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2020年9月の記事

2020年9月27日 (日)

1980年代後半のイギリス空軍(RAF)

今回は1980年代後半のイギリス空軍(RAF)です。
これまで同様に、英語版ウィキペディアや英語のサイト「ウイングアビエーション」、雑誌「世界の傑作機」などを参考に纏めてみました。
では1986年末時点におけるRAFの戦力概要について。

戦闘機飛行隊:推定10個:
マクダネル・ファントムFGR.2飛行隊 x 5個(No19. 23. 29. 56. 92. の各飛行隊)
マクダネル・ファントムFG.1飛行隊 x 2個(No43. 111.の各飛行隊)
マクダネル・ファントムF.3飛行隊 x 1個(No74飛行隊)
BAC・ライトニングF.6飛行隊 2個(No5. 11.の各飛行隊)

ファントムFGR.2飛行隊はRAFG(ドイツ駐留イギリス空軍)に二個飛行隊(No19と92)、ストライクコマンド指揮下のNo11グループ(かつてのファイター・コマンド)に所属するイギリス本土防空任務の二個飛行隊(No23と56)、フォークランド防衛用に1個飛行隊(No29)という配備状況です。
80年代後半はブリティッシュ・ファントムが可変翼の新型迎撃戦闘機トーネードADVに更新を始めた時期で、No29飛行隊が1987年3月に解散した直後の4月にRAF最初のトーネードADV実戦部隊として、トーネードF.3装備の迎撃飛行隊として再編されています。
次いで88年10月にはNo23飛行隊が解散して翌月にトーネードF.3飛行隊として再編しています。

ファントムFG.1は二個飛行隊がNo11グループ指揮下でイギリス本土防空任務に就いていますが、こちらもトーネードADVに更新されていきます。
No43飛行隊は1988年5月にファントムFGR.2に改編して半年後に解散、89年9月にトーネードF.3装備の迎撃飛行隊として再編されます。
No111飛行隊は90年1月に解散し、その年の6月にトーネードF.3装備で再編されます。
84年秋に米海軍中古のF-4Jを購入して編成されたNo74飛行隊は91年初頭に解散しています。
ファントム飛行隊の解散に伴い、当初はNo23、次いでNo29飛行隊の分遣隊が派遣されていたフォークランド防空任務は88年11月に飛行隊から独立してファントムFGR.2装備のNo1435フライト(4機編成)になって、92年夏まで任務に就くことと成りました。

1961年に実戦部隊に配備を開始して以来、イギリスの空を守り続けてきたイギリス最初にして最後の純国産超音速戦闘機ライトニングもこの時期にはいよいよ終焉の時を迎えていて、No5飛行隊が88年1月に解散してトーネードF.3装備部隊としてすぐに再編。
最後のライトニング実戦飛行隊となったNo11飛行隊は88年5月に解散、その二ヶ月後にトーネードF.3装備部隊として再編されます。
ライトニングの退役、そして後述するブリティッシュ・ハリアーの引退は、冷戦終結と共にRAFの歴史に大きなピリオドを打つ象徴的な時期であったと申せましょうか。

攻撃機飛行隊:推定18個:
パナピア・トーネードGR.1飛行隊 x 9個(No9. 14. 15. 16. 17. 20. 27. 31. 617.の各飛行隊)
SEPECAT・ジャガーGR.1飛行隊 x 4個(No2. 6. 41. 54.の各飛行隊)
ブラックバーン・バッカニアS.2飛行隊 x 2個(No12. 208.の各飛行隊)
ホーカーシドレー・ハリアーGR.3飛行隊 x 3個(No1. 3. 4.の各飛行隊)

アブロ・ヴァルカン爆撃機とバッカニア攻撃機が担っていた超低空侵攻戦術核攻撃任務を引き継ぎ、RAFG配備のジャガー攻撃機の戦術攻撃偵察任務も受け継いだ可変翼の戦術攻撃機トーネードGR.1はRAFGに六個飛行隊(No14. 15. 16. 17. 20. 31.の各飛行隊)とストライクコマンド指揮下のNo1グループ(かつてのボマー・コマンドと航空支援コマンドを統合)に所属してイギリス本土に展開する四個飛行隊(No27. 31.の各飛行隊)が配備されています。

1974年から実戦配備を開始した英仏共同開発の戦術攻撃偵察機ジャガーGR.1は最盛期の8個飛行隊から半減して、RAFG配備も一個飛行隊(No2)のみとなっています。

超低空高速飛行ゆえの主翼のストレスによってRAFG配備部隊が早期にトーネードに更新されたバッカニアS.2は、イギリス近海における洋上阻止任務用としてストライクコマンド指揮下のNo18グループ(かつてのコースタル・コマンド)所属で健在。
この時期にはシーイーグル空対艦ミサイルの運用能力付与やレーダーのアップグレードなどの改修を施されています。

近接航空支援用のV/STOL戦術機ハリアーGR.3はRAFGにNo3及び4飛行隊、イギリス本土にNo1グループ所属のNo1飛行隊が配備されていますが、1969年に実戦配備が開始されたこれらRAFブリティッシュ・ハリアーにもいよいよ引退の時期を迎えます。
アメリカがハリアーを独自改良して兵装搭載能力や航続性能を向上させた第二世代のアメリカン・ハリアー(AV-8B)をイギリスが逆輸入する形になって、RAF向けに改設計を行って実用化したのがハリアーGR.5以降のシリーズです。
まずハリアー最初の実戦部隊であるNo1飛行隊が1988年10月にハリアーGR.5に機種改編。
次いでNo.3飛行隊が89年3月にハリアーGR.5に機種更新、90年9月には最後のハリアーGR.3実戦部隊のNo4飛行隊がハリアーGR.7に機種改編。
これでハリアーGR.3装備の実戦部隊は1980年から中米ベリーズに駐留しているNo147フライトのみとなりました。

偵察機:イングリッシュ・エレクトリック・キャンベラPR.9装備のNo1PRU(写真偵察ユニット)

空中早期警戒飛行隊:アブロ・シャクルトンAEW装備のNo8飛行隊

海上哨戒飛行隊:4個:
BAE・ニムロッドMR.2飛行隊 x 4個(No42. 120. 201. 206.の各飛行隊)

戦術輸送機飛行隊:4個:
ロッキード・ハーキュリーズ飛行隊 x 4個(No24. 30. 47. 70.の各飛行隊)
RAFのC-130KはオリジナルのC.1と、C.1の胴体をストレッチした改造機C.3が存在しますけれど、両者共に30機程度の保有数でどの飛行隊がどちらを装備しているのかは特定できませんでした。

戦術輸送ヘリコプター飛行隊:2個
ボーイング・チヌークHC.1飛行隊 x 2個(No7及び18飛行隊)

アメリカ製の双発大型輸送ヘリコプターCH-47はRAFにおいては81年から配備が始まり、二個飛行隊がイギリス陸軍の戦術輸送支援任務に就いています。

空中給油飛行隊:3個:
ロッキード・トライスターKC.1/K.1装備のNo216飛行隊、ヴィッカース・VC10K装備のNo101飛行隊とハンドレページ・ヴィクターK.2装備のNo55飛行隊。
トライスターKC.1とK.1を装備するNo216飛行隊は86年から実働体制に入っています。
当初は輸送と空中給油の二刀流の飛行隊でしたが、次第に空中給油が主任務になっていったそうです。
一方、これまで2個飛行隊体制を維持してきたヴィクターK.2部隊ですが、機材の老朽化もあってNo27飛行隊がこの年の6月に解散して状態良好な機体がNo55飛行隊に移籍しています。

2020年9月20日 (日)

1980年代前半のイギリス空軍(RAF)

今回は1980年代前半のイギリス空軍(RAF)です。
これまで同様に、英語版ウィキペディアや英語のサイト「ウイングアビエーション」、雑誌「世界の傑作機」などを参考に纏めてみました。
では1981年末時点におけるRAFの戦力概要について。

戦闘機飛行隊:推定9個:
マクダネル・ファントムFGR.2飛行隊 x 5個(No19. 23. 29. 56. 92.の各飛行隊)
マクダネル・ファントムFG.1飛行隊 x 2個(No43. 111.の各飛行隊)
BAC・ライトニングF.6飛行隊 x 2個(No5. 11.の各飛行隊)

ファントムFGR.2装備の飛行隊は、イギリス本土にあって旧航空支援コマンドのNo38グループ指揮下で戦術偵察任務に当っていたNo41飛行隊が1977年に解散、イギリス本土防空任務のNo111飛行隊が79年10月に海軍から移籍のファントムFG.1に機種改編された結果、実戦飛行隊は5個に減少しています。
配備はRAFG(ドイツ駐留イギリス空軍)の制空防空任務に二個飛行隊(No19. 92.の各飛行隊)、イギリス本土防空任務に三個飛行隊(No23. 29. 56.の各飛行隊)です。
またファントム機種転換部隊にNo228OCUが、有事の際にNo64飛行隊として実戦任務に就く「シャドースコードロン」なのは1970年代から引き続いています。
なおフォークランド紛争後はNo29飛行隊が1982年10月にフォークランドのポートスタンレー飛行場に防空任務で展開しています。
この任務追加でイギリス本土の防空飛行隊の一部を派遣することになって本国防空に穴が開くのを防ぐ為、アメリカ海軍の中古F-4Jを急遽購入してRAF仕様に改修の後、84年10月にF-4J(ファントムF.3)装備のNo74飛行隊が再編されています。

元々はイギリス海軍の艦上戦闘機として導入が始まったファントムFG.1のRAFにおける配備は、それまでの一個飛行隊(No43)に加えて、前述のように79年秋に更に一個飛行隊がFGR.2からの改編を実施して二個飛行隊体制、いずれもイギリス本土防空任務に就いています。
1970年代末からは、ブリティッシュファントムの持つ低空要撃能力にマッチした新型のレーダー誘導型空対空ミサイル「スカイフラッシュ」(但し原型はアメリカ製のスパローミサイル)が配備を開始しているので、RAFのファントム部隊はいよいよその本領発揮という感強しです。
しかし84年には次期迎撃戦闘機トーネードADVの作戦転換部隊No229OCUが編成されて、ブリティッシュファントムの時代も終わりが見え始めていたのです。

1960年代初めから配備を開始したイギリス最初にして最後の純国産超音速迎撃戦闘機ライトニングは、77年にRAFG指揮下の二個飛行隊がファントムに機種改編して以降、実戦飛行隊として残るのはイギリス本土防空任務に就く二個飛行隊のみとなりました。

爆撃機・攻撃機飛行隊:推定20個:
アブロ・ヴァルカンB.2飛行隊 x 5個(No9. 35. 44. 50. 101.の各飛行隊)
SEPECAT・ジャガーGR.1飛行隊 x 8個(No2. 6. 14. 17. 20. 31. 41. 54.の各飛行隊)
ブラックバーン・バッカニアS.2飛行隊 x 4個(No12. 15. 16. 208.の各飛行隊)
ホーカーシドレー・ハリアーGR.3飛行隊 x 3個(No1. 3. 4.の各飛行隊)

かつてのRAFボマーコマンドの主役であったヴァルカン爆撃機はRAFストライクコマンドの長距離戦術核攻撃用として6個飛行隊に配備され、依然としてまとまった勢力を維持していますけれど、既に後継となる英独伊共同開発の可変翼超音速攻撃機パナピア・トーネードが機種転換部隊に配備されて実戦配備に向けて着々と準備している状況です。
1982年に入るとヴァルカンの退役は急速に進んで、3月末にNo35飛行隊が解散、フォークランド紛争最中の5月にはNo9飛行隊が解散しています。
4月2日にアルゼンチン軍が南大西洋のイギリス領フォークランド諸島に侵攻したことで勃発したフォークランド紛争においては、現役の各部隊から選ばれたヴァルカン爆撃機が中部大西洋の孤島アセンション島の飛行場に展開し、そこからアルゼンチン軍に占領されたフォークランドの飛行場や防空レーダーなどに対する往復一万三千キロ弱という超遠距離爆撃を実施する「ブラックバック作戦」が五回実施されています。
この作戦はヴァルカン単機で実行されるものでしたが、ヴァルカン一機が搭載できる1,000ポンド爆弾は21発です。
海軍機動部隊から出撃するシーハリアーやRAFのハリアーの場合、搭載できる1,000ポンド爆弾は他に増槽一個を搭載するとして四発なので、ヴァルカン一機でハリアー五機分以上の火力を発揮できるのです。
機動部隊が運用するシーハリアーとハリアーは合わせて38機で、28機が二隻の空母に展開するシーハリアーは艦隊防空や攻撃機の護衛にも使われるので対地攻撃に使える機数はごく限られてしまいます。
空母「ハーミーズ」に乗艦しているRAFのNo1飛行隊ハリアーは10機で、こちらは対地攻撃専従にするとしても一度の出撃で飛ばせるのはせいぜい4機。
それを考えると、超遠距離飛行をして単機で突入して爆撃など一見効率的には見えないこの「ブラックバック作戦」も当時のイギリスにとっては実効性のある合理的作戦であったと申せましょうか。
またこの作戦に対してアルゼンチン軍は過剰に反応して、ヴァルカン爆撃機によるアルゼンチン本土爆撃を警戒して主力戦闘機のミラージュを本土防衛任務に貼り付けた結果、イギリス艦隊に対する攻撃はA-4攻撃機が戦闘機の護衛なしで行わざるを得ない状況が多々生じるというイギリス側にとっては実に好都合な思わぬ副産物を産んだのでした。
ともあれヴァルカンにとってはこの紛争が唯一の実戦参加で最後の花道となり、この年の末に最後の爆撃飛行隊No44が解散しています。
しかし次期空中給油機VC10kの導入が遅れた為、VC10k戦力化までの繋ぎとしてヴァルカンに白羽の矢が立てられて応急改造型のヴァルカンK.2がNo50飛行隊に配備され、82年6月から84年3月まで運用されています。
なお、ヴァルカン飛行隊として解散したNo9飛行隊はそれから約三ヶ月後の82年8月に、RAF初のトーネードGR.1実戦飛行隊として再編されています。
翌83年にはNo15. 27. 617.の三個飛行隊がトーネードGR.1飛行隊として再編、84年にはNo16飛行隊(再編)とNo20及び31飛行隊(ジャガーGR.1から機種改編)、85年にはNo14及び17飛行隊がジャガーGR.1から機種改編してトーネードGR.1飛行隊になっています。

フランスとの共同開発によって74年から実戦配備を開始したジャガーGR.1戦術攻撃偵察機は8個飛行隊を擁してRAF戦術攻撃力の主柱に成長しています。
配備はRAFGに五個飛行隊(No2. 14. 17. 20. 31.の各飛行隊)とイギリス本土の旧航空支援コマンド(No38グループ)に三個飛行隊(No6. 41. 54.の各飛行隊)です。
RAFにおけるジャガー攻撃機の勢力はこの時が最盛期で84年からはトーネードGR.1への機種改編が開始されて、前述したように85年までにNo14. 17. 20. 31.の四個飛行隊がジャガーを手放してトーネード飛行隊に転じています。

1960年代半ばから後半にかけてキャンセルされたTSR2とF-111Kの代替としてアブロ・ヴァルカン爆撃機と共に超低空侵攻戦術核攻撃任務を担ってきた海軍由来のバッカニアS.2攻撃機は、RAFGの戦術核攻撃用としてNo15及び16飛行隊、イギリス本土近海における対艦洋上阻止任務にNo12及び208飛行隊が任務に就いています。
これら従来からの飛行隊に加えて、海軍の空母「アークロイヤル」退役に伴ってRAFに移籍するバッカニアの受け入れ先として1979年7月にNo216飛行隊が再編されていますけれど、この飛行隊は79年から80年初めにかけて相次いだバッカニアの墜落事故、その原因である主翼のダメージの問題から他の飛行隊へ健在な機体の拠出をせざるを得なくなって翌年には解散しています。
バッカニアもヴァルカン同様にこの後減勢が始まって、83年にはNo15飛行隊が、84年2月にはNo16飛行隊が解散してその後にトーネード飛行隊として再編。
以後、現役で残るのはイギリス本土に展開するストライクコマンド隷下のNo18グループ(かつてのコースタル・コマンド)に所属する二個飛行隊のみとなりました。

世界初の実用V/STOL戦術攻撃機であるハリアーは、GR.3装備の飛行隊を三個擁しています。
配備はRAFGに二個飛行隊(No3及びNo4飛行隊)、イギリス本土の旧航空支援コマンドのNo38グループに一個飛行隊(No1)です。
これらのうち、機動運用任務のNo1飛行隊はフォークランド紛争勃発に伴い、かなりの損耗が予想される海軍のシーハリアーを補って艦隊の防空任務に就くために大型輸送船「アトランティック・コンベア」に増援用のシーハリアーと共に乗船し、作戦海域で空母「ハーミーズ」に移動して実戦投入されています。
実戦投入に当ってサイドワインダー空対空ミサイルの運用能力を付与されたハリアーGR.3ですが、懸念されたシーハリアーの損耗が予想を遥かに下回るものであったことから本来の十八番である地上攻撃任務に投入されました。
対地攻撃に使用する場合、シーハリアーが運用能力を持っていないレーザー誘導爆弾をRAFハリアーは使用可能というのが強みでしょう。
またフォークランド紛争終結直後は現地防空用にNo1453フライトが編成され、82年10月にファントムFGR.2装備のNo23飛行隊が現地に駐留して防空任務を開始すると対地攻撃任務に戻って、85年6月までハリアー装備の各飛行隊のローテーション派遣で6機常駐体制を続けています。

偵察機飛行隊:推定2個:
アブロ・ヴァルカンB.2(MMR)飛行隊 x 1個(No27飛行隊)
イングリッシュ・エレクトリック・キャンベラPR.9飛行隊 x 1個(No39飛行隊)

RAF唯一の長距離偵察機ヴァルカンB.2(MMR)を装備するNo27飛行隊は1982年3月に解散しています。
高高度偵察任務に就くキャンベラPR.9を装備するNo39飛行隊は82年6月に解散して機材は新編されたNo1PRU(写真偵察ユニット)に引き継がれていますが、この部隊についてはよくわかりませんでした・・・。
わざわざユニットと呼称するからには、保有する機体定数は飛行隊よりも少なくなってはいるのでしょうが。

空中早期警戒機飛行隊:1個:
アブロ・シャクルトンAEW飛行隊 x 1個(No8飛行隊)

第二次大戦におけるRAF爆撃機の象徴と言えるアブロ・ランカスターの最後の末裔がシャクルトンAEWで、72年以来イギリス本土周辺の早期警戒任務に就いています。

海上哨戒機飛行隊:推定4個:
BAE・ニムロッドMR.2飛行隊 x 1個(No206飛行隊)
BAE・ニムロッドMR.1飛行隊 x 4個(No42. 120. 201.の各飛行隊)

1971年から実戦配備を開始したジェット海上哨戒機ニムロッドMR.1は、77年に地中海マルタ島に展開していたNo203飛行隊が解散した結果、配備されているのはイギリス本土のみになっています。
なおニムロッド飛行隊は全てが前述のNo18グルーブです。
79年秋にNo206飛行隊が対水上レーダーやソノブイシステムのアップグレードを行ったニムロッドMR.2に改編していて、82年から83年にかけて他の三個飛行隊も次々にニムロッドMR.2に改編していきます。

戦術輸送機飛行隊:推定4個:
ロッキード・ハーキュリーズ飛行隊 x 4個(No24. 30. 47. 70. の各飛行隊)

1970年代半ばには6個飛行隊に配備されていたC-130ハーキュリーズは、イギリス軍のスエズ以東からの戦力撤退に合わせるように2個飛行隊が相次いで解散して、4個飛行隊体制に落ち着いています。
この時期には最初の導入型C.1(66機)のうち約30機に胴体をストレッチする改造を行ったC.3が配備されているのですが、どの飛行隊がC.3装備なのか特定できませんでした。

なお、輸送ヘリコプター部隊については、ウェストランド・ホワールウィンドやウェストランド・ウェセックスを装備していた50年代後半から70年代にかけては、例え輸送ヘリコプター(HC)装備であっても実際は捜索救難任務を兼任していたりして、イギリス陸軍の作戦を支援する純粋な戦術輸送任務に就いている飛行隊を特定することは困難でした。
そういった任務であると特定できたのは64年から80年までウェセックスHC.1を装備して、ライン駐留イギリス陸軍(BAOR)の支援任務に就いていたNo18飛行隊だけです。
1980年代に入ってようやく純粋に戦術輸送任務に就くヘリコプター部隊が特定できるようになり、それが81年8月に再編されたNo18飛行隊と82年9月に再編されたNo7飛行隊で、両飛行隊共にボーイング・チヌークHC.1を装備しています。
No18飛行隊は再編当初はハリアー装備のNo1飛行隊などと共にNo38グループの指揮下にありましたけれど、後にドイツ駐留になって97年までかの地に展開していました。

空中給油機飛行隊:推定2個:
ハンドレページ・ヴィクターK.2飛行隊 x 2個(No55. 57.の各飛行隊)

かつての戦略爆撃機ヴィクターB.2を空中給油機に改造して誕生したヴィクターK.2は、元相棒のヴァルカン爆撃機による超遠距離爆撃作戦「ブラックバック」を全力支援。
この爆撃作戦の成功はヴィクターK.2があってこそのものと言えましょう。
空中給油機の近代化施策としては、元旅客機のピッカースVC10を空中給油機に改造して任務に当らせることになりましたが、その就役が遅延したために応急策として前述のようにヴァルカン爆撃機を空中給油機に改造して短期間運用しています。
VC10k装備のNo101飛行隊は1984年5月に再編されて、ヴァルカンに代わってRAF第三の空中給油飛行隊として任務に就いています。
フォークランド紛争後、元民間機のロッキード・トライスラーを改造して空中給油/輸送機として空中給油能力をさらに向上増強することになって1984年11月に本機装備のNo216飛行隊が再編されていますけれど、部隊再編時点ではトライスターの改造機はまだ配備されておらず書類上の飛行隊と言えます。
この飛行隊が実働部隊になるのは改造を完了したトライスターKC.1/K.1を受領する86年からのようです。

またRAFが管理運用するエリアディフェンス用の地対空ミサイル部隊は、ブラッドハウンドMkⅡ地対空ミサイル装備の飛行隊が二個(No25及び85飛行隊)があって、この時期はNo25飛行隊がRAFG、No85飛行隊がイギリス本土に配備されていたようです。

2020年9月 6日 (日)

1970年代のイギリス海軍航空隊(FAA)

今回は前回「1970年代後半のイギリス空軍(RAF)」に続いて、1970年代のイギリス海軍航空隊(FAA)とその活躍の舞台であるイギリス海軍の空母の状況についての概要です。
これまでと同様に、ウィキペディア英語版と英語サイト「ウィングス-アビエーション」、雑誌「世界の傑作機」を情報ソースとして纏めてみました。

では最初に1971年末時点でのイギリス海軍航空隊の800番台実戦飛行隊の概要です。

戦闘飛行隊:2個
マクダネル・ファントムFG.1飛行隊 x 1個(892飛行隊)
デ・ハヴィラント・シーヴィクセンFAW.2飛行隊 x 1個(899飛行隊)

イギリス海軍航空隊唯一のファントムFG.1の母艦飛行隊892NASは1969年春に編成されて、1970年半ばに空母「アークロイヤル」が改装を終了して現役に復帰すると乗艦して1978年秋に終了する最後の航海まで行動を共にします。
遷音速全天候複座戦闘機のシーヴィクセンFAW.2は、最後の母艦飛行隊899NASが空母「イーグル」に展開。
しかし「イーグル」は翌72年1月に退役してしまい、それに伴って最後のシーヴィクセン飛行隊も解散します。
なお899NASは1980年3月にシーハリアー戦闘攻撃機の機種転換飛行隊として再編されています。

攻撃飛行隊:2個
ブラックバーン・バッカニアS.2飛行隊 x 2個(800. 809.の各飛行隊)

イギリス海軍の誇る超低空高速侵攻用の艦上攻撃機バッカニアS.2は空母「アークロイヤル」に809NAS、空母「イーグル」に800NASが展開していますが、800NASは翌72年1月の「イーグル」の退役でその役目を終えて、72年2月に解散しています。
800NAS解散後はFAA唯一のバッカニア飛行隊となった809NASは、892NAS飛行隊のファントムFG.1とのコンビで「アークロイヤル」最後の航海まで共に任務に就いています。
なお800NASは1980年3月にシーハリアー戦闘攻撃機初の実戦飛行隊として再編されています。

早期警戒飛行隊:1個
フェアリー・ガネットAEW飛行隊 x1個(849飛行隊)
艦隊空母に通常4機を派遣して空母部隊の防空の要として機能していた849NASですが、空母「イーグル」退役でその所要数は最低限になりました。
849NASも「アークロイヤル」最後の航海まで同艦に乗艦しています。

対潜ヘリコプター飛行隊:推定5個:
ウェストランド・シーキングHAS.1飛行隊 x 3個(819. 824. 826.の各飛行隊)
ウェストランド・ウェセックスHAS.3飛行隊 x 1個(820飛行隊)
ウェストランド・ワスプHAS.1飛行隊 x 1個(829飛行隊)

海上自衛隊でも「HSS-2」シリーズとして長年第一線にあった傑作中型ヘリコプターのシーキングは、我が国同様イギリスでもライセンス生産と独自の改良が施されています。
対潜型の最初のタイプであるシーキングHAS.1は1970年から実戦部隊への配備が開始されて、1971年末時点では推定で三個飛行隊が戦力化しています。
それまでの対潜ヘリコプター、ホワールウィンドやウェセックスと比べて飛行性能は勿論のこと、単機で捜索攻撃が可能な自己完結性を持っているのがこのヘリコプターの一大特徴と言えましょう。

輸送ヘリコプター飛行隊:推定2個:
ウェストランド・ウェセックスHU.5飛行隊 x 2個(845. 846.の各飛行隊)

イギリス海兵隊(コマンドー)輸送用のヘリコプター飛行隊はさらに一個(848NAS)がウェセックス装備で存在するのですが、この飛行隊は実戦用飛行隊の時期とヘリ訓練飛行隊の時期があってこの頃にはどちらの任務に就いているのか特定できませんでした。
訓練部隊になるのなら700番台のナンバリングにすればいいのに、実任務用の800番台を振り続けているのでややこしい話になるのです。

続いてこれら飛行隊の活躍の舞台となる空母の1971年末の状況はというと、
現役の艦隊空母は「アークロイヤル」と「イーグル」の2隻のみで、しかも「イーグル」は翌年1月に退役してしまいます。
「1966国防白書」で新型空母CVA-01計画が中止された引き換えに「アークロイヤル」と「イーグル」のファントム運用改造を行う計画だったのですが、1968年にスエズ以東からの軍事力撤退が決定されてイギリス海軍艦隊空母の存在意義は激落し希薄になってしまいます。
そんな中でも「アークロイヤル」の改装工事は進められて1970年半ばに再就役するのですけれど、「イーグル」は1970年に改装を断念する決定が下されてしまったのです。
元々「イーグル」の船体の状態は、建造中断による店晒しの期間が長かった「アークロイヤル」よりもずっと良かったそうですが、「アークロイヤル」の場合はオーバーホールと近代化改装を始めて間もなくファントム運用改修が追加されるという幸運に恵まれました。
「イーグル」は「アークロイヤル」の改装終了を待ってドック入りする予定だったのに、たまたま「アークロイヤル」が先にドック入りしていたせいで明暗がくっきり分かれることになってしまって気の毒で仕方ないのです・・・。
また「イーグル」の去就に関しては海軍当局の一部に相当な未練があったようで、当時改装コスト高と乗組員の多さが問題になっていた対潜ヘリコプター巡洋艦「タイガー」と「ブレイク」の代わりに「イーグル」を現役に留めよという主張や、予備艦になった「イーグル」に基幹乗組員を配置して有事の際には半年ないし一年程度で現役に復帰させる体制にしてはどうかという提案もなされたとの事。
後者は具体的な検討が行われたのですが、やはりこの種の話について回るコストの問題と、搭載する戦闘機シーヴィクセンの旧式化による戦力的価値の低下などの理由で却下されてしまったそうです。
攻撃機が旧式化したというのなら、かつてバッカニア攻撃機の運用能力が無い空母「セントー」でシーヴィクセンが攻撃機の役割も果たしていたやり方も出来ましょうが、戦闘機が旧式化しているのではその手は使えません。
旧式化した戦闘機を予備役飛行隊で維持するのも思いのほかコストがかかりそうです。

「イーグル」では退役前にRAFのハリアーの運用試験を行い、その結果は極めて有効でのちのFAAのシーハリアー装備に繋がっていきます。
それで妄想を逞しくすれば、RAF航空支援コマンドに所属するNo1飛行隊(ハリアー装備)にサイドワインダー空対空ミサイルの運用能力を付与して現役復帰した「イーグル」に展開させて戦闘機としての役目を担わせるという手があるわけですが・・・。
1982年のフォークランド紛争では空母「ハーミーズ」にRAFのハリアーGR.3装備No1飛行隊がサイドワインダーの運用能力を緊急に付加された上で展開して作戦に従事しているので、1970年代初頭においてもそういう運用はあり得ると思うのですよ。
しかし結局「イーグル」延命は成らずに退役後は「アークロイヤル」の部品取り用に維持された後、1978年にスクラップ売却されました。

一方、コマンドー母艦は「ブルワーク」と「アルビオン」の2隻で、「ハーミーズ」が艦隊空母からコマンドー母艦への改造中です。
「アルビオン」は1973年に退役しすぐにスクラップ売却、代わりに改造を終えた「ハーミーズ」が加わってコマンドー母艦二隻体制を維持しています。

引き続いて1976年末時点でのイギリス海軍航空隊800番台実戦飛行隊の概要です。

戦闘飛行隊:1個:マクダネル・ファントムFG.1装備の892NAS
攻撃飛行隊:1個:ブラックバーン・バッカニアS.2装備の809NAS
早期警戒飛行隊:1個:フェアリー・ガネットAEW装備の849NAS

これら飛行隊はイギリス海軍唯一の艦隊空母「アークロイヤル」に展開しています。
上述のように、これら飛行隊は「アークロイヤル」の78年秋に終了するファイナルクルーズまで乗艦し続けます。
「アークロイヤル」退役後は、ファントムとバッカニアは空軍に移籍、ガネットは退役になりました。

対潜ヘリコプター飛行隊:推定6個
ウェストランド・シーキングHAS.1飛行隊 x 5個(814. 819. 820. 824. 826.の各飛行隊)
ウェストランド・ワスプHAS.1飛行隊 x 1個(829飛行隊)

1971年末時点で唯一のウェセックスHAS.3飛行隊だった820NASは72年末にシーキングHAS.1に機種改編して、これで対潜型ウェセックスはイギリス海軍の第一線から退きました。
829NASのワスプHAS.1は、戦後イギリス海軍フリゲートの傑作と呼ばれるリアンダー級を主な活躍の舞台として運用継続中です。

輸送ヘリコプター飛行隊:推定2個
ウェストランド・ウェセックスHU.5飛行隊 x 2個(845. 846.の各飛行隊)

これら航空隊の展開する空母は、艦隊空母「アークロイヤル」とコマンドー母艦「ハーミーズ」の二隻です。
「ハーミーズ」は76年にNATOの要請で対潜能力を付与されて、対潜コマンドー母艦になっています。
もう一隻のコマンドー母艦「ブルワーク」は1976年3月に予備艦になっていて、その後ペルー海軍に売却すべく交渉がもたれますが結局成立せず。
ペルーがこのようなコマンドー母艦(ヘリコプター強襲艦)を保有しても、国威発揚にはインパクトに欠けてそのくせ維持コストは多大。
ペルーにとっては美味しい話でなさそうなのに、何故このような交渉の席が設けられたのか色々と想像を逞しくしてしまいますな。
海外売却が不発に終わった「ブルワーク」は、かねてより建造中の全通甲板型巡洋艦「インヴィンシブル」の就役遅延を補うために79年2月にコマンドー母艦としてではなく対潜ヘリ母艦として再就役を果たします。
就役遅延の「インヴィンシブル」はNATOの一員としてソ連海軍の特に潜水艦への対処を重視する新たな国防方針に沿って建造を開始した艦ですが、建造途中で設計を変更し、当初の対潜ヘリコプターのみの航空機運用からV/STOL戦闘攻撃機シーハリアーとの混成運用艦とするための所要の追加改装(スキージャンブ甲板の設置など)が行われて、1980年7月に竣工しました。
この他にシーキング対潜ヘリコプターを搭載する大型艦として、巡洋艦「ブレイク」と「タイガー」が在籍しています。
1969年に大改装を終えて再就役した「ブレイク」に引き続き、同型艦の「タイガー」も1968年から72年まで大改装を受けて、対潜ヘリコプター巡洋艦として再就役しています。
大型対潜ヘリコプター4機を集中運用するこの巡洋艦の対潜任務に関する評価は高かったものの、乗組員数の多さ(二隻で約1,800名)は予算削減で兵員数の減ったイギリス海軍にとっては痛い問題で、費用対効果を考えれば前述の「イーグル」維持(代わりに巡洋艦二隻を予備艦もしくは破棄)という主張が出てくるのもやむを得ないところ。
結局、「タイガー」は再就役から6年後の78年に退役、「ブレイク」は再就役から10年後の79年に退役になっています。

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