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2016年7月23日 (土)

英国海軍戦略原潜更新決定、しかしその前途は?

備忘録的に・・・

英議会下院(定数650)は18日夜、同国唯一の核戦力である潜水艦発射型弾道ミサイル「トライデント」を搭載する原子力潜水艦4隻の更新について採決し、賛成472、反対117で承認したそうです。→ソースはttp://www.yomiuri.co.jp/world/20160719-OYT1T50074.html?from=ytop_main1

2011年1月に当ブログで「破断界を越えつつあるか英国海軍?」という記事を書いた段階では、2016年までバンガード級戦略原潜の更新判断を先送りということになっていましたが、今回、正式に更新に対してGOサインが出たわけです。
イギリスの与党保守党は勿論、野党第一党の労働党も6割が賛成に回ったそうですが、あちらでは党議拘束は無いんですね。
我が国ですと、こういう安保マターに関しては野党はこぞって絶対反対!
民進党の保守系議員が実に言いにくそうに、「実は我々は賛成にやぶさかではないがムニャムニャ」と苦しい言い訳をするのがよくあるパターンですからね。
国家の生存に関わる最重要案件に対しては、野党も真剣に考えて議員ひとりひとりの判断に委ねる、この辺は流石イギリス、近代議会制民主主義の始祖に相応しいやり方ですな。

GDPは世界上位5位から外れ、かつて隆盛を誇った製造業は沈み、代わって国の新たなメシの種に据えた金融も、地に足が着いていない所詮は浮き草。
そんなイギリスにとって、世界の大国である象徴的な証が国連安保理常任理事国の椅子と戦略核戦力を保有していること。
このどちらも、イギリスという国家が存続する限り、自発的にはけして手放すことはないのは極東の島国の田舎の小市民でさえよく理解認識できるところです。

現在、イギリス唯一の戦略核攻撃力として保有するヴァンガード級戦略原潜は、前任のレゾリューション戦略原潜の後継として1993年から99年の間に4隻が就役しました。
アメリカ海軍のオハイオ級戦略原潜が搭載しているのと同じ、推定射程1万km以上のトライデントD5ミサイルを一隻当たり16発搭載しています。
1980年代の前半から就役を開始して今も現役のアメリカ海軍のオハイオ級に比べると、まだまだ艦齢に余裕がありそうに見えますけれど、イギリス海軍原潜の核燃料はアメリカ海軍のそれに比べて濃縮率がかなり低いそうです。
まぁこれはアメリカ海軍が異常に高い濃縮率の核燃料を使用していて、イギリスが技術的に特に劣っているわけではないのですけれど。
低濃縮の核燃料を使用しているが故に、燃料交換時期が比較的早期になってしまい、燃料交換と大抵は同時に行われる艦のオーバーホールと近代化改装、そして燃料交換の為に耐圧船穀に手を加えた後の艦の余命。
これらを勘案すると、新型艦を調達した方が長い目でみれば安上がりという判断もあるでしょう。
また原潜の建造技術を維持し続けていくには、低能率であっても造船所の仕事を確保しなければなりません。
日本でも海自の潜水艦建造に切れ目が無いのはそういう観点もありますし、冷戦終結後のアメリカにおいても、原潜の新規建造が激減してこのままでは建造技術やノウハウを維持できなくなるのではないかと問題提起されたこともありました。
イギリス海軍のように、潜水艦の所帯が小さいところはその辺が実に心配になるところです。
潜水艦のような民需要素の無い特殊な船は、予算削減で単純に造船所の仕事を無くすと、必要な技術やノウハウが人員と共に消滅散逸してしまって、後で必要になったからと言っても再起は容易ではないのです。
また軍事的側面だけではなく、建造による雇用その他の経済的側面も見逃せないところであります。

ただ、戦略原潜4隻体制を維持というのは私的にはちょっと意外だったのですよ。
財布が厳しいイギリス政府としては、もっと大胆な案を切り出してくるのではないかと思っていたのです。
4隻を3隻、いやもっと大胆に2隻に切り詰めるとか。
戦略パトロールの常時実施を諦めて、危機切迫時のみ1隻を攻撃発起海域まで進出させることにすれば、保有3隻でもやっていけるでしょう。
また外洋からの攻撃を諦めて、イギリス本土近海から攻撃することにすれば2隻でも大丈夫かもしれません。
その場合は全地球的攻撃能力を事実上失うことになりますけれど、中国を核攻撃しようなどと考えなければ、それでも構わないのではないかと思うのです。
エキセントリックなイギリス人のことですから、そこまでいくのではないかと密かに期待wしておったのてすけれど、やはり常時全地球的攻撃能力を持ち続けるのは大国イギリスの矜持なのですな。
ただ一隻当たりのミサイル搭載数は現在のヴァンガード級の16基から12基、いや8基に削減するかもしれませんな。
新型艦は就役から暫くの間は寿命延長と近代化を施したトライデントD5ミサイルを搭載することになりましょうが、それら改修にも相当のカネがかかるので、かかった分だけミサイルの配備数を減らすのは必然の流れではなかろうかと。
削減されたミサイルの数に合わせてフネの搭載能力も決めるのです。
あとはミサイル一基当たりの核弾頭数を切り詰めることになるのかどうか。
ヴァンガード級の搭載するトライデントD5ミサイルには、準戦略型と呼ばれる単弾頭型があります。
これはいわゆる「ならず者国家」に対する核攻撃オプションとして実施されているのですけれど、昨今のロシアとの対立が深刻化すると、ミサイル一基当たりの搭載核弾頭数を減らすのには抑止上問題が生じるかもしれません。
一方イランとの関係改善が進み、かの国のこれ以上の核兵器開発を抑えることが出来るならば、ならず者国家対策で高価なミサイルに弾頭を一発のみ搭載するというやり方も再検討されるでしょう。
そうなれば戦略原潜はその原点に立ち返って、核弾頭数は削減せずに近代化と寿命延長を施したトライデントミサイルにしっかりと複数弾頭を搭載して、本来の戦略核抑止専従に回帰することになるのでしょうね。

しかしながら今回の決定が実行されるかどうか危ぶまれる件が一つ。
それはイギリスのEU離脱です。
現在、イギリス海軍は戦略原潜唯一の基地としてスコットランドのファスレーンに居を構えておりますけれど、EU離脱の賛否を問う先の国民投票では、スコットランドはEU残留が多数派だったのです。
一昨年のスコットランド独立の是非を問う住民投票の結果、スコットランドはイギリスに残留することになりました。
当時の触れ込みでは、今後この件はそうとう長期に渡って再提起しないことになっていましたが、ここにきてスコットランドでは独立の是非を問う住民投票を再度やるべきという声が上がってきているそうです。
二年前に出したイギリス残留という結論は、イギリスがEUに加盟しているという前提での話だったというのです。
イギリス政府は再度の住民投票なぞ容易には認めないでしょうけれど、もし実施されてスコットランドが独立してしまったら、イギリス海軍は唯一の戦略核基地を失うことになりかねないのです。
もし独立スコットランド政府が領土内からのイギリス軍撤退を要求したら?
残るイングランド、ウェールズ、北アイルランドの海軍基地に莫大な費用をかけて移転するのか?
地元住民はそれを受け入れるのか?
なかなか難儀な話になりそうなのですよ。

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