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2020年11月 1日 (日)

1990年代のイギリス海軍航空隊(FAA)

今回は1990年代のイギリス海軍航空隊(FAA)とその活躍の舞台であるイギリス海軍の空母の状況についての概要です。
これまでと同様に、ウィキペディア英語版と英語サイト「ウィングス-アビエーション」、雑誌「世界の傑作機」を情報ソースとして纏めてみました。

では最初に1991年末時点でのイギリス海軍航空隊の800番台実戦飛行隊の概要です。

戦闘攻撃飛行隊:3個
BAE・シーハリアーFRS.1飛行隊 x 3個(800 801 899の各飛行隊)
実戦飛行隊2個(800NAS及び801NAS)と機種転換飛行隊(899NAS)なのは従来通りです。

フォークランド紛争における戦訓からシーハリアーの大幅な能力向上が計画され、ルックダウン・シュートダウン可能な新型レーダー「ブルーヴィクセン」を搭載するシーハリアーFA2の開発がこの時期には進んでいて、試作一号機は1988年9月に初飛行し90年11月には空母での運用試験も実施されています。
既存のシーハリアーFRS.1の改造と新造機の二刀流で進められるシーハリアーFA2は93年から海軍への引渡しが始まり、95年末までには上記の三個飛行隊が全てシーハリアーFA2装備になっています。
この新型シーハリアーと本機装備の米国製アクティブレーダー誘導空対空ミサイル・AMRAAMの組み合わせによって、イギリス海軍の空母は1978年秋にファントムFG.1が運用終了して以来の戦闘機による全天候迎撃能力を回復することになりました。
しかし飛行性能自体は従来のシーハリアーと同等で、RAFが装備するアメリカ由来の第二世代ハリアーと比較して戦闘行動半径や兵器搭載能力が劣る点は解消されずに残っています。
この点が後々、シーハリアーの早期退役にも繋がっていくことになるのでした。
世紀末の2000年4月には、FAAのシーハリアー部隊とRAFのハリアー部隊を臨機応変に運用するためのハリアー統合部隊が編成されています。
この部隊はRAFストライクコマンド隷下で再編されたNo3グルーブの指揮下に入ります。
この施策によって、RAFのハリアー飛行隊が海軍の空母に展開して作戦することになりました。
防空制空にシーハリアー、対地攻撃にRAFのハリアーという両機の特性を生かした理想的な戦闘実力を海軍の空母は持つことになって実に慶賀の至り。
しかし海軍の戦闘機部隊が平時において空軍の指揮下にあっさり入るとは、万事が縦割り組織な日本に住んでいる我々には驚かされまた新鮮な話なのであります。
私がイギリス軍に対して興味を持つのも、古めかしい伝統とこのような革新が同居している点にあるのですよ。

対潜ヘリコプター飛行隊:7個:
ウェストランド・シーキングHAS飛行隊 x 5個(801 814 819 820 826の各飛行隊)
アグスタウェストランド・リンクスHAS.2飛行隊 x 2個(815 829の各飛行隊)

この後、リンクス飛行隊は829NASが93年3月に解散して一個飛行隊体制になっています。
シーキングHAS部隊も93年7月に826NASが、2000年12月に814NASが相次いで解散していて世紀末のシーキングHAS飛行隊は3個にまで減勢してしまいました。
一方、シーキングの後継となる新世代の対潜ヘリコプターである英伊共同開発のアグスタウェストランドAW101は1987年の初飛行以来長期間の改良とテストを経て、97年にようやくFAAへの納入を開始しました。
マーリンHM.1と命名されたこの新型ヘリを装備する最初の実戦飛行隊824NASは2000年6月に再編されています。

早期警戒ヘリコプター飛行隊:1個:
ウェストランド・シーキングAEW飛行隊 x 1個(849飛行隊)

輸送ヘリコプター飛行隊: 2個:
ウェストランド・シーキング飛行隊 x 2個(845 846の各飛行隊)

イギリス海兵隊(コマンドー)支援用の飛行隊としては、この輸送ヘリコプター飛行隊の他に1995年9月にリンクスAHとガゼルの混成飛行隊847NASが再編されていますが、これは海兵隊のヘリコプター部隊である第3コマンドー旅団飛行隊がFAAに移籍する形で誕生した部隊で、任務はコマンドー所属時代と同じくコマンドー部隊への空中火力支援です。
コマンドー支援用飛行隊の運用はFAAに一元化して運用を柔軟化、効率化しようという考えなのかもしれません。

これら航空隊が展開するイギリス海軍の空母は80年代半ばから変化無く、インヴィンシブル級三隻(「インヴィンシブル」「イラストリアス」「アークロイヤル」)です。
湾岸危機、それに続く湾岸戦争では地中海での警戒任務に留まって作戦海域に入ることはなかったこれら空母は、1993年に始まったボスニア紛争に対するNATOの作戦に参加して、当時配備途上にあったシーハリアーFA2もこの時に初の実戦任務に就いています。
また前述の「ハリアー統合部隊」構想に合わせる形でRAFのハリアー運用能力の付与や艦首のシーダートSAM発射機の撤去による飛行甲板の拡張などの改装が行われて、本級の当初の呼称「全通甲板型巡洋艦」から航空機運用を最優先する完全な「軽空母」への脱皮がなされたのです。
さらにこの時期にはコマンドー部隊輸送母艦の再整備が図られて、98年には新造のヘリコプター強襲艦「オーシャン」が竣工。
かつてのコマンドー母艦が退役もしくは対潜任務/シーハリアー展開を主任務とするようになってからは、コマンドー輸送飛行隊はインヴィンシブル級に展開して任務に就いていたのですが、これら軽空母は建造当初からコマンドー輸送能力を副次的任務として加えられていたものの小柄な為にシーハリアーや対潜ヘリとスペースの取り合いになってしまっていました。
これでは作戦上融通が利き辛く、やはりコマンドー輸送専用の母艦が必要という結論になって、最大の課題であった建造コストの問題は商船規格を大胆に採用するなどして低減に努め、ようやく完成にこぎつけたのでした。
この強襲艦「オーシャン」と完全な軽空母に進化したインヴィンシブル級のコンビによって、イギリス海軍はアメリカ海軍とは比較にならないものの他の海軍とは一線を画する沿岸強襲攻撃能力を獲得したのでした。

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