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2006年12月18日 (月)

米海軍の9000トン型軽戦艦妄想

去る12月14日、雑誌「世界の艦船」増刊「アメリカ揚陸艦史」が発売されました。
第二次世界大戦中、実に1,052隻が完成した有名な「LST-1」型から現在鋭意建造中のドック型輸送揚陸艦「サン・アントニオ」級に至るまで、戦時標準型貨物船改造の輸送艦や旧式駆逐艦や護衛駆逐艦改造の高速輸送艦、輸送潜水艦を含めた米海軍の揚陸/輸送艦の歴史を理解できる優れものな一冊であります。
以前に「世界の艦船」本誌の特集でも米海軍揚陸艦についての特集がありましたが、アレと併せれば軍ヲタ一般常識としての米海軍揚陸艦史はおおむね頭に入る事と存じます。

私的に収穫だったのは、長年の疑問だったスペイン海軍の攻撃輸送艦の前身が戦時標準型貨物船改造の「ポール・リヴィア」級だったという事。
昔「ミリタリー・バランス」のスペイン海軍の項目で、”旧米攻撃輸送艦”という記述を目にしまして、それ以来ずーっと気になっていた次第。
攻撃輸送艦という艦種についてはその後世界の艦船を購読するうちに理解できたのですが、スペインに引き渡された2隻についてはクラス名がわからない・・・。
十年ちょっと前の世界の艦船に、「戦後各国に引き渡された米海軍艦艇」が第二特集の形で扱われた事がありましたが、その時にも触れられていませんでしたから・・・。
・・・コレ読んでる人は「なんでそんなツマンネー事気にしてんの」とお思い、でしょうが、マニアックな偏執狂の私としましては、軍ヲタ諸氏が軽く読み流す記事の中に疑問を抱きそれを解決したくてもう辛抱たまらん事が少なからずあるので・・・これなんかその一典型ですね。

本について少し欲を言わせてもらえれば、LST-1級やLSMの退役/除籍年について分かる範囲で記していただきたかったのと、「アメリカ海軍」と限定しなかった事から米陸軍籍の各種輸送艦について、概要(米海軍の特集の時に沿岸警備隊のフネについて簡単に紹介している時がありますが、ああいう扱いで結構ですので)だけでも紹介していただきたかった事でしょうか。
そう言えば90年代に入る頃にも依然横須賀で健在だったという、LST-1級改造の宿泊船(工作船だったかもしれない)はどーなったんでしょうか?
上構は原型を留めない改造っぷりのフネでしたけど。

この本に載っていたフネの中で、もっとも異色と思われるのが上陸火力支援艦「キャロネード」。
1955年に竣工した同型艦のないフネで、その任務は装備する5インチ砲とロケット弾で上陸部隊の火力支援を行う事。
往年の「モニター」のミニチュア版と言える存在ですが、この艦の後継とも言えるトンデモ艦の建造が一時米海軍内で検討されていたというのが今回の本題
(いつもながら前置きが長い・・・汗)。

時はレーガン政権第一期、当時米海軍ではソ連海軍をいかなる局面においても圧倒し得る「600隻艦隊」構想の具現化に邁進しておりました。
その一環として再就役を果たしたのが、第二次大戦後半に4隻就役した世界最強の高速戦艦「アイオワ」級。
アイオワ級はとりあえず艦のレーダーや通信システムなどの近代化、トマホーク巡航ミサイルとハープーン艦対艦ミサイルを装備して再就役しましたが、当時は更なる改造計画として、主砲第三砲塔を撤去し、代わりにVLSとハリアー運用の為の飛行甲板新設を検討しておりました。
(この案は現実のものにはなりませんでしたが、もしソ連の指導者がゴルパチョフ氏でなく頑迷な保守強硬派の人物であったら冷戦はソ連の経済的困窮から生じる軍事的暴発の危機をはらみつつ続いていたかもしれません、ゴルビーの当時のライバル・ロマノフ政治局員・書記は軍産複合体の管理を担当し、その思考パターンも軍制服組に近かったと言う話ですし、そういう状況下であればこの計画も実行されていたかも)

このアイオワ級改造計画が首尾良く実現すると計4基が陸揚げされる事になる16インチ三連装砲塔。
これを有効活用して「軽戦艦」(BBL)を4隻建造する事が部内で検討されておりました。

Bbl01

上のイラストは昭和58年夏に発行されたメカニックマガジン(KKワールドフォトプレス刊)臨時増刊「アメリカ海軍」に載っていたもので、その主要目は

全長 122m以上  全幅 25.6m 喫水 6.7m 排水量 9,000トン(基準か満載かは不明) 
乗員 280名
主機ディーゼル、2~3軸 速力20ノット(巡航速力)
兵装 16インチ三連装砲x1基、Mk45五インチ砲x3基、Mk26連装ミサイルランチャーx2基(スタンダードSAM用)、20ミリCIWSx2基。
搭載機 LAMPSx2機。
イラスト中の「15in砲塔」は16inの間違い、4in砲塔は5in砲塔の間違いです。
この本、誤植が多いなぁ・・・軍事専門雑誌じゃないからチェックが効かないのかもしれないけど。

この艦の第一の任務は主砲による火力支援、続いてスタンダードSAMや対潜ヘリによる揚陸艦部隊の護衛。
第一の任務による敵の反撃に対抗する為、強力な装甲を有します。

主砲塔の真ん前にMk26ランチャーなんぞ置いたら、射撃時の爆風で潰れちゃいそうとか、スタンダードSAM用のイルミネーターが一基しか見あたらねーじゃんとか(三次元レーダーも装備してないっぽいからO.H.ペリー級と同じローカル・ディフェンス用か?)、ヘリ2機を収容できる格納庫を上構に置くスペースなんてないじゃんとか。
そもそも一万tに満たない排水量で、主砲射撃時の反動を吸収できるのかとか、私の如きド素人でも???なレイアウト、排水量のフネなんですが・・・。
こんな「ぼくのかんがえたさいきょうもにたー」みたいなフネでも、お値段は格安(ミサイルフリゲートと同程度という試算)なんだそうです。
16インチ三連装砲を活用するのであれば、任務は火力支援一本に絞って他の兵装は自衛装備に留めるべきでしょう。
限られた排水量でアレもコレもと欲張るから、こんな冗談のようなフネになってしまいます。
合目的かつシンプルな達成目標を設定し、それに対する合理的な資源配分、これぞこのような事業の成功要件であろうと思う次第です。

ここでちょっと思考実験・・・。
米海兵隊には戦艦の大口径砲による火力支援が好きで好きでもう辛抱たまらず、アイオワ級の除籍以降も「戦艦を再役させろ!」と主張する方々がおられたとの事ですが、その方々の要求を受け入れて大口径弾による火力支援体制の整備、すなわち「軽戦艦」の焼き直しを妄想したら・・・。

アイオワ級の主砲塔は計12基。
うち1基は退役直前に事故を起こしていて恐らく使用不能、また部品取り用として数基が必要ですから、軽戦艦に積める主砲塔は6~8基、つまり建造数も6~8隻という事になります。
米海軍の強襲揚陸艦を中核とした遠征打撃群は12個整備されますが、軽戦艦は1.5~2個遠征打撃群に1隻の割合で配備される勘定になります。
主砲弾は五インチ砲用の誘導噴進弾の技術を応用して射程(40km弱)の大幅な延伸と精密誘導兵器化を図りますが、16インチ砲弾と五インチ砲弾では発砲時の衝撃等相違点が多いと思われるので、場合によっては既存の技術を応用できるレベルへの減口径弾化が必要かもしれません。
主機はガスタービン1基で1軸推進、最大速力は揚陸艦グループに追随できればいいので22ノットを発揮できればOK。
センサーは機雷回避用の高周波ソナーとXバンド三次元レーダー。
主砲以外の兵装はMk41VLSx1基4セル(ESSMx16発・・・但し「トマホークを積まずんば水上戦闘艦にあらず」な現在の米海軍ですのでトマホークの搭載を求められるかもしれません、その際は最大32セルもアリ?)とRAMまたはファランクスx2基。
他に対水上用の自衛火器少々。
搭載機は観測・哨戒用にUAVx2機、但し飛行甲板は少なくともMH-60R/Sの発着艦が可能な強度と給油設備を設ける。
装甲は主要区画の弾片防御に留める。
少しでも陸上からの敵対艦ミサイルの脅威がある間は誘導噴進弾による遠距離射撃に徹し、不用意に沿岸に近づかない

この内容で満載排水量一万五千トン、お値段は1000億円未満で・・・。
でも新主砲弾の開発に相当カネかかりそうだしなぁ、それならDDX用の新6インチ砲を一基搭載するほうがまだ現実的だよなぁ。
統合電気推進でSPY-3レーダー搭載、ESSMとトマホークを搭載する32セルのVLS、LCS並みの航空機運用能力ってあたりの・・・。
結局、妄想の上塗りに過ぎないって事ですね、軽戦艦構想というヤツは・・・。

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コメント

う~ん。ミリタリーヲタ。ネイバルヲタの心をくすぐる話ですね。
軽戦艦というよりモニターですな。
また艦艇による対地攻撃が見直されてきてますから、もしかしたら構想が復活するかも。奇妙なロケット砲弾より大口径砲のほうがテロリストには効き目がありそう。でも射程が不足かな?
まあアイオワ級戦艦やこの軽戦艦はともかく8インチ砲搭載の重巡は米海軍は保管してないのかな?
あれが残っていれば対地攻撃には非常に有効だと思うのですが・・

世艦増刊の「アメリカ巡洋艦史」が刊行された1993年
当時には、米海軍最後の重巡「デ・モイン」級2隻が未だ
モスボールされていました。

レーガン政権発足時にモスボールされていた第二次大戦型
戦闘艦はアイオワ級戦艦4隻とエセックス級空母数隻、
そしてこのデ・モイン級2隻。
アイオワ級は揃って現役復帰を果たし、エセックス級は最も
状態のよかったオリスカニーが現役復帰を真剣に検討された
(搭載可能な戦闘機F-8と早期警戒機E-1は既に予備役
からも引退していたので、海兵隊のA-4MとAV-8Aを
積む計画でしたが)のに対し、デ・モイン級には復帰の話は
なかったようです。
乗組員の数を見てみると、アイオワ級が2000名弱なのに
対しデ・モイン級は1800名弱。
基準排水量はアイオワ45000トンに対しデ・モイン
17225トン。
アメリカとて優秀な船乗りには限りがあるので、費用対
効果や対ソ政策上の政治的ツールとしての象徴的意味を
考えるとアイオワ級が優先され、デ・モイン級はずっと
繭の中というのも仕方なかったんでしょうね。

デ・モイン級2隻は確かその実艦的として処分されたように
記憶しておりますが・・・。
8インチ砲は大戦型巡洋艦の退役による対地火力支援能力
の不足を補うため、軽量自動砲が試作されて駆逐艦に搭載
してテストするところまで行った(スプルーアンス級駆逐艦
の主砲2基のうち1基をこれに換装する構想もあったよう
です)ものの、結局は採用見送り。
そのパテントを我が国が買い入れ、海自超甲型護衛艦
「やまと」の副砲として採用されて統一戦争時にその
武名を大いに轟かせたのは記憶に新しいところですねw。


そうてすか・・もう残ってないのですね。
確かに今時1800名は多すぎますね。人件費がかかりすぎる。
仰るとうり費用対効果が引き合わない。

まあ対地攻撃しかできない艦というのも不経済ですね。
やはりフリゲイト/駆逐艦の艦砲の強化が無難ですかね。

>そのパテントを我が国が買い入れ、海自超甲型護衛艦
>「やまと」の副砲として採用されて統一戦争時にその
>武名を大いに轟かせたのは記憶に新しいところですねw

何の話?

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