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2020年8月 9日 (日)

1960年代後半のイギリス海軍航空隊(FAA)

今回は前回「1960年代前半のイギリス海軍航空隊(FAA)」に引き続いて、1960年代後半のイギリス海軍航空隊(FAA)とその活躍の舞台であるイギリス海軍の空母の状況についての概要です。
これまでと同様に、ウィキペディア英語版と英語サイト「ウィングス-アビエーション」、雑誌「世界の傑作機」を情報ソースとして纏めてみました。

では最初に1966年末時点におけるFAAの800番台の第一線飛行隊の概要です。

戦闘飛行隊:4個:
デ・ハヴィラント・シーヴィクセンFAW.2飛行隊 x 3個(892. 893. 899.の各飛行隊)
デ・ハヴィラント・シーヴィクセンFAW.1飛行隊 x 1個(890飛行隊)

シーヴィクセンFAW.2は迎撃レーダーを改良して、限定的ながらコリジョンコースでの要撃が可能な赤外線誘導型空対空ミサイル・レッドトップの運用を可能としたタイプです。
シーヴィクセンFAW.2装備飛行隊のうち、899NASは通常は空母に展開しない司令部飛行隊なので、FAW.2装備の母艦飛行隊は二個になります。
FAW.1装備飛行隊と合わせても母艦戦闘機飛行隊はたったの3個。
斜陽著しいイギリス海軍空母の現実が如実に現れているのです。
なにしろこの時点では現役空母は三隻で、他に1隻が長期改装中。
戦闘機飛行隊は各母艦に一個の配置なので、三個あれば稼動艦の飛行隊需要を完全に満たしてしまうのが寂しいところなのです。
なお、スーパーマリン・シミター戦闘攻撃機は1966年10月に最後の実戦飛行隊803NASが解散したことで、第一線から退いています。

遷音速全天候戦闘機シーヴィクセンの後継戦闘機としては、前回述べたように1964年7月にアメリカ製F-4ファントムの採用が政府承認されて、エンジンを後述のバッカニアS.2に搭載したイギリス国産のターボファンエンジン「スペイ」のリヒート(アフターバーナー)追加タイプに換装するなどの改良を加えたファントムFG.1として発注されていますが、後述の新型空母「CVA-01」計画の中止と空母「イーグル」のファントム適合改装の取りやめでこの機の運命は大きく変わっていってしまうのです。

攻撃飛行隊:3個:
ブラックバーン・バッカニアS.2飛行隊 x 3個(800. 801. 809.の各飛行隊)
ターボジェットエンジン搭載の暫定型といえるバッカニアS.1から、ターボファンエンジンを搭載してこの機体の持つ超低空侵攻のポテンシャルを充分に引き出せるようになったバッカニアS.2は、バッカニアS.1装備の801NASが1965年秋に本機へ機種改編したことで実戦配備が始まりました。
この年の末までに攻撃飛行隊はバッカニアS.1からS.2への更新を完了しています。

早期警戒飛行隊:1個(849NAS、フェアリー・ガネットAEW装備)
アメリカから供与されたスカイレイダーAEWのレーダーを移植して誕生したターボプロップ機のガネットAEWは、各空母に4機からなる分遣隊を派遣して空母部隊の早期警戒任務に当たっています。

対潜ヘリコプター飛行隊:推定4個:
ウェストランド・ウェセックスHAS.3飛行隊 x 1個(814飛行隊)
ウェストランド・ワスプHAS.1飛行隊 x 1個(829飛行隊)
ウェストランド・ホワールウィンドHAS.7飛行隊 x 2個(824. 825. の各飛行隊)

ターボシャフトエンジン搭載のウェストランド・ウェセックスは対潜用としては短期間の運用に終わったHAS.1を改造したHAS.3が登場。
空母とイギリス海軍初のミサイル駆逐艦「カウンティ」級に配備されています。
1950年代後半に登場したウェストランド・ホワールウィンドはこの時点でも未だ対潜ヘリコプターの主力を形成しています。
ホワールウィンドHAS.7のうち12機がターボシャフトエンジンに換装されてHAS.9になっていますけれど、部隊単位で配備されているかについては確認できませんでした。
829NASに配備されているワスプHAS.1は対潜魚雷投射用の小型ヘリコプターで、この頃増勢しつつあったヘリコプター搭載フリゲートに配備されています。

輸送ヘリコプター飛行隊:推定2個:
ウェストランド・ウェセックスHU.5飛行隊 x 2個(845. 848.の各飛行隊)
イギリス海兵隊(コマンドー)輸送用のヘリコプター飛行隊は、ウェセックスの汎用型HU.5装備の二個飛行隊体制になっています。
1962年から63年にかけては、これらの飛行隊とは別にホワールウィンド装備の二個飛行隊が再編されていたのですが、64年には解散してしまっています。

次にこれら飛行隊が展開する空母の1966年末時点の状況について。
イギリス海軍待望の新型大型空母「CVA-01」計画は、ファントムなどの新型艦載機の運用が困難な中型空母「ヴィクトリアス」と「ハーミーズ」を置き換える為に当面二隻の建造が求められていて、1963年夏に「ヴィクトリアス」の後継として一番艦の建造が承認されます。
この空母の満載排水量は63,000トンで、既存の大型空母「イーグル」「アークロイヤル」よりも一万トンほど大きく、固定翼艦載機の数は大改装後の「アークロイヤル」よりも8機多い40機になります。
しかし1964年秋の総選挙で労働党政権が誕生すると、政府や財務省からは防衛支出削減の観点から、空軍からは当時開発中の新型攻撃機TSR2の予算確保の観点から計画中止の圧力を受けることとなり、翌年のTSR2計画中止と代替のアメリカ製F-111戦術戦闘機導入決定、そしてスエズ以東からの軍事力削減という政府方針を謳った「1966国防白書」によって計画は全面中止されてしまいました。
空軍はF-111飛行隊によって従来は海軍の空母が担っていた遠隔地における航空戦力投射を代替できるという主張が通った形になったのですけれど、そのF-111導入計画も1967年の英ポンド切り下げに伴う導入コストの四割増に耐えかねた政府によって葬り去られてしまったのです。
本来であればこれで少なくとも既存の空母の運用継続が認められるところなのですけれど、イギリス政府は1968年にスエズ以東の軍事力全面撤退を決定。
スエズ以東の遠隔地における航空戦力の投射を主たる任務としていたイギリス海軍の艦隊型空母はこの決定で存在意義を失ってしまい、「イーグル」は「アークロイヤル」に続いて予定されていたファントムFG.1運用の為の改装計画が1970年に中止確定となり、「ハーミーズ」は1966年から足掛け5年に及ぶ大改装を終えて1970年中盤に復帰した「アークロイヤル」に席を譲って艦隊型空母としての使命を終えて、コマンドー母艦へ改造されることになりました。

現役艦(稼動中):3隻
「イーグル」「ハーミーズ」「ヴィクトリアス」

このうち「ヴィクトリアス」は最後の海外展開を控えた1967年11月に火災事故に見舞われて、損害自体は修理の許容範囲であったものの、退役目前の空母の修理に予算を割く余裕はないとされて翌年春に退役させられてしまいます。

長期改装中:1隻:
「アークロイヤル」

「アークロイヤル」はファントムFG.1戦闘機の運用適合化と装備の近代化、オーバーホールの大改装を1966年秋から実施中で、艦隊復帰は1970年になります。

コマンドー母艦:2隻:
「アルビオン」「ブルワーク」

1965年に退役した「セントー」のコマンドー母艦への改造はコストの問題で却下されています。

この他にウェセックス対潜ヘリコプターを搭載する大型艦として、軽巡洋艦「ブレイク」が1965年から69年にかけて対潜ヘリコプター巡洋艦として大改装を実施して再就役しています。
ウェセックスヘリコプターを4機搭載し、充実した対潜指揮能力を備えた艦ですがその改造コストは当初見積もりの二倍を優に越えて、再就役後はその対潜能力を高く評価される一方で多数の乗組員(定員900名弱)を必要とする点が大きな問題になっていくのです。

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