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2020年5月10日 (日)

1950年代後半のイギリス空軍(RAF)その1(1956年末時点におけるイギリス空軍戦力概要)

前回「1950年代前半のイギリス空軍その2」に引き続き、今回から三回に渡って1950年代後半のイギリス空軍について備忘録的に述べていきたく存じます。
英語版ウィキペディアや英語のサイト「ウイングアビエーション」、雑誌「世界の傑作機」などを参考に纏めてみました。
多少の誤記はあるかと思いますが、大勢としては誤りは少ないだろうと自負しているところです。

最初に1956年末時点における、イギリス空軍(RAF)の戦力概要です。
この時期は第二次大戦後、イギリス空軍が平時体制になってから量的には最大規模に達していました。
この直後、1957年に有名な「1957国防白書」が発表されて、核戦力の充実が図られる一方で通常戦力の大幅削減と意欲的な新型機や新型対空ミサイルの開発が中止されてしまうのです。

戦闘飛行隊:推定66個
ホーカー・ハンターF.6戦闘飛行隊 x 5個(No19. 63. 65. 111. 263.の各飛行隊)
ホーカー・ハンターF.5戦闘飛行隊 x 5個(No1.3.34.41.56.の各飛行隊)
ホーカー・ハンターF.4戦闘飛行隊 x 19個(No4.14.20.26.43.54.67.71.74.92.93.98.112.118.130.222.234.245.247の各飛行隊)
グロスター・ジャベリンFAW.1全天候迎撃飛行隊 x 1個(No46飛行隊)
デ・ハビランド・ヴェノムNF.3夜間戦闘飛行隊 x 5個(No23.89.125.141.151の各飛行隊)
デ・ハビランド・ヴェノムNF.2夜間戦闘飛行隊 x 3個(No33.219.253の各飛行隊)
デ・ハビランド・ヴェノムFB.4戦闘爆撃飛行隊 x 7個(No5.6.8.11.73.249.266の各飛行隊)
デ・ハビランド・ヴェノムFB.1戦闘爆撃飛行隊 x 7個(No16.28.32.45.60.94.145の各飛行隊)
グロスター・ミーティアNF.12/NF.14夜間戦闘飛行隊 x 7個(No25.64.72.85.152.153.264の各飛行隊)
グロスター・ミーティアNF.11/NF.13夜間戦闘飛行隊 x 5個(No39.68.87.96.256の各飛行隊)
グロスター・ミーティアF.8戦闘飛行隊 x 2個(No74.245の各飛行隊)

1954年夏から実戦配備を開始したRAF期待の遷音速戦闘機、ホーカー・ハンターは機体の不具合と航続力不足に悩まされていたF.1とF.2から、それらを大幅に改善したF.4とF.5、そしてエンジンをパワーアップした決定版のF.6の配備が急ピッチで進められた結果、1956年末の時点で推定29個飛行隊が装備してイギリス空軍戦闘機軍団(ファイター・コマンド)の主柱になっています。
西ドイツ駐留の第2戦術空軍にもこの時点で推定10個飛行隊がハンターF.4とF.6装備で配備されています。

夜間/全天候レーダー迎撃機は依然としてヴェノムとミーティアが主力を形成していますが、両機種ともに迎撃レーダーをアメリカ製のMk21に換装して要撃能力を向上させたヴェノムNF.3とミーティアNF.12/14が多数派になってきています。
しかし第二次大戦後半以来の旧式レーダーMkXを搭載するヴェノムNF.2とミーティアNF.11/13が少なからず残っているのは、レーダー迎撃作戦上大きな課題と言えましょう。
これら旧世代機を置き換える為に、最初から迎撃レーダー搭載の後退翼全天候複座双発戦闘機として開発されたグロスター・ジャベリンは1956年初頭にNo46飛行隊が本機装備で再編成されましたけれど、本格的な配備開始は翌年以降になっています。
ジャベリンの本格配備が開始される1957年は前述した「1957国防白書」に従ってイギリス本土の防空網が抜本的な再編成を強いられて、迎撃戦闘機部隊には「ミサイル時代においては敵爆撃機を対象とした従来の迎撃戦闘は時代遅れ」として大削減の大ナタが情け容赦なく振るわれてしまいます。
ヴェノムNF型は57年秋までに全て第一線を退き、ミーティアNF型も1959年秋には第一線を引退しています。
なおジャベリン搭載の迎撃レーダーはイギリス国産のAI.17(ジャベリンFAW.1、FAW.4、FAW.5、FAW-7、FAW-9)とアメリカ製のAN/APQ-43(イギリスはAI.22と呼称、ジャベリンFAW.2、FAW.6、FAW.8)に大別されます。
性能的には最も初期のTWSレーダーと呼ばれるAI.22の方が上のようにも思われるのですが、多数派はAI.17搭載型です。
これはAI.22の信頼性が不足していたからなのか、はたまたイギリスがアメリカから買い付ける支払いのドルをケチったゆえなのかは定かではありませんが。

戦闘爆撃機においては、デ・ハビランド・ヴァンパイアFB.5/FB.9が1956年初頭にNo28飛行隊がデ・ハビランド・ヴェノムFB.1に機種改編したことで第一線を退き、ヴェノムFB.1とFB.4に機種統一されています。
しかしこのヴェノムFB型の現役寿命も前述のNF型同様に非常に短く、1957年中に推定11個飛行隊がキャンベラ爆撃機への機種改編もしくは部隊解散の憂き目を見ているのです。
この時点においては完全に旧式化している昼間戦闘機のグロスター・ミーティアF.8は現役部隊では2個飛行隊が残るのみで、これら部隊も翌年春にハンターに機種改編してミーティアF.8はイギリス空軍の第一線から退いています。

有事の際には海外に出撃するファイター・コマンドの戦闘機部隊の留守を預かってイギリス本土防衛の任に就く、イギリス補助空軍(RAuxAF)指揮下の戦闘機部隊20個はこの時点でミーティアF.8とヴァンパイアFB.5が各10個飛行隊を擁しています。
しかしこの補助空軍は「1957国防白書」で無用の長物とされてしまい、1957年3月に解散してしまうのです。
補助空軍という組織自体は1959年に復活して今日まで続いていますけれど、それは主に後方支援要員の人的プールであって以前のような戦闘部隊は保有していません。

爆撃飛行隊:推定27個
ビッカース・ヴァリアント戦略爆撃飛行隊 x 6個(No7.49.138.148.207.214の各飛行隊)
イングリッシュ・エレクトリック・キャンベラ中型爆撃飛行隊 x 21個(No9.10.12.15.21.27.35.40.50.57.59.61.76.88.100.101.109.115.139.199.213.の各飛行隊)

1951年末時点で10個飛行隊に配備されていたアブロ・リンカーン爆撃機は、リンカーン装備の最後の実戦飛行隊No97が1956年初頭に解散したことで、RAFの第一線から退いています。
イギリス国産のジェット戦略爆撃機、所謂「Vボマー」の第1号であるビッカース・ヴァリアントは当時イギリス唯一の原子爆弾「ブルーダニューブ」(重量約5トン)を搭載可能なこの時点では唯一の機体で、配備も急ピッチで進められてこの時点でRAF爆撃機軍団(ボマー・コマンド)指揮下の6個飛行隊を擁しています。
しかし肝心の「ブルーダニューブ」はイギリスの兵器級プルトニウムの製造歩留まりが相変わらず宜しくないために生産は低調で、1956年時点でもたったの14発しか保有していなかったそうです。
爆弾の中核であるピットをプルトニウムのみから、プルトニウムよりは調達状況がまだマシな兵器級高濃縮ウランとの複合式に切り替えることで生産数は上向いていくのですが、1958年に製造を終了するまでに完成させたのは58発に留まりました。
戦後イギリス軍用機の最高傑作のひとつであるキャンベラ爆撃機はリンカーンの後継として生産が進み、ボマー・コマンドと西ドイツ駐留の第2戦術空軍の双方に配備されています。
ボマー・コマンドではこの時点で推定18個飛行隊がキャンベラ装備になっています。

偵察飛行隊:推定13個
スーパーマリン・スイフトFR.5戦闘偵察飛行隊 x 2個(No2.79.の各飛行隊)
グロスター・ミーティアPR.10偵察飛行隊 x 2個(No81.541.の各飛行隊)
グロスター・ミーティアFR.9戦闘偵察飛行隊 x 1個(No208飛行隊)
イングリッシュ・エレクトリック・キャンベラPR.7偵察飛行隊 x 8個(No13.17.31.46.58.69.80.542.の各飛行隊)

スーパーマリン・スイフトは元々ホーカー・ハンターの保険的存在として開発された遷音速戦闘機で、戦闘機型スイフトF.1はハンターF.1に半年近く先んじて1954年2月にNo56飛行隊に実戦配備されました。
しかし戦闘機型スイフトはピッチアップの悪癖と高高度飛行ではリヒート(アフターバーナー)が使用不能という大きな欠陥を克服できず、ピッチアップによる墜落事故を二回起こしてしまい戦闘機型の配備は約1年で取りやめとされてしまいます。
しかし高速性能はハンターを凌ぐことから、ピッチアップは急激な機動を行わないことで回避し、作戦高度は低空を主とすることで高高度リヒート使用不能の欠陥をカバーする戦闘偵察機FR.5が開発されて実戦配備され、東西冷戦の最前線に展開するRAF第2戦術空軍に配備されています。
対ソ正面を担当する第2戦術空軍に配備されたということは、実用性は一応の水準に達しその低空高速性能は他に変えがたいものがあったのでしょう。
卓越した高速性能を持ちながらピッチアップの悪癖持ちで、昼間戦闘機としは早々に見切りをつけられて全天候迎撃戦闘機や戦術偵察機に転身して一応の成功を見た、アメリカ空軍のマクダネルF-101ブードゥーと同じような境遇のスイフトでありました。
グロスター・ミーティアの偵察機型であるPR.10とFR.9は60年代初めまで第一線の任務に就いています。
キャンペラ爆撃機の派生型である高高度偵察型のPR.7はこの時点で8個飛行隊が装備し、RAF偵察兵力の主柱を担っています。
地対空ミサイルの配備が本格化する直前のこの時期、キャンベラの亜音速ながら優秀な高空性能は高高度偵察任務にうってつけの機材でした。

海上哨戒飛行隊:推定17個
アブロ・シャクルトンMR.2飛行隊 x 7個(No37.38.42.120.206.224.228.の各飛行隊)
アブロ・シャクルトンMR.1飛行隊 x 3個(No220.240.269.の各飛行隊)
ロッキード・ネプチューンMR.2飛行隊 x 4個(No36.203.210.217.の各飛行隊)
ショート・サンダーランドGR.5飛行隊 x 3個(No201.205.230.の各飛行隊)

イギリス空軍沿岸軍団(コースタル・コマンド)の指揮下にある海上哨戒部隊はアブロ・ランカスター、リンカーンの血脈を受け継ぐシャクルトンは10個飛行隊に配備され、イギリス本土周辺の対潜及び海上哨戒の主力になっています。
1952年初頭から配備を開始したロッキード・ネプチューンMR.2はかつて海上自衛隊も装備していたアメリカ製のロッキードP2Vで、シャクルトンの増勢までの繋ぎとしての供与であった為にこの時点では退役段階に入りつつあり、1957年春までにイギリス空軍から退いています。
第二次世界大戦以来の古強者、哨戒飛行艇サンダーランドもイギリス本土に配備の2個飛行隊はネプチューンと同じく退役段階に入っており、1957年2月に部隊は解散しています。
ただし東南アジア一帯の安全保障を担うRAF極東空軍配備のNo205飛行隊(シンガポール駐留)だけは、サンダーランド装備で59年春まで活動を続けています。

大型輸送飛行隊:推定6個
ハンドレページ・ヘイスティングス飛行隊 x 5個(No24.53.70.99.511の各飛行隊)
ブラックバーン・ビバリー飛行隊 x 1個(No47飛行隊)

RAF輸送コマンド指揮下の大型輸送機は、1948年から配備を開始したヘイスティングスに加えて、56年春から配備を開始したビバリーの二機種です。
ビバリーは一基2,850馬力を発揮するセントーラス・レシプロエンジン四基を搭載する最新鋭輸送機で、この後1960年までに6個飛行隊が本機を装備します。
なお双発中型輸送機としてはビッカース・バレッタがこの時点で推定5個飛行隊に配備されています。

1950年代後半のイギリス空軍に関する特記事項は次回と次々回で。
主に核兵器関係の話になります、ではまた。

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