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2016年5月13日 (金)

さらばシーハリアーそして第一世代ハリアー

備忘録的に。
5月11日、世界最後の運用可能なシーハリアーV/STOL戦闘攻撃機が、インド海軍から退役したそうです→ソースはhttp://dailynewsonline.jp/article/1125654/

何分、物持ちのよいインド海軍ですので、私はてっきりシーハリアーはまだまだ使い続けるのだろうと漠然と考えていましたので、このニュースは意外で驚きました。

イギリス空軍向けに開発されて1970年に実戦配備を開始したハリアー攻撃機を、イギリス海軍が艦隊空母の退役と搭載するファントムFG.1戦闘機空軍移管後のささやかな代替として、全通甲板型巡洋艦インヴィンシブル級搭載用として艦載機化、レーダーを搭載して制限付き全天候迎撃能力を持たせたのがシーハリアーFRS.1戦闘攻撃機です。
実戦配備は1980年でした。
1982年に生起したフォークランド紛争では、シーハリアーを搭載した軽空母ハーミーズとインヴィンシブルを主力とする艦隊が出撃し、シーハリアーが前評判(アルゼンチン空軍の主力戦闘機ミラージュⅢに対して著しく劣速)を覆す活躍で、世界にその名を轟かせました。
日本でも一時期、シーハリアー萌えの空気が広がり、80年代半ばの海上自衛隊の洋上防空能力向上計画では、イージス艦の導入とシーハリアー搭載の軽空母導入のいずれかが検討されていたりするのです。

このシーハリアーにいち早く目を付けたのが他ならぬインド海軍で、最初の発注はフォークランド紛争以前の1979年。
イギリス製軍用機の常として大きな数字を与えられ、シーハリアーMk.51と呼称されたV/STOL戦闘攻撃機はフォークランド紛争終結直後の1982年8月に初飛行し、当時インド海軍唯一のイギリス製軽空母「ヴィクラント」に、これまたイギリス製の艦上戦闘機シーホークの後継として配備されたのです。

インド海軍がシーハリアーの採用をいち早く決定したのは、彼らがシーハリアーの能力を評価したというよりは、つらつら考えるに
「これしか他に買える機体が無かった」
からかもしれません。
当時、インドはソ連の事実上の同盟国であり、アメリカからの兵器輸入などとても望めない状況にありました。
「ヴィクラント」はフォークランド紛争時のアルゼンチン海軍空母「ベインティシンコ・デ・マヨ」と同型艦です。
従って発着艦設備の改良を行えば、「ベインティシンコ・デ・マヨ」同様にアメリカ製A-4スカイホーク攻撃機の運用が、運用制限付きながら可能であったはずです。
しかしアメリカとの当時の関係では、A-4の購入などとても無理な話。
インドの事実上の同盟国たるソ連はキエフ級航空巡洋艦搭載用として、YaK-38フォージャーV/STOL戦闘攻撃機を1970年代半ばから実戦配備を開始していました。
しかし当のソ連海軍自身がこの機の運用にまだ試行錯誤をしている状況で、且つ性能的にもかなり物足りなくシーハリアーよりも明らかに劣っています。
フランス海軍は、これまたフォークランド紛争でイギリス海軍のミサイル駆逐艦を、搭載するエグゾセ対艦ミサイルで撃沈して勇名をはせたシュペル・エタンダール戦闘攻撃機を1978年から実戦配備を開始していました。
しかし前述の「ベインティシンコ・デ・マヨ」の航空機運用能力では同機の運用が困難で、フォークランドで活躍したアルゼンチン海軍所属のシュペル・エタンダールも空母からではなくアルゼンチン本土の陸上基地から作戦を実施したのです。
「ベインティシンコ・デ・マヨ」で運用困難なのであれば、その同型艦である「ヴィクラント」もシュペル・エタンダールの運用は困難なはずです。
アメリカ製の蒸気カタパルトを導入して「ヴィクラント」に装備できれば、運用もあるいは可能であったかもしれません。
しかしアメリカとの関係はそれを許しません。
A-4スカイホーク攻撃機は対米関係が悪過ぎて買えない。
Yak-38戦闘攻撃機は艦載用としてまだ不安があり性能的にも不満。
シュペル・エタンダール戦闘攻撃機は空母の能力上、運用は極めて困難。
消去法で残るのは唯一、シーハリアーだけだったのです。

本家本元のイギリス海軍では、フォークランド紛争の戦訓を取り入れた改良型のシーハリアーFA.2を開発し、既存のシーハリアーFRS.1の改造と新造機というダブルトラックで、1990年代初めから実戦配備を開始します。
シーハリアーFA.2はレーダーFCSの換装によって完全な全天候迎撃能力を備え、最新鋭のアクティブレーダー誘導式空対空ミサイルAMRAAMの運用が可能です。
しかし当時は所謂第二世代のハリアーであるアメリカ製AV-8Bが幅を利かせていて、フォークランド紛争後にハリアーを新たに導入したイタリア、スペイン両海軍はシーハリアーではなくAV-8Bを選択しています。
AV-8Bは航続性能、搭載能力においてシーハリアーを凌駕しており、加えてF/A-18ホーネット戦闘攻撃機と同じレーダーFCSを搭載したAV-8Bプラスならば、シーハリアーFA.2を凌ぐ迎撃及び対地攻撃能力を獲得できるのですから、後発のハリアー採用国がシーハリアーを選ばなかったのも当然の話なのです。
イギリス海軍のシーハリアーも、冷戦後はその高い迎撃能力も宝の持ち腐れ、重要度が増した対地攻撃ではAV-8Bやそれを逆輸入した形のイギリス空軍第二世代ハリアーよりも明らかに見劣りがして、21世紀に入ってからのイギリス軍の戦力見直し構想でリストラの対象になってしまい、2006年に退役してしまったのです。
新造のシーハリアーFA.2は18機で、その機齢はこの時点でまだ十数年。
まだまだ使える状態ですから、当時私はインド海軍が買うのだろうと思っていました。
しかしそれは果たされる事がなく、また聞いた話ではシーハリアーMk.51にインドとフランスが共同で近代化改修を実施して、フランス製アクティブレーダー誘導式空対空ミサイルMICAを運用可能とする計画も予算不足を理由にボツ。
抜本的な改修を行わないまま、最後のシーハリアー、そしておそらくは最後の第一世代ハリアーであるこのMk.51がついに退役の日を迎えたのです。
第一世代ハリアーを導入したのはイギリス空軍及び海軍、アメリカ海兵隊、インド海軍、スペイン海軍、タイ海軍ですが、米英西各軍からはとうの昔に退役、タイのハリアーはスペイン海軍を退役した中古機で機齢は40年近く、近年は活動していないようで事実上退役しているようですから。

シーハリアーの退役と共に、かつてのイギリス海軍空母「ハーミーズ」の後身であるインド海軍空母「ヴィラード」も来月に退役との事です。
「ハーミーズ」は第二次大戦末期の1944年6月に起工されましたが、戦争終結で暫く放置。
後に設計を大幅に変更して、最初からジェット艦上機運用能力を持つ中型艦隊空母として1959年11月に就役。
その後、イギリスの国防政策の抜本的変更で艦隊空母全廃の方針を受けて、70年代初めにイギリス海兵隊輸送用のコマンド母艦に改造されて再就役。
さらに対潜能力を追加された後、スキージャンプ甲板を設置してシーハリアーの効率的な運用能力を獲得し、フォークランド紛争ではイギリス派遣艦隊の旗艦として出征。
1985年に退役後、インドに売却されてインド海軍空母「ヴィラード」として1987年に再就役して、今日までインド海軍の力の象徴として君臨していたのです。
実にもって波乱万丈の生涯であります。
武勲を挙げ軍歴を全うしたハッピー・リタイヤメントと申せましょう。
この艦の退役で、第二次大戦に起源を持つ現役の水上戦闘艦は、フィリピン海軍のフリゲート艦「ラジャ・フマボン」(元アメリカ海軍カノン級護衛駆逐艦で、海上自衛隊在籍時代の艦名は「あさひ」)だけとなりました。

・・・そう言えばフィリピンはまた、大変な話になりそうですな。
私設警察みたいな処刑団を率いて、犯罪者を殺して回ったという人物が次期大統領ですよ。
いくら治安が悪いとはいえ、法治主義なにそれおいしいの!?ですがな。
そんな御仁ですから、特亜ばりの人治主義で酷いことになるんじゃないかと心配です。
南沙諸島の領有権は棚上げにして中国と経済協力する方針で、日米とも距離を置くそうですから、南沙は中国のモノになっていくのでしょうな。
その中国は南沙の埋め立て地に浮動式の原発を置くのだとか。
いざとなったら不幸な事故アルとでっかい声でわめいて、メルトダウンとかさせちゃいそうですな。
この話も怖い怖すぎます。
そんな中国を牽制するためにも、インド海軍の質的向上は日本としても歓迎すべきことなのでしょう。

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