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2016年5月21日 (土)

「第二次大戦のイギリス軍艦」で元戦艦アイアン・デューク女史に妄想を廻らす

ども。
先日、世界の艦船増刊の「第二次大戦のイギリス軍艦」が発売されたので早速入手。
私はかつて当ブログで、戦後のイギリス海軍勢力の消長について連載したほど、イギリス海軍が好きなのです。
海軍の本分は海上交通を保護して国民生活を維持すること。
それを列強海軍の中で最も貫いているのがイギリス海軍だからです。
対米艦隊決戦を前提にして全てをそこに向けて組織を構築している、帝国海軍とは根本からして違うのです。
帝国海軍は対米戦を迫られた時、今まで営々と大金をかけて築いた連合艦隊がアメリカを相手に戦えないと今更言えずに無謀な戦いに突入してしまいました。
しかしイギリス海軍にはそのような尖がった戦略などありません。
地中海でイタリア海軍と戦うのも、北海でドイツ海軍と戦うのもそれは帝国海軍が考えているような艦隊決戦ではなく、味方の海上輸送路をいかにして保護して戦争遂行能力を、国力を維持するかという基本路線の単なる派生でしかないのです。
従って全てにおいて融通無碍、帝国海軍ではおそらく発想の外であっただろう、戦艦を重要船団の護衛に付ける事も開戦直後からやっているぐらいです。
その辺が個人的に非常に好ましく思えるのですよ。

私は昭和55年に出版された旧版も持っていますが、これは現在の目で見ると本文の構成がキッチリ纏まっておらず、ちょっと見難いのです。
また艦艇の要目や艦名は巻末に纏めてあるので、本文と巻末をいちいち見返さなくてはならず、ハンディな参考文献としては、はなはだ使い勝手が悪いのですよ。
世界の艦船別冊では他に「アメリカ」「フランス」「イタリア」「ドイツ」の第二次大戦の軍艦シリーズがありますが、昭和57年発行の「ドイツ」は「イギリス」と同じ構成でこれもまた見難い。
昭和59年発行の「アメリカ」では、本文の艦船各級の艦名と要目が同一ページに纏められて俄然見やすくなったものの、翌年発行の「フランス」では要目が巻末になってまた見難くなっていました。
構成が現代風に落ち着くのは昭和61年発行の「イタリア」になります。
「アメリカ」については既に新装版が出ていて、今回の「イギリス」は第二次世界大戦の軍艦シリーズのリニューアル第二弾になります。
マニアとしては、「ドイツ」「フランス」「イタリア」の早期のリニューアル、そして「ソ連」を加えて欲しいものです。
個人的には特に「フランス」の新装版が欲しいなぁ。

さて新装版の「第二次大戦のイギリス軍艦」ですが、本文は見やすくて文句無し。
写真もこれまでの「軍艦史」シリーズで見たことが無いモノがあって、例えば重巡洋艦のページには目が釘付けでしたがな。
戦時中に電探と対空砲を装備拡充して、すっかりイカツイ艦容になった「ロンドン」「サセックス」「ノーフォーク」辺りは萌え~の一言w
残念だったのは護衛艦艇が一括りにされていたことで、私は今回新装版が出るという話を聞いて最も期待していたのが、少なくともフリゲイトを単独のコーナーで扱い、艦名と要目、写真を纏める事だったのです。
フリゲイト(及びコルベットとスループ)こそは、海上交通保護を本分とするイギリス海軍の象徴だと認識していたからです。
「アメリカ」ではフリゲイトに相当する護衛駆逐艦を、駆逐艦以上の艦種と同じ扱いで載せていますから、イギリス海軍のフリゲイトもそうしても罰は当たるまいに。
こうなれば「イギリス護衛艦史」の発行に望みをかけたいところであります。
戦前のスループから始まって戦時中のフリゲイト、コルベット、そして戦後のフリゲイトを網羅した一冊をぜひ出していただきたいところであります。

旧版に無かったフネとして、おおっと惹きつけられたのは砲術練習艦「アイアン・デューク」。
第一次世界大戦勃発時にはグランド・フリートの旗艦であった栄光の元超ド級戦艦です。
それがロンドン海軍軍縮条約締結で、主砲と装甲を減じた砲術練習艦に転じて第二次大戦を迎えました。
同じ境遇のフネとしては帝国海軍の「比叡」とアメリカ海軍の「ワイオミング」がいますけれど、前者は大改装を加えられて、高速戦艦として再生し帝国海軍得意の夜戦で敵巡洋艦部隊に大損害を与えながらも、航空攻撃で退路を封じられた形になり沈んでいます。
しかし敵艦隊と壮絶に撃ち合って相手に大損害を与えた末の最期ですから、武人のフネとしては納得のいく生涯だったと言えましょう。
「ワイオミング」は最終的には対空射撃練習艦としてアメリカ海軍の戦勝に貢献した後、1947年に除籍されていますからハッピー・リタイアと申せましょう。
しかし我らが「アイアン・デューク」は開戦翌月の空襲で損傷擱座してしまうのです。
ウィキペディア英語版によると、1941年5月のドイツ海軍戦艦「ビスマルク」の出撃に際して、ドイツ側はイギリス本国艦隊の根拠地スカパ・フロー泊地への偵察で「アイアン・デューク」と他に二隻の戦艦に偽装したダミーシップを現役の戦艦と誤認したようで、それが「ビスマルク」の出撃に影響を与えたんだとか。
イギリス本国艦隊の主力艦三隻はスカパ・フローにいるから、今が出撃のチャンスと考えたのでしょう。
その判断が巡り巡って「ビスマルク」撃沈による大西洋の海上交通死守に繋がったと思えば、死せる孔明生ける仲達を走らすと言えなくも無い「アイアン・デューク」なのでございます。

ここで妄想を廻らせてみたいのは、もし「アイアン・デューク」が健在であったなら、実戦に投入する機会は果たしてあったのか?という事。
健在な34.3サンチ連装砲三基をもって、上陸作戦時の火力支援や重要船団の護衛任務に就かせるのは果たして現実的な話であろうか?と。
30.5サンチ連装砲三基が健在なアメリカ海軍の練習戦艦「ワイオミング」も、戦争前半に火力支援艦としても使えるように考慮の上で改装が行われています。
アメリカ海軍よりもその種の艦艇に逼迫を生じていて、新規にモニターを建造する程であったイギリス海軍ですから、戦局如何では「手持ちのブツは使えるだけ使う」とばかりに実戦に引っ張り出していたのではないかと考えるところなのです。
一度は一線から退きながらも、祖国の危機に老骨に鞭打っていくさ場に馳せ参じる。
こういう画は実に日本人好みで燃えるシチュエーションではないかね諸君!

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