これら軽空母は建造当初からコマンドー輸送能力を副次的任務として加えられていたものの小柄な為にシーハリアーや対潜ヘリとスペースの取り合いになってしまっていました。
これでは作戦上融通が利き辛く、やはりコマンドー輸送専用の母艦が必要という結論になって、最大の課題であった建造コストの問題は商船規格を大胆に採用するなどして低減に努め、ようやく完成にこぎつけたのでした。
この強襲艦「オーシャン」と完全な軽空母に進化したインヴィンシブル級のコンビによって、イギリス海軍はアメリカ海軍とは比較にならないものの他の海軍とは一線を画する沿岸強襲攻撃能力を獲得したのでした。

次回は「2000年代前半のイギリス空軍(RAF)とイギリス海軍航空隊(FAA)」です、ではまた。

2020年10月25日 (日)

1990年代後半のイギリス空軍(RAF)(戦力削減の深度化)

今回は1990年代後半のイギリス空軍(RAF)です。
これまで同様に、英語版ウィキペディアや英語のサイト「ウイングアビエーション」、雑誌「世界の傑作機」などを参考に纏めてみました。

第二次大戦後のイギリス空軍(RAF)及びイギリス海軍航空隊(FAA)の連載記事の一覧表はこちらへ

では1996年末時点におけるRAFの戦力概要について。

戦闘機飛行隊:推定6個:
パナピア・トーネードF.3飛行隊 x 6個(No5. 11. 25. 29. 43. 111.の各飛行隊)

1992年7月をもってブリティッシュ・ファントムが引退した後はRAF唯一の戦闘機となったトーネードF.3。
この時点では実戦飛行隊6個がストライク・コマンド隷下のNo11/18グループに所属してイギリス本土防空任務に就いています。
なお、かつてのファイター・コマンド(戦闘機軍団)の後身であるNo11グループは、この年の4月にかつてのコースタル・コマンド(沿岸軍団)の後身であるNo18グループと合併してNo11/18グループになっています。
この処置でイギリス本土周辺の空域及び海域防衛について指揮系統を一元化したことになります。
当時はロシアの経済危機が深刻でその軍事力も激落し、イギリス本土周辺の安全度が高くなっていた時期であります。
所帯が小さくなり且つ軍事的脅威が大幅に低減された状況では、No11とNo18グループの合併も当然の展開だったのでありましょう。
往時と比べて戦力が大幅に削減されているイギリス本土防空戦闘機部隊ですが、この後予算削減と軍事的脅威低減によって所帯は更に小さくされることになってしまい、No29飛行隊が98年10月に解散してRAFの戦闘機実戦飛行隊は遂に片手で数えられる五個飛行隊になってしまっています。
なおトーネードF.3を運用する実戦及び予備部隊としてはフォークランド防衛任務に就いているNo1435フライトと、トーネードADVの作戦転換及び予備飛行隊を兼任しているNo15飛行隊が存在します。

攻撃飛行隊:推定13個:
パナピア・トーネードGR.1飛行隊 x 7個(No2. 9. 12. 13. 17. 31. 617.の各飛行隊)
SEPECAT・ジャガーGR.1飛行隊  x 3個(No6. 41. 54.の各飛行隊)
BAE・ハリアーGR.7飛行隊 x 3個(No1. 3. 4.の各飛行隊)

RAFストライクコマンドの打撃力の中核でイギリス最後の戦術核兵器WE177C(重量457kg、核出力450キロトン)を運用するトーネードIDSの実戦部隊は7個飛行隊で、この時点ではNo1グループに所属してドイツには4ないし5個飛行隊が駐留しています。
かつてのRAFG(ドイツ駐留イギリス空軍)は93年4月にストライクコマンドの指揮下に入ってそのNo2グループになっていましたが、この年の4月にNo2グループはかつてのボマー・コマンド(爆撃機軍団)の後身であるNo1グループに吸収統合されています。
前述のNo11とNo18グループの合併同様、所帯が小さくなったのと軍事的脅威の大幅低下で攻撃機の指揮運用を一元化した形になります。
なおトーネードIDSの部隊としては、同機の作戦転換及び予備飛行隊のNo15飛行隊が存在します。
またトーネードIDSが運用する戦術核爆弾WE177Cは1998年に退役していて、1962年に最初の戦術核爆弾「レッドベアード」(重量約0.8トン、核出力最大25キロトン)の配備によって始まったイギリス軍の戦術核兵器史はこれにてピリオドが打たれたのです。
トーネードIDSの実戦部隊も90年代後半にイギリス本土防空部隊同様に戦力の更なる削減を迫られて、No17飛行隊が99年3月に解散しています。

1974年から実戦配備を開始した英仏共同開発の戦術攻撃偵察機ジャガーは依然として3個飛行隊が健在。
こちらもトーネードIDSと同様にNo1グループの所属です。
旧世代機にも関わらずしぶとく生き残っているのは、可変翼の保守におカネがかかりそうなトーネードと違って比較的単純な機体やシステムゆえの保守運用性の高さや低コストなどの理由でしょうか。
なおジャガーを運用する部隊としては、同機の作戦転換及び予備飛行隊であるNo16飛行隊が存在します。

アメリカで改良を施され、それをイギリスが逆輸入する形となった第二世代のハリアーGR.7はやはりNo1グループ所属で3個飛行隊が実戦配備中。
この他に同機の作戦転換及び予備飛行隊のNo20飛行隊が存在します。
ドイツにはRAFG時代から変わらずNo3及び4飛行隊が駐留していて、この体制は1999年まで続いています。

偵察飛行隊:イングリッシュ・エレクトリック・キャンベラPR.9装備のNo38(1PRU)飛行隊

空中早期警戒機飛行隊:ボーイング・セントリー AEW.1装備のNo8飛行隊

海上哨戒飛行隊:3個
BAE・ニムロッドMR.2飛行隊 x 4個(No120. 201. 206.の各飛行隊)

ニムロッドの所属するかつてのコースタル・コマンドの後身であるNo18グループは前述のように防空担当のNo11グルーブと合併してNo11/18グループになっています。
ニムロッドの部隊としては他に、同機の作戦転換及び予備飛行隊であるNo42飛行隊が存在します。

戦術輸送飛行隊:4個
ロッキード・ハーキュリーズC.1/C.3飛行隊 x 4個(No24. 30. 47. 70.の各飛行隊)

戦術輸送ヘリコプター飛行隊:2個:
ボーイング・チヌークHC.2飛行隊 x 2個(No7及び18飛行隊)

チヌークの予備飛行隊として作戦転換任務も兼ねるNo27飛行隊が存在しますが、この飛行隊は98年に現役の実戦飛行隊に昇格しているようです。
なお、フォークランドに駐留してチヌークと捜索救難用シーキングを混成運用するNo78飛行隊は従来通りです。

空中給油飛行隊:2個
ロッキード・トライスターKC.1/K.1装備のNo216飛行隊、ヴィッカース・VC10K装備のNo101飛行隊。

1993年にハンドレページ・ヴィクターK.2が退役しましたけれどその代替は無く、空中給油機勢力は一個飛行隊が純減になっています。

次回は「1990年代のイギリス海軍航空隊(FAA)」です、ではまた。

2020年10月18日 (日)

1990年代前半のイギリス空軍(RAF) (ブリティッシュ・ファントム退役)

今回は1990年代前半のイギリス空軍(RAF)です。
これまで同様に、英語版ウィキペディアや英語のサイト「ウイングアビエーション」、雑誌「世界の傑作機」などを参考に纏めてみました。

第二次大戦後のイギリス空軍(RAF)及びイギリス海軍航空隊(FAA)の連載記事の一覧表はこちらへ

では1991年末時点におけるRAFの戦力概要について。

戦闘機飛行隊:推定9個:
パナピア・トーネードF.3飛行隊 x 7個(No5. 11. 23. 25. 29. 43. 111.の各飛行隊)
マクダネル・ファントムFGR.2飛行隊 x 2個(No19. 56.の各飛行隊)

RAFのファントム部隊は1987年から可変翼の新型迎撃戦闘機トーネードADVへの更新が開始されて、この時点ではストライクコマンド指揮下のNo11グループ(かつてのファイター・コマンド、イギリス本土防衛任務)の主力を形成しています。
1990年8月に発生した湾岸危機では、少なくともNo5及び11飛行隊が湾岸諸国の防空支援用として現地に展開していますが、トーネードF.3は翌年1月17日に発動されたイラク軍に対する空爆作戦「デザートストーム」には直接参加してはいないようです。

ブリテッシュ・ファントムはRAFG(ドイツ駐留イギリス空軍)指揮下のNo19飛行隊、No11グループ指揮下のNo56飛行隊、そして88年に飛行隊から独立したNo1435フライト(フォークランド防衛任務)のみとなっていて、終焉の時はすぐそこまで迫っていました。
これらファントム部隊は湾岸危機においては現地に派遣されなかったようで、RAFG所属のNo19飛行隊は92年1月に解散しています。
代わりにドイツに送られたトーネードADVの部隊は無く、RAFGのドイツ防空任務はこれで終了です。
東西冷戦終焉に伴う国防予算削減、そしてドイツ空軍の防空能力強化によってRAFの戦闘機部隊をドイツに駐留させる意味も意義も無くなっていたのです。
この当時、ドイツ空軍はそれまで視程外空対空戦闘能力を持っていなかった主力戦闘機F-4FのレーダーFCSをF/A-18戦闘攻撃機と同じものに換装して本格的な視程外戦闘能力を付与するアップグレード改造を着々と進めています。
RAFで最後に残ったファントム部隊、No56飛行隊とNo1435フライトは92年7月にファントムの運用を終了、No56飛行隊はトーネードADVの作戦転換部隊OCU229から任務を引き継ぐと同時に予備飛行隊に指定されています。
従来はこの種の飛行隊を「シャドー」飛行隊と呼称していたのですが、この頃には「予備」飛行隊に変更されているようです。
No1435フライトはトーネードF.3に機種改編して、引き続きフォークランド防衛任務に就いています。

攻撃飛行隊:推定18個:
パナピア・トーネードGR.1飛行隊 x 9個(No2. 9. 13. 14. 17. 20. 27. 31. 617.の各飛行隊)
SEPECAT・ジャガーGR.1飛行隊  x 3個(No6. 41. 54.の各飛行隊)
ブラックバーン・バッカニアS.2飛行隊 x 2個(No12. 208.の各飛行隊)
BAE・ハリアーGR.7飛行隊 x 2個(No3. 4.の各飛行隊)
BAE・ハリアーGR.5飛行隊 x 1個(No1飛行隊)

かつて開発中止になったイギリス国産のTSR2、その代替として一度は導入が決定されたものの財政的問題からキャンセルせざるを得なかったアメリカ製のF-111k。
それら先達の無念を晴らすために、イギリスが西ドイツやイタリアとの共同開発という形で遂に玉成に漕ぎ付けたのが、可変翼を装備して超低空高速侵入と超音速性能を両立させた戦術攻撃偵察機トーネードIDSです。
その最初の量産型GR.1はまず超低空高速侵入任務をアブロ・ヴァルカン爆撃機とブラックバーン・バッカニア攻撃機から引継ぎ、さらにRAFG配備のジャガー攻撃機の任務も引き継いでこの時点では9個飛行隊(RAFGに5個、ストライクコマンド隷下のNo1グルーブに4個)が実戦配備されていますが、冷戦終結に伴うRAFGの戦力削減で1991年9月にNo15飛行隊が、12月にNo16飛行隊が解散して前者は翌年春にトーネードIDSの兵装転換部隊兼予備飛行隊として再編、後者は91年11月にジャガー攻撃機の作戦転換兼予備飛行隊として再編されています。
1990年8月に発生した湾岸危機、翌年1月に発動された「デザートストーム」作戦ではこれらトーネードIDS部隊は直接間接に当時の実戦飛行隊全てが関わっています。
「デザートストーム」作戦においては、RAFのトーネード部隊は得意の超低空高速侵入でイラク軍の航空基地に対する攻撃任務に就いたものの、イラク軍の対空砲火によって予想外の損失を出してしまいます。
超低空侵入で対空砲火の脅威に晒されたのであれば、防空網制圧作戦の成功で安全になった中高度からの精密爆撃に切り替えれば良いところなのですが、驚くべきことに当時のRAFトーネード部隊は中高度からの精密爆撃に必要なレーザー誘導爆弾の運用能力を持っておらず苦慮することになったのです。
超低空高速侵入攻撃能力に絶大な自信を持っていたそのツケが回ってきたと言えましょうか。
トーネードIDSの中高度からの精密爆撃能力欠如の問題は、イギリス本国から急遽派遣されてきたレーザー誘導爆弾の運用能力を持つバッカニア部隊との共同作戦で補うと共に、トーネードIDSへのレーザー誘導爆弾の運用能力付与が行われていきます。
湾岸戦争後、トーネードIDS部隊は1992年4月にNo15飛行隊がそれまでトーネードIDSの兵器転換部隊として活動していたNo45飛行隊の任務を引き継いで作戦転換兼予備飛行隊になり、RAFG所属のNo20飛行隊は92年7月に解散、ストライクコマンド隷下のNo1グルーブ所属のNo27飛行隊が1993年9月に解散し、93年10月にはバッカニアS.2装備のNo12飛行隊が先に解散したNo27飛行隊から機材人員を引き継ぐ形でトーネードGR.1装備飛行隊になっています。

なお1959年元日をもって、それまでの第二戦術空軍を再編して誕生したRAFGは1993年にストライクコマンド指揮下のNo2グループに再編されています。
冷戦が終結して、ストライクコマンドとは別の独立した指揮権を持つ航空集団をドイツに駐留させておく意義が薄れたということなのでしょう。
これでRAFの航空戦闘部隊は全てストライクコマンドの指揮下になったのです。

1974年から実戦配備されている英仏共同開発の戦術攻撃偵察機ジャガーは実戦飛行隊3個全てがイギリス本土に配備のNo1グループ所属になっていて、この他に運用転換兼予備飛行隊としてNo16飛行隊がジャガー装備で再編されています。
この時期のジャガーやトーネードIDSの予備飛行隊には戦術核兵器WE177が割り当てられていて、従来の「シャドー」飛行隊と同じく有事の際には実戦任務に復帰する部隊であったようです。
湾岸危機及び湾岸戦争ではトーネードIDS同様に、ジャガー実戦飛行隊の全力が湾岸地域に派遣されて直接間接に関わっています。

1969年から実戦配備されたRAFのバッカニアS.2攻撃機は1991年1月に発動された「デザートストーム」作戦において前述のトーネード部隊の思わぬ苦戦をフォローする為にNo12飛行隊とNo208飛行隊の混成部隊が急遽派遣されて、本機の持つレーザー誘導爆弾運用能力を生かしてトーネード部隊の精密水平爆撃の支援任務に就いています。
イギリス軍のバッカニアにとっては、空海軍を通じてこれが唯一の実戦参加になりました。
この後、No12飛行隊は93年10月に解散し、トーネードIDS装備でこの前月に解散したNo27飛行隊がNo12に隊ナンバーを変更する形で再編されています。
RAF最後のバッカニア飛行隊No208は94年3月に解散し、1962年7月にイギリス海軍航空隊の801NASがバッカニアS.1装備で再編されて以来のイギリス空海軍におけるバッカニア実戦部隊運用史にピリオドが打たれたのです。

またこの時期には、イギリス純国産の戦術核爆弾三タイプのうち、WE177A(重量272kg、核出力最大10キロトン)が92年に、WE177C(重量457kg、核出力200キロトン)が95年に退役しています。
これでイギリス軍の保有する戦術核兵器はトーネードIDSが運用するWE177B(重量457kg、核出力450キロトン)のみとなりました。

RAFのハリアー部隊は1990年末までに3個飛行隊全てが第二世代のアメリカン・ハリアーに更新を終えていて、ブリティッシュ・ハリアーで実戦部隊にあるのは中米ベリーズに駐留するNo1417フライト(ハリアーGR.3装備)ですが、この部隊は93年7月に解散してこれによりブリティッシュ・ハリアーのRAFにおける実戦任務は終了となりました。
第二世代ハリアーはRAFG所属のNo3及びNo4飛行隊がハリアーGR.7装備で、No1グルーブ所属でハリアーGR.5を運用するNo1飛行隊は92年6月にハリアーGR.7に機種改編しています。
またかつてのハリアー実戦飛行隊で77年に解散し、その後にRAFG配備のトーネード部隊として再編され92年7月に再び解散したNo20飛行隊は、92年9月にそれまでハリアーの機種転換部隊であったNo233OCUの任務を引き継いで再編されています(予備飛行隊も兼任)。

なお、これらハリアー部隊が湾岸危機及び湾岸戦争に直接間接に関与することはなかったようです。

偵察部隊:イングリッシュ・エレクトリック・キャンベラPR.9装備のNo1PRU(写真偵察ユニット)

この部隊は83年にNo39飛行隊が再編されて誕生したのですが、機体の配備定数が減ったので飛行隊からユニットに変わったのか、それとも他に特段の理由があって再編されたのかはわかりませんでした。
そしてこのNo1PRUは92年7月に飛行隊に再昇格しています。
しかし隊名はNo39(1PRU)とされていて、これもなんだかよくわからないところ。
ユニットという部隊名称を止めることになってこうした形になったのかどうか。

空中早期警戒機飛行隊:ボーイング・セントリー AEW.1装備のNo8飛行隊

72年以来、第二次大戦においてイギリスを代表する爆撃機であったアブロ・ランカスターの直系の子孫であるアブロ・シャクルトンAEWを運用してきたNo8飛行隊はこの年に解散、すぐにセントリーAEW.1装備飛行隊として再編されています。
これまでの使用機シャクルトンAEWはレシプロ機で早期警戒レーダーは海軍のガネットAEW艦上早期警戒機のシステムを移植という、80年代ともなれば古色蒼然のそしりを免れないような機体でしたけれど、90年代以降のイギリス本土の防空の要として相応しいセントリー(E-3D)に更新されて面目を一新という感じですな。

海上哨戒飛行隊:4個:
BAE・ニムロッドNR.2飛行隊 x 4個(No42. 120. 201. 206.の各飛行隊)

イギリス本国周辺の海上哨戒と対潜を主任務とするニムロッド部隊は、92年10月にNo42飛行隊がニムロッドの作戦転換部隊236OCUの任務を引き継いで、ニムロッドの作戦転換及び予備飛行隊になっています。
現役飛行隊がOCUから任務を引き継ぎ、同時に予備飛行隊を兼ねるという図式はこの当時にトーネードIDSやジャガー、ハリアーの部隊でも見られた事象です。
冷戦終結に伴う軍縮で所帯も予算も小さくなったので、作戦転換専任部隊を抱えておくのは非効率になったのでしょうね。

戦術輸送飛行隊:4個:
ロッキード・ハーキュリーズC.1/C.3飛行隊 x 4個(No24. 30. 47. 70.の各飛行隊)

人道支援や国際貢献で出番の多い輸送機部隊は、軍縮風が吹き荒れるこの時期でも安泰で現状維持です。

戦術輸送ヘリコプター飛行隊:2個:
ボーイング・チヌークHC.1飛行隊 x 2個(No7及び18飛行隊)

イギリス陸軍の作戦支援任務に就くチヌークHC.1は、93年に改良型のHC.2に改編しています。
またチヌークの作戦転換任務を受け持つNo240OCUの任務を引き継ぐと同時に予備飛行隊にも指定されたNo20飛行隊が93年に再編されています。
なお、チヌークを運用する部隊としては他にフォークランド駐留で捜索救難用シーキングと混成のNo78飛行隊が存在します。
 
空中給油飛行隊:3個:
ロッキード・トライスターKC.1/K.1装備のNo216飛行隊、ヴィッカース・VC10K装備のNo101飛行隊とハンドレページ・ヴィクターK.2装備のNo55飛行隊。

元戦略爆撃機のハンドレページ・ヴィクター空中給油機装備のNo55飛行隊は、湾岸戦争に参加して最後のご奉公をした後の93年10月に解散しています。
ヴィクターの引退で、かつてイギリス戦略核部隊の主柱であったボマー・コマンドの面影はついにRAFから消え去ってしまったのです。

最後にRAFが運用するエリアディフェンス用地対空ミサイルですが、91年7月にRAF最後のエリアディフェンスミサイル部隊であるNo85飛行隊(ブラッドハウンドMk.2装備)が解散しました。
これも冷戦終結を物語る話なのであります。

次回は「1990年代後半のイギリス空軍(RAF)」です、ではまた。

2020年10月 4日 (日)

1980年代のイギリス海軍航空隊(FAA) (インヴィンシブル級空母就役とシーハリアー戦闘機の戦力化)

今回は1980年代のイギリス海軍航空隊(FAA)とその活躍の舞台であるイギリス海軍の空母の状況についての概要です。
これまでと同様に、ウィキペディア英語版と英語サイト「ウィングス-アビエーション」、雑誌「世界の傑作機」を情報ソースとして纏めてみました。

第二次大戦後のイギリス空軍(RAF)及びイギリス海軍航空隊(FAA)の連載記事の一覧表はこちらへ

では最初に1981年末時点でのイギリス海軍航空隊の800番台実戦飛行隊の概要です。

戦闘攻撃飛行隊:3個
BAE・シーハリアーFRS.1飛行隊 x 3個(800 801 899の各飛行隊)

イギリス海軍最後の艦隊空母「アークロイヤル」の退役に伴って1978年末に消滅したFAAの固定翼戦闘機部隊でしたけれど、1980年3月に司令部飛行隊の899NASとシーハリアー最初の実戦飛行隊800NASが再編され、この年の初めに801NASが編成されてFAAの800番台シーハリアー部隊は実戦二個、機種転換一個の三個飛行隊体制が確立し、この体制が基本的に続いていきます。
1982年4月に生起したフォークランド紛争では、南大西洋に出撃する空母「ハーミーズ」に800NASのシーハリアー12機、1980年7月に竣工し翌年から実働体制に入っている軽空母「インヴィンシブル」に801NASのシーハリアー8機が乗艦していました。
この二隻の空母を主力とする機動部隊のイギリス本国出撃後、FAAは在庫のシーハリアーとパイロットをかき集めて第三の実戦飛行隊809NASが編成され、同隊のシーハリアー8機は大型輸送船「アトランティック・コンベア」に乗船して作戦海域に運ばれて、「ハーミーズ」と「インヴィンシブル」に4機ずつ別れて移乗しています。
紛争勃発当初は特に海外からその戦闘能力についていささか疑念を持って見られていたシーハリアーですが、その運用実績は目覚しいもので当のイギリス海軍が危惧した航空戦による損耗も無く、長期作戦中の母艦における保守整備についても問題は無いのが確認されました。
この紛争におけるシーハリアーの目覚しい活躍で、イタリアは建造中の小型空母へのハリアー導入を決定し、スペインはハリアー運用を前提とした軽空母を建造。
インド海軍はこの紛争前にシーハリアーの導入を決定していましたが、紛争におけるシーハリアーの活躍に自分たちの判断は間違っていなかったと胸をなで下ろしたことでしょう。
対戦相手のアルゼンチンにとっては、フォークランド「奪還」に対する目の上のコブであった空母「アークロイヤル」が1980年にスクラップ売却されて、これで勝算アリという判断だったのにたった28機のシーハリアーに苦も無く捻られてしまって絶句してしまったことでしょうね。

対潜ヘリコプター飛行隊:推定7個:
ウェストランド・シーキング飛行隊 x 5個(814 819 820 824 826の各飛行隊)
アグスタウェストランド・リンクスHAS.2飛行隊 x 1個(815飛行隊)
ウェストランド・ワスプHAS.1飛行隊 x 1個(829飛行隊)

シーキングはこの時期は当時の最新バージョンであるHAS.5が主力であったと思われますが、全ての飛行隊がHAS.5に更新されていたかどうか特定はできませんでした。
フォークランド紛争では、空母「ハーミーズ」に826NAS、「インヴィンシブル」に819NASが乗艦して機動部隊周辺の対潜警戒任務に就いています。

ワスブに代わって駆逐艦やフリゲートに展開する英仏共同開発のリンクスはこの年から部隊就役を開始しています。
フォークランド紛争では早くも実戦を体験していて、小型のシースクア空対艦ミサイルを用いてアルゼンチンの哨戒艦を攻撃しています。
リンクスはセンサーを一切搭載していなかった前任のワスプと異なり、対水上レーダーと磁気探知機(MAD)を搭載していますがソノブイシステムは無く、ディッピングソナーもFAAでは運用しなかったとの事。
ディッピングソナーについてはシーキングに任せるとしても、ソノブイの運用能力が無いのは対潜任務上どうなんだろうかと疑問に感じるところなのです。
ソノブイによるパッシブ対潜戦術も空母搭載のシーキングで行い、駆逐艦やフリゲートに搭載されるリンクスは対潜というよりは海上哨戒及び攻撃を主任務としていたのかどうか。
この辺の明確な答えは英語サイトを見てもイマイチはっきりしないところがあるので、今後出るであろう「世界の傑作機 ウェストランド・リンクス」かイカロスのムック本に期待したいところです。

輸送ヘリコプター飛行隊 x 2個
ウェストランド・シーキングHC.4飛行隊 x 1個(846飛行隊)
ウェストランド・ウェセックスHU.5飛行隊 x 1個(845飛行隊)
フォークランド紛争では846NASが空母「ハーミーズ」に乗艦してコマンドー輸送任務に就いています。
845NASも作戦に参加してSAS(イギリス陸軍特殊空挺部隊)の作戦支援にも当っていますが、乗艦した船については特定できませんでした。
845NASは紛争終結後にシーキングHC.4に機種改編したので、FAAのウェセックスにとってはこの戦いが第一線から身を引く花道になったのです。

なおこの紛争前後には前述のシーハリアー飛行隊809NASの他に、下記のヘリコプター飛行隊が編成されています。
825NAS(シーキングHAS.2装備、1982年5月-9月)
847NAS(ウェセックスHU.5装備、1982年5月-9月)
これらのヘリコプター飛行隊はイギリス海軍補助艦隊(RFA)所属のヘリコプター支援艦「エンガディン」と紛争勃発でイギリス海軍に徴用されたコンテナ船「アトランティック・コーズウェイ」に乗艦してフォークランドに展開しています。

これら航空隊が展開する空母は「ハーミーズ」と最新鋭艦の「インヴィンシブル」の二隻で、フォークランド紛争では縦横無尽の活躍だったのは皆様ご存知の通りです。
フォークランド紛争勃発直後にイギリス海軍は航空機運用艦の急速増強を図り、予備艦の「ブルワーク」(対潜コマンドー母艦、1981年4月退役)と対潜ヘリコプター巡洋艦「タイガー」(1978年4月退役)と「ブレイク」(1979年退役)について再就役の可否について調査を行います。
「ブルワーク」は退役直前に起きた火災事故のダメージが予想以上に大きくて、再就役には最短で八ヶ月かかるという結論。
「タイガー」と「ブレイク」は「ブルワーク」とは逆に船体の状態が良いので急遽ドライドッグに入渠させて再就役工事の準備に入ります。
海軍としてはこの二隻を6インチ主砲による対地砲撃と、艦後部の広いヘリコプター甲板を利用してシーハリアーやハリアーの中継基地として使う事を意図していたそうです。
ハリアー一族の戦闘行動半径にやや不安があり、空中給油機を持っていないイギリス海軍にとっては、空母の前方に発着拠点を展開する事は貴重なシーハリアーやハリアーの損耗を避けられるのでそれなりの合理性はある話です。
しかしこの二隻は退役の大きな原因になった、運用に人手がかかるという早期再就役に極めてマイナスの要素が付き纏い、さらにアルゼンチン海軍の大型巡洋艦「ヘネラル・ベルグラーノ」がイギリス海軍の攻撃型原潜「コンカラー」に雷撃されて撃沈され、多くの死傷者を出す大惨事を目の当たりにして作業は断念されています。
「タイガー」と「ブレイク」が再就役した場合は想定される任務上、機動部隊本体からかなり前方(フォークランド寄り)に展開する必要がありますが、その場合対潜については機動部隊本体の対潜ヘリの充分な護衛を得られるか問題になります。
護衛のフリゲートは当然付けるでしょうけれど、機動部隊の護衛だけで相当な数の駆逐艦やフリゲートを回しているイギリス海軍にとって、これ以上の兵力を割く余裕があるのか否か。
また「ヘネラル・ベルグラーノ」も一応駆逐艦に護衛されていてあの大惨事だったのです。
もし充分な対潜護衛が付けられない状態で「タイガー」や「ブレイク」がアルゼンチン海軍の潜水艦から攻撃されたら・・・。
それで大きな人的犠牲が出ることをイギリス政府及び海軍は懸念したのでしょうね。

イギリス海軍はフォークランド紛争前には空母三隻体制は財政的に難しいとして、既に建造中の「イラストリアス」「アークロイヤル」を維持して「ハーミーズ」と「インヴィンシブル」は海外売却とする方針を固めていました。
「インヴィンシブル」がオーストラリア海軍の空母「メルボルン」の後継艦として売却することが内定し、紛争勃発直前にはオーストラリア海軍の将兵が訓練の為にイギリスにやってきていたのです。
しかし紛争の結果、NATOの一員としての対潜任務とフォークランドに代表される海外領土の防衛には三隻保有二隻稼動体制が必要と判断され、「インヴィンシブル」のオーストラリアへの売却は1983年7月に中止とされて、代わりに「ハーミーズ」の売却が提案されます。
しかし「ハーミーズ」は1960年代半ばに、当時「メルボルン」を近代化改装して維持すべきかそれとも他の適当な大きさの空母を取得すべきか迷っていたオーストラリアに売却提案が行われ、運用経費及び人的資源の面から運用は困難と判断されて却下された曰くつきのフネです。
またオーストラリアでは政権交代で労働党が政権に就き、カネ食い虫の空母は破棄という流れになってこの話も破談です。
そもそもオーストラリアとしては当時まだ敵対関係にあったインドネシアに対する軍事的圧力として、必要とあればかの国の首都ジャカルタを空爆可能なF-111戦闘爆撃機をアメリカから調達運用しているので、F-111が戦力化した1970年代半ばの時点で空母「メルボルン」の存在意義も相当に薄れていたのではないかと考えるところです。
「メルボルン」は対潜任務も兼ねているとはいっても、オーストラリア周辺の軍事的環境としてソ連潜水艦の脅威は固定翼対潜機を搭載した空母が必要なレベルなのかという話なのです。

閑話休題、インヴィンシブル級は結局三隻全てをイギリス海軍が保有することに落ち着き、1982年6月に二番艦「イラストリアス」が竣工、84年4月に「ハーミーズ」が退役して一時的に空母二隻体制になりますが、85年11月に三番艦「アークロイヤル」が竣工し、これでイギリス海軍の空母三隻体制が確立されました。

1986年末時点のイギリス海軍航空隊の戦力は前述の1981年末時点と大きな変化は無く、再編された部隊としてシーキングHAS装備の対潜ヘリコプター飛行隊810NASと、シーキングAEW装備の早期警戒ヘリコプター飛行隊849NASがあります。
849NASはフォークランド紛争において、イギリス機動部隊が早期警戒機の欠如からミサイル駆逐艦をレーダーピケット任務に充てざるを得ずに「シェフィールド」が沈没する損害を受けた反省から編成された部隊です。
機種改編した部隊は永らくワスプHAS.1を運用していた829NASで、この年にリンクスHAS.2に機種改編しています。
この後、89年8月にシーキングHAS装備の824NASが解散して1990年代を迎えることとなります。

次回は「1990年代前半のイギリス空軍(RAF)」です、ではまた。

2020年9月27日 (日)

1980年代後半のイギリス空軍(RAF) (イギリス最初で最後の純国産超音速戦闘機ライトニング退役)

今回は前回「1980年代前半のイギリス空軍(RAF)」に引き続いて1980年代後半のイギリス空軍(RAF)です。
これまで同様に、英語版ウィキペディアや英語のサイト「ウイングアビエーション」、雑誌「世界の傑作機」などを参考に纏めてみました。

第二次大戦後のイギリス空軍(RAF)及びイギリス海軍航空隊(FAA)の連載記事の一覧表はこちらへ

では1986年末時点におけるRAFの戦力概要について。

戦闘機飛行隊:推定10個:
マクダネル・ファントムFGR.2飛行隊 x 5個(No19. 23. 29. 56. 92. の各飛行隊)
マクダネル・ファントムFG.1飛行隊 x 2個(No43. 111.の各飛行隊)
マクダネル・ファントムF.3飛行隊 x 1個(No74飛行隊)
BAC・ライトニングF.6飛行隊 2個(No5. 11.の各飛行隊)

ファントムFGR.2飛行隊はRAFG(ドイツ駐留イギリス空軍)に二個飛行隊(No19と92)、ストライクコマンド指揮下のNo11グループ(かつてのファイター・コマンド)に所属するイギリス本土防空任務の二個飛行隊(No23と56)、フォークランド防衛用に1個飛行隊(No29)という配備状況です。
80年代後半はブリティッシュ・ファントムが可変翼の新型迎撃戦闘機トーネードADVに更新を始めた時期で、No29飛行隊が1987年3月に解散した直後の4月にRAF最初のトーネードADV実戦部隊として、トーネードF.3装備の迎撃飛行隊として再編されています。
次いで88年10月にはNo23飛行隊が解散して翌月にトーネードF.3飛行隊として再編しています。

ファントムFG.1は二個飛行隊がNo11グループ指揮下でイギリス本土防空任務に就いていますが、こちらもトーネードADVに更新されていきます。
No43飛行隊は1988年5月にファントムFGR.2に改編して半年後に解散、89年9月にトーネードF.3装備の迎撃飛行隊として再編されます。
No111飛行隊は90年1月に解散し、その年の6月にトーネードF.3装備で再編されます。
84年秋に米海軍中古のF-4Jを購入して編成されたNo74飛行隊は91年初頭に解散しています。
ファントム飛行隊の解散に伴い、当初はNo23、次いでNo29飛行隊の分遣隊が派遣されていたフォークランド防空任務は88年11月に飛行隊から独立してファントムFGR.2装備のNo1435フライト(4機編成)になって、92年夏まで任務に就くことと成りました。

1961年に実戦部隊に配備を開始して以来、イギリスの空を守り続けてきたイギリス最初にして最後の純国産超音速戦闘機ライトニングもこの時期にはいよいよ終焉の時を迎えていて、No5飛行隊が88年1月に解散してトーネードF.3装備部隊としてすぐに再編。
最後のライトニング実戦飛行隊となったNo11飛行隊は88年5月に解散、その二ヶ月後にトーネードF.3装備部隊として再編されます。
ライトニングの退役、そして後述するブリティッシュ・ハリアーの引退は、冷戦終結と共にRAFの歴史に大きなピリオドを打つ象徴的な時期であったと申せましょうか。

攻撃機飛行隊:推定18個:
パナピア・トーネードGR.1飛行隊 x 9個(No9. 14. 15. 16. 17. 20. 27. 31. 617.の各飛行隊)
SEPECAT・ジャガーGR.1飛行隊 x 4個(No2. 6. 41. 54.の各飛行隊)
ブラックバーン・バッカニアS.2飛行隊 x 2個(No12. 208.の各飛行隊)
ホーカーシドレー・ハリアーGR.3飛行隊 x 3個(No1. 3. 4.の各飛行隊)

アブロ・ヴァルカン爆撃機とバッカニア攻撃機が担っていた超低空侵攻戦術核攻撃任務を引き継ぎ、RAFG配備のジャガー攻撃機の戦術攻撃偵察任務も受け継いだ可変翼の戦術攻撃機トーネードGR.1はRAFGに六個飛行隊(No14. 15. 16. 17. 20. 31.の各飛行隊)とストライクコマンド指揮下のNo1グループ(かつてのボマー・コマンドと航空支援コマンドを統合)に所属してイギリス本土に展開する四個飛行隊(No27. 31.の各飛行隊)が配備されています。

1974年から実戦配備を開始した英仏共同開発の戦術攻撃偵察機ジャガーGR.1は最盛期の8個飛行隊から半減して、RAFG配備も一個飛行隊(No2)のみとなっています。

超低空高速飛行ゆえの主翼のストレスによってRAFG配備部隊が早期にトーネードに更新されたバッカニアS.2は、イギリス近海における洋上阻止任務用としてストライクコマンド指揮下のNo18グループ(かつてのコースタル・コマンド)所属で健在。
この時期にはシーイーグル空対艦ミサイルの運用能力付与やレーダーのアップグレードなどの改修を施されています。

近接航空支援用のV/STOL戦術機ハリアーGR.3はRAFGにNo3及び4飛行隊、イギリス本土にNo1グループ所属のNo1飛行隊が配備されていますが、1969年に実戦配備が開始されたこれらRAFブリティッシュ・ハリアーにもいよいよ引退の時期を迎えます。
アメリカがハリアーを独自改良して兵装搭載能力や航続性能を向上させた第二世代のアメリカン・ハリアー(AV-8B)をイギリスが逆輸入する形になって、RAF向けに改設計を行って実用化したのがハリアーGR.5以降のシリーズです。
まずハリアー最初の実戦部隊であるNo1飛行隊が1988年10月にハリアーGR.5に機種改編。
次いでNo.3飛行隊が89年3月にハリアーGR.5に機種更新、90年9月には最後のハリアーGR.3実戦部隊のNo4飛行隊がハリアーGR.7に機種改編。
これでハリアーGR.3装備の実戦部隊は1980年から中米ベリーズに駐留しているNo147フライトのみとなりました。

偵察機:イングリッシュ・エレクトリック・キャンベラPR.9装備のNo1PRU(写真偵察ユニット)

空中早期警戒飛行隊:アブロ・シャクルトンAEW装備のNo8飛行隊

海上哨戒飛行隊:4個:
BAE・ニムロッドMR.2飛行隊 x 4個(No42. 120. 201. 206.の各飛行隊)

戦術輸送機飛行隊:4個:
ロッキード・ハーキュリーズ飛行隊 x 4個(No24. 30. 47. 70.の各飛行隊)
RAFのC-130KはオリジナルのC.1と、C.1の胴体をストレッチした改造機C.3が存在しますけれど、両者共に30機程度の保有数でどの飛行隊がどちらを装備しているのかは特定できませんでした。

戦術輸送ヘリコプター飛行隊:2個
ボーイング・チヌークHC.1飛行隊 x 2個(No7及び18飛行隊)

アメリカ製の双発大型輸送ヘリコプターCH-47はRAFにおいては81年から配備が始まり、二個飛行隊がイギリス陸軍の戦術輸送支援任務に就いています。
なお、チヌークを運用する部隊としては他にNo78飛行隊が存在します。
この飛行隊はフォークランド駐留ヘリコプター部隊として1986年5月に再編されたもので、チヌークと捜索救難用のシーキングHARの混成編成になっています。

空中給油飛行隊:3個:
ロッキード・トライスターKC.1/K.1装備のNo216飛行隊、ヴィッカース・VC10K装備のNo101飛行隊とハンドレページ・ヴィクターK.2装備のNo55飛行隊。
トライスターKC.1とK.1を装備するNo216飛行隊は86年から実働体制に入っています。
当初は輸送と空中給油の二刀流の飛行隊でしたが、次第に空中給油が主任務になっていったそうです。
一方、これまで2個飛行隊体制を維持してきたヴィクターK.2部隊ですが、機材の老朽化もあってNo27飛行隊がこの年の6月に解散して状態良好な機体がNo55飛行隊に移籍しています。

次回は「1980年代のイギリス海軍航空隊(FAA)」です、ではまた。

2020年9月20日 (日)

1980年代前半のイギリス空軍(RAF) (トーネード攻撃機の実戦配備開始とヴァルカン爆撃機の退役)

今回は1980年代前半のイギリス空軍(RAF)です。
これまで同様に、英語版ウィキペディアや英語のサイト「ウイングアビエーション」、雑誌「世界の傑作機」などを参考に纏めてみました。

第二次大戦後のイギリス空軍(RAF)及びイギリス海軍航空隊(FAA)の連載記事の一覧表はこちらへ

では1981年末時点におけるRAFの戦力概要について。

戦闘機飛行隊:推定9個:
マクダネル・ファントムFGR.2飛行隊 x 5個(No19. 23. 29. 56. 92.の各飛行隊)
マクダネル・ファントムFG.1飛行隊 x 2個(No43. 111.の各飛行隊)
BAC・ライトニングF.6飛行隊 x 2個(No5. 11.の各飛行隊)

ファントムFGR.2装備の飛行隊は、イギリス本土にあって旧航空支援コマンドのNo38グループ指揮下で戦術偵察任務に当っていたNo41飛行隊が1977年に解散、イギリス本土防空任務のNo111飛行隊が79年10月に海軍から移籍のファントムFG.1に機種改編された結果、実戦飛行隊は5個に減少しています。
配備はRAFG(ドイツ駐留イギリス空軍)の制空防空任務に二個飛行隊(No19. 92.の各飛行隊)、イギリス本土防空任務に三個飛行隊(No23. 29. 56.の各飛行隊)です。
またファントム機種転換部隊にNo228OCUが、有事の際にNo64飛行隊として実戦任務に就く「シャドースコードロン」なのは1970年代から引き続いています。
なおフォークランド紛争後はNo29飛行隊が1982年10月にフォークランドのポートスタンレー飛行場に防空任務で展開しています。
この任務追加でイギリス本土の防空飛行隊の一部を派遣することになって本国防空に穴が開くのを防ぐ為、アメリカ海軍の中古F-4Jを急遽購入してRAF仕様に改修の後、84年10月にF-4J(ファントムF.3)装備のNo74飛行隊が再編されています。

元々はイギリス海軍の艦上戦闘機として導入が始まったファントムFG.1のRAFにおける配備は、それまでの一個飛行隊(No43)に加えて、前述のように79年秋に更に一個飛行隊がFGR.2からの改編を実施して二個飛行隊体制、いずれもイギリス本土防空任務に就いています。
1970年代末からは、ブリティッシュファントムの持つ低空要撃能力にマッチした新型のレーダー誘導型空対空ミサイル「スカイフラッシュ」(但し原型はアメリカ製のスパローミサイル)が配備を開始しているので、RAFのファントム部隊はいよいよその本領発揮という感強しです。
しかし84年には次期迎撃戦闘機トーネードADVの作戦転換部隊No229OCUが編成されて、ブリティッシュファントムの時代も終わりが見え始めていたのです。

1960年代初めから配備を開始したイギリス最初にして最後の純国産超音速迎撃戦闘機ライトニングは、77年にRAFG指揮下の二個飛行隊がファントムに機種改編して以降、実戦飛行隊として残るのはイギリス本土防空任務に就く二個飛行隊のみとなりました。

爆撃機・攻撃機飛行隊:推定20個:
アブロ・ヴァルカンB.2飛行隊 x 5個(No9. 35. 44. 50. 101.の各飛行隊)
SEPECAT・ジャガーGR.1飛行隊 x 8個(No2. 6. 14. 17. 20. 31. 41. 54.の各飛行隊)
ブラックバーン・バッカニアS.2飛行隊 x 4個(No12. 15. 16. 208.の各飛行隊)
ホーカーシドレー・ハリアーGR.3飛行隊 x 3個(No1. 3. 4.の各飛行隊)

かつてのRAFボマーコマンドの主役であったヴァルカン爆撃機はRAFストライクコマンドの長距離戦術核攻撃用として6個飛行隊に配備され、依然としてまとまった勢力を維持していますけれど、既に後継となる英独伊共同開発の可変翼超音速攻撃機パナピア・トーネードが機種転換部隊に配備されて実戦配備に向けて着々と準備している状況です。
1982年に入るとヴァルカンの退役は急速に進んで、3月末にNo35飛行隊が解散、フォークランド紛争最中の5月にはNo9飛行隊が解散しています。
4月2日にアルゼンチン軍が南大西洋のイギリス領フォークランド諸島に侵攻したことで勃発したフォークランド紛争においては、現役の各部隊から選ばれたヴァルカン爆撃機が中部大西洋の孤島アセンション島の飛行場に展開し、そこからアルゼンチン軍に占領されたフォークランドの飛行場や防空レーダーなどに対する往復一万三千キロ弱という超遠距離爆撃を実施する「ブラックバック作戦」が五回実施されています。
この作戦はヴァルカン単機で実行されるものでしたが、ヴァルカン一機が搭載できる1,000ポンド爆弾は21発です。
海軍機動部隊から出撃するシーハリアーやRAFのハリアーの場合、搭載できる1,000ポンド爆弾は他に増槽一個を搭載するとして四発なので、ヴァルカン一機でハリアー五機分以上の火力を発揮できるのです。
機動部隊が運用するシーハリアーとハリアーは合わせて38機で、28機が二隻の空母に展開するシーハリアーは艦隊防空や攻撃機の護衛にも使われるので対地攻撃に使える機数はごく限られてしまいます。
空母「ハーミーズ」に乗艦しているRAFのNo1飛行隊ハリアーは10機で、こちらは対地攻撃専従にするとしても一度の出撃で飛ばせるのはせいぜい4機。
それを考えると、超遠距離飛行をして単機で突入して爆撃など一見効率的には見えないこの「ブラックバック作戦」も当時のイギリスにとっては実効性のある合理的作戦であったと申せましょうか。
またこの作戦に対してアルゼンチン軍は過剰に反応して、ヴァルカン爆撃機によるアルゼンチン本土爆撃を警戒して主力戦闘機のミラージュを本土防衛任務に貼り付けた結果、イギリス艦隊に対する攻撃はA-4攻撃機が戦闘機の護衛なしで行わざるを得ない状況が多々生じるというイギリス側にとっては実に好都合な思わぬ副産物を産んだのでした。
ともあれヴァルカンにとってはこの紛争が唯一の実戦参加で最後の花道となり、この年の末に最後の爆撃飛行隊No44が解散しています。
しかし次期空中給油機VC10kの導入が遅れた為、VC10k戦力化までの繋ぎとしてヴァルカンに白羽の矢が立てられて応急改造型のヴァルカンK.2がNo50飛行隊に配備され、82年6月から84年3月まで運用されています。
なお、ヴァルカン飛行隊として解散したNo9飛行隊はそれから約三ヶ月後の82年8月に、RAF初のトーネードGR.1実戦飛行隊として再編されています。
翌83年にはNo15. 27. 617.の三個飛行隊がトーネードGR.1飛行隊として再編、84年にはNo16飛行隊(再編)とNo20及び31飛行隊(ジャガーGR.1から機種改編)、85年にはNo14及び17飛行隊がジャガーGR.1から機種改編してトーネードGR.1飛行隊になっています。

フランスとの共同開発によって74年から実戦配備を開始したジャガーGR.1戦術攻撃偵察機は8個飛行隊を擁してRAF戦術攻撃力の主柱に成長しています。
配備はRAFGに五個飛行隊(No2. 14. 17. 20. 31.の各飛行隊)とイギリス本土の旧航空支援コマンド(No38グループ)に三個飛行隊(No6. 41. 54.の各飛行隊)です。
RAFにおけるジャガー攻撃機の勢力はこの時が最盛期で84年からはトーネードGR.1への機種改編が開始されて、前述したように85年までにNo14. 17. 20. 31.の四個飛行隊がジャガーを手放してトーネード飛行隊に転じています。

1960年代半ばから後半にかけてキャンセルされたTSR2とF-111Kの代替としてアブロ・ヴァルカン爆撃機と共に超低空侵攻戦術核攻撃任務を担ってきた海軍由来のバッカニアS.2攻撃機は、RAFGの戦術核攻撃用としてNo15及び16飛行隊、イギリス本土近海における対艦洋上阻止任務にNo12及び208飛行隊が任務に就いています。
これら従来からの飛行隊に加えて、海軍の空母「アークロイヤル」退役に伴ってRAFに移籍するバッカニアの受け入れ先として1979年7月にNo216飛行隊が再編されていますけれど、この飛行隊は79年から80年初めにかけて相次いだバッカニアの墜落事故、その原因である主翼のダメージの問題から他の飛行隊へ健在な機体の拠出をせざるを得なくなって翌年には解散しています。
バッカニアもヴァルカン同様にこの後減勢が始まって、83年にはNo15飛行隊が、84年2月にはNo16飛行隊が解散してその後にトーネード飛行隊として再編。
以後、現役で残るのはイギリス本土に展開するストライクコマンド隷下のNo18グループ(かつてのコースタル・コマンド)に所属する二個飛行隊のみとなりました。

世界初の実用V/STOL戦術攻撃機であるハリアーは、GR.3装備の飛行隊を三個擁しています。
配備はRAFGに二個飛行隊(No3及びNo4飛行隊)、イギリス本土の旧航空支援コマンドのNo38グループに一個飛行隊(No1)です。
これらのうち、機動運用任務のNo1飛行隊はフォークランド紛争勃発に伴い、かなりの損耗が予想される海軍のシーハリアーを補って艦隊の防空任務に就くために大型輸送船「アトランティック・コンベア」に増援用のシーハリアーと共に乗船し、作戦海域で空母「ハーミーズ」に移動して実戦投入されています。
実戦投入に当ってサイドワインダー空対空ミサイルの運用能力を付与されたハリアーGR.3ですが、懸念されたシーハリアーの損耗が予想を遥かに下回るものであったことから本来の十八番である地上攻撃任務に投入されました。
対地攻撃に使用する場合、シーハリアーが運用能力を持っていないレーザー誘導爆弾をRAFハリアーは使用可能というのが強みでしょう。
またフォークランド紛争終結直後は現地防空用にNo1453フライトが編成され、82年10月にファントムFGR.2装備のNo23飛行隊が現地に駐留して防空任務を開始すると対地攻撃任務に戻って、85年6月までハリアー装備の各飛行隊のローテーション派遣で6機常駐体制を続けています。

偵察機飛行隊:推定2個:
アブロ・ヴァルカンB.2(MMR)飛行隊 x 1個(No27飛行隊)
イングリッシュ・エレクトリック・キャンベラPR.9飛行隊 x 1個(No39飛行隊)

RAF唯一の長距離偵察機ヴァルカンB.2(MMR)を装備するNo27飛行隊は1982年3月に解散しています。
高高度偵察任務に就くキャンベラPR.9を装備するNo39飛行隊は82年6月に解散して機材は新編されたNo1PRU(写真偵察ユニット)に引き継がれていますが、この部隊についてはよくわかりませんでした・・・。
わざわざユニットと呼称するからには、保有する機体定数は飛行隊よりも少なくなってはいるのでしょうが。

空中早期警戒機飛行隊:1個:
アブロ・シャクルトンAEW飛行隊 x 1個(No8飛行隊)

第二次大戦におけるRAF爆撃機の象徴と言えるアブロ・ランカスターの最後の末裔がシャクルトンAEWで、72年以来イギリス本土周辺の早期警戒任務に就いています。

海上哨戒機飛行隊:推定4個:
BAE・ニムロッドMR.2飛行隊 x 1個(No206飛行隊)
BAE・ニムロッドMR.1飛行隊 x 4個(No42. 120. 201.の各飛行隊)

1971年から実戦配備を開始したジェット海上哨戒機ニムロッドMR.1は、77年に地中海マルタ島に展開していたNo203飛行隊が解散した結果、配備されているのはイギリス本土のみになっています。
なおニムロッド飛行隊は全てが前述のNo18グルーブです。
79年秋にNo206飛行隊が対水上レーダーやソノブイシステムのアップグレードを行ったニムロッドMR.2に改編していて、82年から83年にかけて他の三個飛行隊も次々にニムロッドMR.2に改編していきます。

戦術輸送機飛行隊:推定4個:
ロッキード・ハーキュリーズ飛行隊 x 4個(No24. 30. 47. 70. の各飛行隊)

1970年代半ばには6個飛行隊に配備されていたC-130ハーキュリーズは、イギリス軍のスエズ以東からの戦力撤退に合わせるように2個飛行隊が相次いで解散して、4個飛行隊体制に落ち着いています。
この時期には最初の導入型C.1(66機)のうち約30機に胴体をストレッチする改造を行ったC.3が配備されているのですが、どの飛行隊がC.3装備なのか特定できませんでした。

なお、輸送ヘリコプター部隊については、ウェストランド・ホワールウィンドやウェストランド・ウェセックスを装備していた50年代後半から70年代にかけては、例え輸送ヘリコプター(HC)装備であっても実際は捜索救難任務を兼任していたりして、イギリス陸軍の作戦を支援する純粋な戦術輸送任務に就いている飛行隊を特定することは困難でした。
そういった任務であると特定できたのは64年から80年までウェセックスHC.1を装備して、ライン駐留イギリス陸軍(BAOR)の支援任務に就いていたNo18飛行隊だけです。
1980年代に入ってようやく純粋に戦術輸送任務に就くヘリコプター部隊が特定できるようになり、それが81年8月に再編されたNo18飛行隊と82年9月に再編されたNo7飛行隊で、両飛行隊共にボーイング・チヌークHC.1を装備しています。
No18飛行隊は再編当初はハリアー装備のNo1飛行隊などと共にNo38グループの指揮下にありましたけれど、後にドイツ駐留になって97年までかの地に展開していました。

空中給油機飛行隊:推定2個:
ハンドレページ・ヴィクターK.2飛行隊 x 2個(No55. 57.の各飛行隊)

かつての戦略爆撃機ヴィクターB.2を空中給油機に改造して誕生したヴィクターK.2は、元相棒のヴァルカン爆撃機による超遠距離爆撃作戦「ブラックバック」を全力支援。
この爆撃作戦の成功はヴィクターK.2があってこそのものと言えましょう。
空中給油機の近代化施策としては、元旅客機のピッカースVC10を空中給油機に改造して任務に当らせることになりましたが、その就役が遅延したために応急策として前述のようにヴァルカン爆撃機を空中給油機に改造して短期間運用しています。
VC10k装備のNo101飛行隊は1984年5月に再編されて、ヴァルカンに代わってRAF第三の空中給油飛行隊として任務に就いています。
フォークランド紛争後、元民間機のロッキード・トライスラーを改造して空中給油/輸送機として空中給油能力をさらに向上増強することになって1984年11月に本機装備のNo216飛行隊が再編されていますけれど、部隊再編時点ではトライスターの改造機はまだ配備されておらず書類上の飛行隊と言えます。
この飛行隊が実働部隊になるのは改造を完了したトライスターKC.1/K.1を受領する86年からのようです。

またRAFが管理運用するエリアディフェンス用の地対空ミサイル部隊は、ブラッドハウンドMkⅡ地対空ミサイル装備の飛行隊が二個(No25及び85飛行隊)があって、この時期はNo25飛行隊がRAFG、No85飛行隊がイギリス本土に配備されていたようです。

次回は「1980年代後半のイギリス空軍(RAF)」です、ではまた。

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