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2008年12月16日 (火)

興味深々なスイス空軍の新型戦闘機選定

>スイス国防省はF-5E/Fの代替機として中古のF/A-18C/Dを購入する案が出ていると報じられた件について、これを否定する声明を出したそうです。→ソースはこちら。
ttp://www.kojii.net/news/news081212.html

スイス空軍は現在、2010年から退役開始予定の米国製F-5E/FタイガーⅡ戦闘機(現有54機を2個飛行隊とアクロバットチーム「バトルイユ・スイス」に配備中)の後継機選定作業を行っております。
冷戦も終わりスイスに敵対的な周辺国も皆無、軍事、安全保障環境としてはまことに羨ましい現在のスイスですが、武装中立を全うする為の国民皆兵制に変更はなく、軍の規模も冷戦時代に比べれば縮小したとはいえ、その質的向上におさおさ怠りはなく、空軍においても現在の主力戦闘機である米国製F/A-18C/Dホーネットは冷戦終結後の1990年代後半に配備されています。
そして今また、新たな戦闘機の選定作業。我が国では、社民党の党首センセイを筆頭に、

「スイスは平和な非武装中立国!日本も見習って自衛隊も日米安保も解消して非武装中立、万が一には国連に助けてもらうか潔く降伏して皆平和に暮らしましょう~♪」

とおっしゃる方々がまたまだ少なからずいらっしゃいますが、スイスは「平和な非武装中立国」どころか、日本の「シンポミンシュジンケンゴケン派」の方々が目を剥いて怒りだしそうな重武装と、特に戦時中のえげつない行動でその名を轟かす、いい意味でも悪い意味でも「食わせ者」な国なので(戦前戦中戦後を通じて、日本国及び日本人には同じ事をやれと言われても恐らく無理)、その辺をよく認識されて、かの国へのお花畑な理想境の妄想をお持ちになりませぬよう、衷心よりご忠告申し上げる次第です。


さて話を戻しまして、記事中の候補3機種というのは、

ユーロファイター・タイフーン(英国、ドイツ、イタリア、スペイン共同開発)
ダッソー・ラファール(フランス)
JAS39グリペン(スウェーデン)
の各機なのであります。

つい先日まで、これら各機をスイスに持ち込んで、実際に飛ばして選定の為のデータを収集したとの事で、新戦闘機選定作業もいよいよ佳境に入りました。
この各機のどれを導入するのか?
それはスイス空軍が現在防空の主柱と頼むF/A-18(現在33機を保有し、3個飛行隊に配備)の今後の戦力としての位置付けにかかっていると考えます。

まずF/A-18を今後も引き続き防空の主力と位置づけるとすると、(この場合はF/A-18に相当規模のアップグレード改修が必要でしょう)新戦闘機の性格は代替対象のF-5同様、主力戦闘機を補佐する従の関係になります。
そうであるならば、性能も価格もそこそこ、加えて運用コストがライバル各機に比べて低いJAS39グリペンになります。
先述のスイス国内での飛行テストでは騒音の計測も実施されたとの事で、空軍当局も環境問題から騒音問題に神経を使っている
と推測されますが、この点も単発機のグリペンには有利に働くかもしれません。
それとは逆に、F/A-18を今後戦力として従の立場に置くのであれば、新戦闘機にまず求められるのは防空の主力としての高性能であり、F/A-18のそれを凌ぐものが不可欠になります。
そうであるならばグリペンでは能力的に不足で、タイフーンかラファールという事になります。
タイフーンとラファールの比較でいえば、共に双発機で機体規模も同等。
エンジン出力の差で飛行性能全般はタイフーンがやや有利、アビオニクスにおいては互角、ステルス性では鼻の差ながらラファール有利と言われております。

また両機とも海外販売はすこぶる芳しくありませんので、
(タイフーンは何故?のオーストリアと王室への賄賂攻勢でモノにしたサウジアラビアのみ、ラファールはゼロ。一時モロッコが導入決定というニュースが流れましたが、その後具体的な話については寡聞にして耳にしません)
両機関係各国は水面下でスイス空軍及びスイス航空産業、ひいてはスイス政財界に対して相当な値引きや生産・技術移転合戦を繰り広げているものと推察されます。
その点では、戦前からスイス航空産業と繋がりがあり、戦前戦中はモラヌソルニエMS406戦闘機シリーズのライセンス及び独自改良型生産、戦後はF/A-18の先代主力戦闘機ダッソー・ミラージュⅢのノックダウン生産(これについては予算の大幅超過でかなり問題になったようですの実績があるフランス製ラファールがやや有利というところでしょうか。
この三機種いずれかになるにせよ、来年夏には結論が出るとの事。
果たして結果は如何に? 大いに注目して待つことにしましょう。

・・・とこれで綺麗に終われれば言うことなし、私の文章量も少なくて済むのですが、そうは問屋が卸さないのがスイス流(笑)。
ここでトップ記事の「中古機導入」という第四のファクターが絡んでまいるのです。

スイスは戦闘機(攻撃機)選定に対して、戦後少なくとも二回、なんだかなぁ~と思わせる事をやった前科があります。
最初は1950年代半ば、冷戦の激化に対応すべく、それまでの主力戦闘機ヴァンパイア(共に英国製)に代わる新戦闘機として、一旦はフランス製
ダッソー・ミステールⅣの採用を決めます。
しかしそれはなんだかよくわからないうちに白紙とされ、改めてコンペを開いて比較検討した結果、くだんのミステールⅣとは性能的に五十歩百歩な英国製ホーカー・ハンターの採用を決めます。
ハンターは頑丈で長期の運用に耐え得るのが最大の特徴で、スイス空軍では独自改良を実施しつつ1994年まで運用されましたから、これはこれで正解だったのでしょう。
しかし一度内定したのをすぐ白紙にしてしまって、信義という点では大いに問題がある行動に思われます。
なお、その埋め合わせの意味もあったのか、1960年代初めの超音速全天候迎撃戦闘機選定では、スウェーデン製のサーブJ-35ドラゲンを破り、前述のミラージュⅢが選定されております。

二度目が1960年代末、ヴェノム戦闘爆撃機の後継機として米国製LTV・A-7Gの採用を一旦は決定しますが、今度は「予算の都合がつきません」でアッという間にキャンセル。
かといって東洋の某列島国のように
「予算ないなら純減純減! 周辺国とのヘイワ共存の為に純減軍縮!!」
とおっしゃる奇特な方はあの国では例えいたとしても極少数、ヴェノムの旧式化は待ったなしであり、このままでは侵略者の地上軍を空から叩く阻止能力の低下は免れず、中立国にとって重要な抑止力も低下してしまいます。
そこでスイス空軍が打った手は、既にスイス空軍で数の上では主力を成しているハンター戦闘機の増勢。
ハンターはとっくの昔に生産を終えていましたが、その頑丈な機体ゆえに英国や先進各国空軍を退役した機が、手を少し入れればなお長期の運用に耐える状態で相当に残っていたのです。
その余剰ハンターに戦闘攻撃機化改修を加えて、ヴェノムの後継に当てようというのです。
何分中古機ですので価格も安く、国の財布にもやさしい買い物です。
また既に運用中でしっかり手の内に入っている機体ですから、要員訓練のコストも最小限で済みます。
無論ハンターも当時でさえ半ば旧式化していましたが、遷音速飛行能力を持ちその能力はヴェノムよりも一段上、長期に渡り攻撃機の主力と頼むのでなければ、当面の運用には差し支えなく予算の都合がつきしだい導入する新型機までのストップギャップにもなります。
こうしてハンター中古機は各型合計52機が1971~75年に引き渡され、現在新型機への代替選定中のF-5E/Fが1970年代末から導入を開始するまでのリリーフ役として、アルプスの空を飛ぶことになりました。

いつもの如く前振りが長くなってしまい恐縮ですが、この「白紙撤回」と「中古機導入」の前例・・・。
トップ記事の「ホーネットの中古機」がにわかにクローズアップされてくるわけであります。
歴史は繰り返すといいますし、また昨今は金融危機で、深刻な安全保障上の脅威に晒されていないスイスのような国が、純減は論外としても出来るだけお金を節約したいのは予想も理解もできます。
スイス国防省はああ言ってはおりますが、痛いところを突かれるとムキになって多弁になるのが人間という生き物の業なのでありま
して、まぁ色々と考えているんじゃないのかなぁと(笑)。
新型機をバーゲン価格及びスイス航空産業に見返りの大きい好条件でゲットする為のブラフとしての「中古機」検討報道とその否定を、当局がマッチポンプをしかけているのかもしれませんし、ここへきて本当にお金が無くなったのかもしれません。

私のようなミリヲタ野次馬としてネタ的に期待しておるのは、

新型機決定

決定からいくらもたたぬうちにお金ないからと白紙撤回

中古機導入方針、本命は米海軍海兵隊で余剰になったホーネット

調査団が渡米、メーカーのボーイング社が全力で接待攻勢、中古もいいけどおニューのスパホ今なら出血大サービス! 
既存のホーネットのアップグレード改修も込み込みで、おいらも男だ二言はねぇぜ、えぇい持ってけドロボー!!

調査団ご満悦で帰国、一度は導入候補から落選したF/A-18E/Fスーパーホーネットが大どんでん返しで採用決定!
あれだけ真剣に売り込んだのにあの苦労は一体なんだったんだと泣き、喚き、怒る英、仏、独、伊、西、瑞各国関係者・・・。

とまぁ、こんな流れですかね(笑)。

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