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2020年6月の記事

2020年6月14日 (日)

1950年代後半のイギリス海軍航空隊(FAA)

今回は前回「1950年代前半のイギリス海軍航空隊」に引き続き、1950年代後半のイギリス海軍航空隊についてです。
ウィキペディア英語版と英語サイト「ウィングス-アビエーション」、雑誌「世界の傑作機」を情報ソースとして纏めてみました。

最初に1956年末時点における、800番台の第一線飛行隊の概要です。

戦闘飛行隊:推定12個
ホーカー・シーホーク飛行隊x9個: 800. 801. 802. 803. 804. 806. 897. 898. 899.の各飛行隊
デ・ビランド・シーヴェノム飛行隊x3個: 808. 891. 893.の各飛行隊

直線翼の亜音速戦闘機、ホーカー・シーホークはスーパーマリン・アタッカーに次ぐイギリス海軍航空隊二番目の、そしてジェット機として設計された最初の艦上戦闘機です。
エンジンの排気ダクトを短縮して推力ロスを小さくしたい思惑から、単発機でありながら排気口は胴体中央に置かれたエンジンから左右の主翼の付け根に導かれて一基ずつ置かれているのが際立った特徴です。
ダクトの短縮はデ・バビランド・ヴァンパイア/ヴェノム/シーヴェノム、そしてシーヴィクセンでも行われていますが、こちらは双尾翼という人目を惹くデザイン。
一方、シーホークの方は奇をてらわないデザインで、この辺はイギリスを代表する戦闘機メーカーのホーカー社、そして社の主任設計技師シドニー・カム氏の保守性の表れなのでしょう。
1947年9月にプロトタイプが初飛行したシーホークですが、その実用化は同時期にやはり初飛行したスーパーマリン・アタッカーよりも2年近く遅れています。
しかしその将来性の高さゆえか、1951年にはチャーチル政権による「最優先機」リストにホーカー・ハンターと共に名を連ね、1953年5月に806NASが本機装備で再編成されたことで、実戦配備が始まっています。
1954年夏に第一線を退いたアタッカーと同様に、シーホークも昼間空対空戦闘と対地攻撃をその任務としていて、対地攻撃力に欠ける当時のイギリス海軍航空隊にとって頼りになる機体でした。
しかしジェット機の新陳代謝が激しい時代ゆえにシーホークの第一線配備期間も短く、1960年末に806NASが部隊解散したことで母艦任務を終了しています。
デ・ハビランド・シーヴェノムはイギリス海軍最初の迎撃レーダー搭載の複座戦闘機で、イギリス空軍において1953年末から配備を開始したデ・ハビランド・ヴェノム夜戦型の艦載機型です。
1954年に890NASまたは891NASが本機装備で再編成されたことで実戦配備が始まっています。
シーヴェノムの迎撃レーダーは、最初の量産型FAW.20は第二次大戦後半以来の旧式レーダー「Mk X」を搭載していましたけれど、二番目の量産型FAW.21ではMk xの約四倍の探知距離(約40km)を有するアメリカ製のMK21に換装され、その迎撃能力はようやくポストWW2の水準に到達しました。
量産機数においても、旧式レーダー搭載型のFAW.20は50機だったのに対して、新型レーダー搭載型のFAW.21/22は合計206機と多数に及び、1956年末時点で第一線に配備されているシーヴェノムは当初のFAW.20からFAW.21と更なる改良型のFAW.22に更新されています。
シーヴェノムはイギリス海軍本命の全天候遷音速艦上戦闘機シーヴィクセン実用化までの繋ぎで、891NASが1961年7月に解散したことで第一線から退いています。

攻撃/偵察/対潜/早期警戒飛行隊:推定8個
ウェストランド・ワイバーン飛行隊x2個: 813. 830.の各飛行隊
フェアリー・ガネット飛行隊x5個: 812. 815. 820. 824. 847.の各飛行隊
ダグラス・スカイレイダー飛行隊x1個: 849飛行隊

元々は戦闘機として開発に着手されながら、エンジン選定のトラブル等で就役時期が遅れ、結局攻撃機として玉成したのがウェストランド・ワイバーン攻撃機。
ターボプロップ機であるワイバーンはジェット機のスーパーマリン・アタッカーやホーカー・シーホークよりも初飛行は遅く(1949年3月)、部隊配備は813NASがブラックバーン・ファイアブランドからの機種改編を1953年5月に終えています。
しかしターボプロップ機の空母での運用は未解決の事案が多々あったようで、空母に展開するのは1954年4月。
展開後もカタパルト発進の際に生じる高Gが燃料系統に悪影響を及ぼしフレームアウトするなどの欠陥を露呈し、最初に展開した空母「アルビオン」で一応の作戦可能になったのは1955年春からだったそうです。
伝えられるワイバーンの性能であれば、前述したシーホークの対地攻撃能力で一応の代替が効くレベルでもあり、それもあってなのか本機装備の第一線飛行隊は前述の二つに827NASを加えて三個飛行隊のみ。
1956年10月のスエズ危機で空母イーグルに展開した830NASが実戦参加したのが母艦運用における唯一のトピックで、1958年4月に813NASが解散したことで第一線から退いています。
ワイバーンと入れ替わるように配備を開始したのが、イギリス海軍機初の遷音速戦闘攻撃機のスーパーマリン・シミターで、1958年6月に803NASが本機装備で再編されたことで第一線配備を開始しています。

フェアリー・ガネット艦上対潜哨戒機は、第二次大戦後半からの古強者のフェアリー・ファイアフライやアメリカから1953年に改めて供与されたグラマン・アヴェンチャーの後継機として1955年初頭に826NASに配備されたのを皮切りに、艦隊の対潜警戒の主役として1956年末時点で推定5個飛行隊に配備されていました。
ガネットはワイバーン同様に二重反転プロペラ装備のターボプロップ機であり、その機体デザインは魁偉であります。
しかし問題の多かったワイバーンと異なり、母艦配備はスムーズに行われて大きな問題も無かったようです。
この辺は、最初から対潜哨戒を主任務に据えて全くブレずに開発できた賜物なのかもしれません。
しかしガネットの対潜哨戒機としての寿命は短くて、1960年夏までに対潜ヘリコプターのウェストランド・ホワールウィンドにその座を譲り第一線を退いています。
しかし後述するダグラス・スカイレイダーAEW.1の後継機として、そのレーダーシステムを移植され改造されたガネットAEWはイギリス海軍最後の艦隊型空母「アークロイヤル」の最後の航海(1978年)まで早期警戒任務を続けることになったのです。
そのガネットAEWに艦隊早期警戒任務を譲ったダグラス・スカイレイダーAEW.1はアメリカ海軍の傑作レシプロ艦上攻撃機の早期警戒レーダー搭載型で、1953年7月に849NASが本機装備で再編されています。
この飛行隊は前述したアークロイヤルの最後の航海まで空母に展開したイギリス海軍唯一の固定翼早期警戒飛行隊で、1961年にガネットAEWに機種改編しています。

次に1956年末時点のイギリス海軍空母の保有状況について

現役艦(艦隊配備・海外展開): 推定3隻 :「イーグル」「アルビオン」「ブルワーク」

この時点で確実に艦隊に配備され実働体制にあるのはこの3隻と思われます。
「イーグル」(竣工時の基準排水量41,200トン)は1951年10月に竣工して、翌年春に正式に就役してイギリス海軍最強の空母の一隻として1956年10月のスエズ危機にも参加しています。
「アルビオン」と「ブルワーク」はセントー級艦隊軽空母(竣工時の基準排水量20,200トン)の二番艦と三番艦で1954年9月と11月に竣工しています。
この二隻も「イーグル」同様にスエズ危機に参加しています。

現役艦(艦隊配備は不明):推定4隻:「アークロイヤル」「オーシャン」「ウォーリア」「シーシューズ」

「アークロイヤル」(竣工時の基準排水量43,340トン)は「イーグル」の同型艦として1955年2月に竣工していますが、1956年は早くも最初の改装に入っていて、スエズ危機の時点では未だ工事中だったようです。
改装といっても60年代後半に施される大規模なものではなく、左舷両用砲の一部撤去とアングルド・デッキの前方への延長程度なので現役復帰に時間はかからなかったと思われますが、1956年末時点で復帰していたのかどうかはわかりませんでした。
「オーシャン」「ウォーリア」「シーシューズ」の三隻は第二次大戦末期に竣工したコロッサス級軽空母(竣工時の基準排水量13,190トン)で、「オーシャン」と「シーシューズ」はスエズ危機において輸送任務に就いています。
特に「オーシャン」は史上初めて、洋上の母艦からヘリコプターによる強襲作戦を実施していて、もしかしたらこの実績が後の「コマンドー母艦」実現に寄与したのかもしれません。
「ウォーリア」は太平洋に展開して、イギリスが行った一連の核実験の支援任務に就いています。
この時期はイギリス海軍におけるコロッサス級軽空母運用の末期に当たり、「シーシューズ」は1957年、「オーシャン」と「ウォーリア」は1958年に退役しています。

改装中:2隻:「セントー」「ヴィクトリアス」

セントー級艦隊軽空母の一番艦「セントー」(1953年9月竣工)はこの年の6月から1958年8月まで近代化改装を実施しています。
この改装の最大の眼目は蒸気カタパルト「BS4」の搭載による、航空機運用能力の向上にあります。
再就役した「セントー」は同型艦の「アルビオン」「ブルワーク」では不可能だった最新鋭艦上戦闘機のデ・ハビランド・シーヴィクセンの運用が可能になり、1965年まで現役に留まることになります。
「ヴィクトリアス」は1941年5月に竣工した、艦隊装甲空母のイラストリアス・グループの二番艦で、グループ六隻中本艦のみが1950年から大規模な近代化改装を受けて58年に再就役し、「セントー」以上の航空機運用能力を持つ近代的な中型ジェット機母艦として見事再生を果たしています。
しかし足掛け9年のこの工期はもう少し何とかならなかったものかと。
「ヴィクトリアス」の改装中には、並行して「イーグル」の仕上げと「セントー」級3隻と「アークロイヤル」と「ハーミーズ」の建造を行っていますから、本艦にかけられるおカネもその分限られてしまって竣工時期も遅れてしまったのでしょうけれど。

建造中:1隻:「ハーミーズ」
ハーミーズは本来、セントー級艦隊軽空母の四番艦でしたが大幅な設計変更が行われ、「ヴィクトリアス」に匹敵する航空機運用能力を備えた中型ジェット機母艦として1959年11月に竣工します。

予備艦:2隻:「グローリー」「パーシューズ」
「グローリー」と「パーシューズ」はコロッサス級軽空母で、「パーシューズ」はカタパルトを撤去して航空機輸送艦として使用された後、一度は潜水艦母艦への改造が決まって待機中でした。
しかし1957年にその計画はキャンセルされ、翌年にはスクラップになっています。
「グローリー」は1956年に退役して五年間の待機の後、1961年に除籍スクラップとなりました。
なお、1947年以降は本国で訓練艦として使われその巨体を持て余していた艦隊装甲空母イラストリアス・グループは前述した「ヴィクトリアス」以外は1955年2月に一番艦「イラストリアス」が予備艦入りしたことで現役から退き、「イラストリアス」が1956年11月に除籍スクラップ処分とされてイギリス艦籍から消えてしまいました。
イギリス財政に余裕があれば、艦の状態が悪かったという三番艦「フォーミタブル」以外の五隻は近代化改装を受けてジェット機母艦として再生したでしょうに、現実には「ヴィクトリアス」一隻がやっとだったのです。

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