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2020年9月 6日 (日)

1970年代のイギリス海軍航空隊(FAA)

今回は前回「1970年代後半のイギリス空軍(RAF)」に続いて、1970年代のイギリス海軍航空隊(FAA)とその活躍の舞台であるイギリス海軍の空母の状況についての概要です。
これまでと同様に、ウィキペディア英語版と英語サイト「ウィングス-アビエーション」、雑誌「世界の傑作機」を情報ソースとして纏めてみました。

では最初に1971年末時点でのイギリス海軍航空隊の800番台実戦飛行隊の概要です。

戦闘飛行隊:2個
マクダネル・ファントムFG.1飛行隊 x 1個(892飛行隊)
デ・ハヴィラント・シーヴィクセンFAW.2飛行隊 x 1個(899飛行隊)

イギリス海軍航空隊唯一のファントムFG.1の母艦飛行隊892NASは1969年春に編成されて、1970年半ばに空母「アークロイヤル」が改装を終了して現役に復帰すると乗艦して1978年秋に終了する最後の航海まで行動を共にします。
遷音速全天候複座戦闘機のシーヴィクセンFAW.2は、最後の母艦飛行隊899NASが空母「イーグル」に展開。
しかし「イーグル」は翌72年1月に退役してしまい、それに伴って最後のシーヴィクセン飛行隊も解散します。
なお899NASは1980年3月にシーハリアー戦闘攻撃機の機種転換飛行隊として再編されています。

攻撃飛行隊:2個
ブラックバーン・バッカニアS.2飛行隊 x 2個(800. 809.の各飛行隊)

イギリス海軍の誇る超低空高速侵攻用の艦上攻撃機バッカニアS.2は空母「アークロイヤル」に809NAS、空母「イーグル」に800NASが展開していますが、800NASは翌72年1月の「イーグル」の退役でその役目を終えて、72年2月に解散しています。
800NAS解散後はFAA唯一のバッカニア飛行隊となった809NASは、892NAS飛行隊のファントムFG.1とのコンビで「アークロイヤル」最後の航海まで共に任務に就いています。
なお800NASは1980年3月にシーハリアー戦闘攻撃機初の実戦飛行隊として再編されています。

早期警戒飛行隊:1個
フェアリー・ガネットAEW飛行隊 x1個(849飛行隊)
艦隊空母に通常4機を派遣して空母部隊の防空の要として機能していた849NASですが、空母「イーグル」退役でその所要数は最低限になりました。
849NASも「アークロイヤル」最後の航海まで同艦に乗艦しています。

対潜ヘリコプター飛行隊:推定5個:
ウェストランド・シーキングHAS.1飛行隊 x 3個(819. 824. 826.の各飛行隊)
ウェストランド・ウェセックスHAS.3飛行隊 x 1個(820飛行隊)
ウェストランド・ワスプHAS.1飛行隊 x 1個(829飛行隊)

海上自衛隊でも「HSS-2」シリーズとして長年第一線にあった傑作中型ヘリコプターのシーキングは、我が国同様イギリスでもライセンス生産と独自の改良が施されています。
対潜型の最初のタイプであるシーキングHAS.1は1970年から実戦部隊への配備が開始されて、1971年末時点では推定で三個飛行隊が戦力化しています。
それまでの対潜ヘリコプター、ホワールウィンドやウェセックスと比べて飛行性能は勿論のこと、単機で捜索攻撃が可能な自己完結性を持っているのがこのヘリコプターの一大特徴と言えましょう。

輸送ヘリコプター飛行隊:推定2個:
ウェストランド・ウェセックスHU.5飛行隊 x 2個(845. 846.の各飛行隊)

イギリス海兵隊(コマンドー)輸送用のヘリコプター飛行隊はさらに一個(848NAS)がウェセックス装備で存在するのですが、この飛行隊は実戦用飛行隊の時期とヘリ訓練飛行隊の時期があってこの頃にはどちらの任務に就いているのか特定できませんでした。
訓練部隊になるのなら700番台のナンバリングにすればいいのに、実任務用の800番台を振り続けているのでややこしい話になるのです。

続いてこれら飛行隊の活躍の舞台となる空母の1971年末の状況はというと、
現役の艦隊空母は「アークロイヤル」と「イーグル」の2隻のみで、しかも「イーグル」は翌年1月に退役してしまいます。
「1966国防白書」で新型空母CVA-01計画が中止された引き換えに「アークロイヤル」と「イーグル」のファントム運用改造を行う計画だったのですが、1968年にスエズ以東からの軍事力撤退が決定されてイギリス海軍艦隊空母の存在意義は激落し希薄になってしまいます。
そんな中でも「アークロイヤル」の改装工事は進められて1970年半ばに再就役するのですけれど、「イーグル」は1970年に改装を断念する決定が下されてしまったのです。
元々「イーグル」の船体の状態は、建造中断による店晒しの期間が長かった「アークロイヤル」よりもずっと良かったそうですが、「アークロイヤル」の場合はオーバーホールと近代化改装を始めて間もなくファントム運用改修が追加されるという幸運に恵まれました。
「イーグル」は「アークロイヤル」の改装終了を待ってドック入りする予定だったのに、たまたま「アークロイヤル」が先にドック入りしていたせいで明暗がくっきり分かれることになってしまって気の毒で仕方ないのです・・・。
また「イーグル」の去就に関しては海軍当局の一部に相当な未練があったようで、当時改装コスト高と乗組員の多さが問題になっていた対潜ヘリコプター巡洋艦「タイガー」と「ブレイク」の代わりに「イーグル」を現役に留めよという主張や、予備艦になった「イーグル」に基幹乗組員を配置して有事の際には半年ないし一年程度で現役に復帰させる体制にしてはどうかという提案もなされたとの事。
後者は具体的な検討が行われたのですが、やはりこの種の話について回るコストの問題と、搭載する戦闘機シーヴィクセンの旧式化による戦力的価値の低下などの理由で却下されてしまったそうです。
攻撃機が旧式化したというのなら、かつてバッカニア攻撃機の運用能力が無い空母「セントー」でシーヴィクセンが攻撃機の役割も果たしていたやり方も出来ましょうが、戦闘機が旧式化しているのではその手は使えません。
旧式化した戦闘機を予備役飛行隊で維持するのも思いのほかコストがかかりそうです。

「イーグル」では退役前にRAFのハリアーの運用試験を行い、その結果は極めて有効でのちのFAAのシーハリアー装備に繋がっていきます。
それで妄想を逞しくすれば、RAF航空支援コマンドに所属するNo1飛行隊(ハリアー装備)にサイドワインダー空対空ミサイルの運用能力を付与して現役復帰した「イーグル」に展開させて戦闘機としての役目を担わせるという手があるわけですが・・・。
1982年のフォークランド紛争では空母「ハーミーズ」にRAFのハリアーGR.3装備No1飛行隊がサイドワインダーの運用能力を緊急に付加された上で展開して作戦に従事しているので、1970年代初頭においてもそういう運用はあり得ると思うのですよ。
しかし結局「イーグル」延命は成らずに退役後は「アークロイヤル」の部品取り用に維持された後、1978年にスクラップ売却されました。

一方、コマンドー母艦は「ブルワーク」と「アルビオン」の2隻で、「ハーミーズ」が艦隊空母からコマンドー母艦への改造中です。
「アルビオン」は1973年に退役しすぐにスクラップ売却、代わりに改造を終えた「ハーミーズ」が加わってコマンドー母艦二隻体制を維持しています。

引き続いて1976年末時点でのイギリス海軍航空隊800番台実戦飛行隊の概要です。

戦闘飛行隊:1個:マクダネル・ファントムFG.1装備の892NAS
攻撃飛行隊:1個:ブラックバーン・バッカニアS.2装備の809NAS
早期警戒飛行隊:1個:フェアリー・ガネットAEW装備の849NAS

これら飛行隊はイギリス海軍唯一の艦隊空母「アークロイヤル」に展開しています。
上述のように、これら飛行隊は「アークロイヤル」の78年秋に終了するファイナルクルーズまで乗艦し続けます。
「アークロイヤル」退役後は、ファントムとバッカニアは空軍に移籍、ガネットは退役になりました。

対潜ヘリコプター飛行隊:推定6個
ウェストランド・シーキングHAS.1飛行隊 x 5個(814. 819. 820. 824. 826.の各飛行隊)
ウェストランド・ワスプHAS.1飛行隊 x 1個(829飛行隊)

1971年末時点で唯一のウェセックスHAS.3飛行隊だった820NASは72年末にシーキングHAS.1に機種改編して、これで対潜型ウェセックスはイギリス海軍の第一線から退きました。
829NASのワスプHAS.1は、戦後イギリス海軍フリゲートの傑作と呼ばれるリアンダー級を主な活躍の舞台として運用継続中です。

輸送ヘリコプター飛行隊:推定2個
ウェストランド・ウェセックスHU.5飛行隊 x 2個(845. 846.の各飛行隊)

これら航空隊の展開する空母は、艦隊空母「アークロイヤル」とコマンドー母艦「ハーミーズ」の二隻です。
「ハーミーズ」は76年にNATOの要請で対潜能力を付与されて、対潜コマンドー母艦になっています。
もう一隻のコマンドー母艦「ブルワーク」は1976年3月に予備艦になっていて、その後ペルー海軍に売却すべく交渉がもたれますが結局成立せず。
ペルーがこのようなコマンドー母艦(ヘリコプター強襲艦)を保有しても、国威発揚にはインパクトに欠けてそのくせ維持コストは多大。
ペルーにとっては美味しい話でなさそうなのに、何故このような交渉の席が設けられたのか色々と想像を逞しくしてしまいますな。
海外売却が不発に終わった「ブルワーク」は、かねてより建造中の全通甲板型巡洋艦「インヴィンシブル」の就役遅延を補うために79年2月にコマンドー母艦としてではなく対潜ヘリ母艦として再就役を果たします。
就役遅延の「インヴィンシブル」はNATOの一員としてソ連海軍の特に潜水艦への対処を重視する新たな国防方針に沿って建造を開始した艦ですが、建造途中で設計を変更し、当初の対潜ヘリコプターのみの航空機運用からV/STOL戦闘攻撃機シーハリアーとの混成運用艦とするための所要の追加改装(スキージャンブ甲板の設置など)が行われて、1980年7月に竣工しました。
この他にシーキング対潜ヘリコプターを搭載する大型艦として、巡洋艦「ブレイク」と「タイガー」が在籍しています。
1969年に大改装を終えて再就役した「ブレイク」に引き続き、同型艦の「タイガー」も1968年から72年まで大改装を受けて、対潜ヘリコプター巡洋艦として再就役しています。
大型対潜ヘリコプター4機を集中運用するこの巡洋艦の対潜任務に関する評価は高かったものの、乗組員数の多さ(二隻で約1,800名)は予算削減で兵員数の減ったイギリス海軍にとっては痛い問題で、費用対効果を考えれば前述の「イーグル」維持(代わりに巡洋艦二隻を予備艦もしくは破棄)という主張が出てくるのもやむを得ないところ。
結局、「タイガー」は再就役から6年後の78年に退役、「ブレイク」は再就役から10年後の79年に退役になっています。

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