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2011年2月16日 (水)

2000年の英国海軍

前回エントリー「1990年のロイヤル・ネイビー」の続きで、今回はミレニアム
2000年時点の英国海軍勢力を振り返ってみます。

まず1991~2000年の英国海軍関係主要トピックスは下記の如し。

1991年
湾岸戦争(1月17日~3月3日)。
イラク沿岸の敵陣地砲撃に当たる米海軍戦艦「ウィスコンシン」の対空直衛
任務中のミサイル駆逐艦「グロスター」が、飛来したイラク軍シルクワーム
SSMをシーダートSAMで撃墜。
これは実戦で艦載SAMがSSMを撃墜した最初の事例。

ミサイル駆逐艦「ブリストル」退役(以後停泊練習艦として使用)。

1992年
特記事項無し。

1993年
本年限りでリアンダー級フリゲイトとオベロン級通常型潜水艦が英海軍
から退役。
新型SSBN一番艦「ヴァンガード」就役。

1994年
本年限りでアマゾン級フリゲイトが英海軍から退役(パキスタン海軍に売却)。
トマホーク巡航ミサイル調達計画スタート。

1995年
本年限りでアップホルダー級通常型潜水艦退役(カナダ海軍に売却)。
これにより英海軍から通常型潜水艦が姿を消す。
シーハリアーF/A.2がNATOによるボスニア紛争飛行禁止空域監視
作戦で実戦初参加。

1996年
本年限りでレゾリューション級SSBN&ポラリスSLBMが退役。
「準戦略型」トライデントⅡSLBMをSSBN「ヴィクトリアス」に配備。
これは英空軍運用の戦術核爆弾退役に伴う措置で、比較的低威力の核弾頭
1発だけをトライデントⅡSLBMに搭載して戦術/戦域核兵器としての役割を
持たせる事。
これによって英軍の核兵器は全てトライデントⅡに集約されました。

1997年
本年限りで22型バッチ1フリゲイトが英海軍から退役(ブラジル海軍に
売却)。

1998年
新型ヘリコプター揚陸艦「オーシャン」就役。
原潜「スプレンディド」がトマホーク発射試験を実施。

1999年
ドック型揚陸艦「イントレピッド」退役。
ユーゴ空爆作戦において原潜「スプレンディド」が英海軍最初のトマホーク
攻撃を実施。
仏伊と共同開発していた次期防空艦開発「ホライズン」計画から離脱。

2000年
特記事項無し。

冷戦終結、そして湾岸戦争と旧ユーゴスラビアでの一連の紛争介入によって、
英国海軍は冷戦型の対潜最重視から地域紛争介入(一度放棄したはずのNATO
域外への戦力投射)重視へ急激に変身を遂げます。
軽空母インヴィンシブル級は1990年代後半から順次改装を受けて航空機
運用能力を拡大(代わりにシーダートSAMを撤去)して、より対地攻撃力の高い
空軍のハリアーを本格的に受け入れ可能となって潜在的航空打撃力を増大さ
せ、またハリアー/シーハリアーよりも攻撃レンジの大きいトマホーク巡航ミサ
イルを米国から導入して攻撃型原潜に順次搭載し、陸上への火力投射を軽空
母とのダブルトラックで実施可能になりました。
さらに海外への戦力投射に欠かせないコマンド部隊の新たなる移動基地として
ヘリコプター揚陸艦「オーシャン」が就役して、かつてのコマンド空母退役に伴い
永らく失っていた本格的な立体揚陸作戦能力を再獲得し、これで米海軍に比べ
れば遥かに小規模であるとはいえ、自己完結的な地域紛争介入能力確保に
成功したのは流石ロイヤルネイビー、腐っても鯛(ちょっと失礼か)と言える
でしょう。

勿論、冷戦後の国防予算の削減が続く中でこのような施策を実行するから
には、この原資を生み出す為に冷徹に切り捨てられる要素もあるわけで・・・。
それが対潜任務です。

浅海域での対潜戦の主役となる筈であった最新鋭通常型潜水艦アップホルダ
ー級は、元々12隻建造予定だったのが4隻にまで切り下げられ、その4隻も
就役後数年で全艦退役という、我が国ではとても考えられない(国会で金の無駄
使いと追及されて防衛相は辞任に追い込まれるでしょうね)思い切った措置を
とられてカナダ海軍に売却。
従来の主力オベロン級は艦齢に達して退役し、これで水中での対潜戦全般は
SSNが全てを引き受ける事に。しかしそのSSNもトマホークキャリアーとして
の新たな役割を与えられていますから、冷戦中のように対潜専従とはいきま
せん。

対潜水上艦についても退役売却の大盤振る舞いで、艦齢に達しつつあった
リアンダー級の退役は、何分主機が手間のかかる蒸気タービンであります
から仕方無い話なのではありますが、より新しい21型、さらに22型バッチ1
まで海外売却という、こちらも我が国では考えられない割り切り方です・・・。

そうして迎えたミレニアム2000年の英国海軍主要戦力は以下の通り。

戦略ミサイル原潜:4隻:ヴァンガード級。戦略/準戦略核任務兼務。

攻撃型原潜:12隻:トラファルガー級7隻、スイフトシュア級5隻。トマ
ホーク運用能力を順次付加中。

軽空母:3隻:インヴィンシブル級。航空機運用能力拡大改装を順次
実施中。

ミサイル駆逐艦:11隻:42型。

フリゲイト:20隻:23型14隻、22型6隻(バッチ3x4隻、バッチ2x
2隻)。

ヘリコプター揚陸艦:1隻:オーシャン。

ドック型揚陸艦:1隻:フィアレス。

1990年と比較して量的に現状維持なのは戦略ミサイル原潜と軽空母、
揚陸艦。攻撃/哨戒潜水艦は総数で約45%、攻撃型原潜に限って
みても2割減。
通常型潜水艦全廃は浅海域での水中対潜能力を切り捨てたのですから
止む無し。
攻撃型原潜は隻数を減らした代わりに、トマホーク運用能力を付与して
対陸上火力投射能力を獲得させ質的に向上を見せましたからイーブン
といったところ。
水上戦闘艦は約35%減で、1998年に発表された”SDR”(Stra
tegicDefence Review)で水上戦闘艦に対する評価基準が
従来とは変化して優先順位が低下した(恐らく対潜能力の重要度大幅
低下と対陸上火力投射力不足)事を裏付けていると言えましょう。
何しろまだまだ若く使い出のある22型が8隻も退役しているのです。
これら主要戦力合計は52隻、満載ベースの排水量合計は約36万
トン。
トンベースでは1990年比10%強減。

一方海自はバブル崩壊とデフレで経済が疲弊しながら着々と質的向上
が続きました。
その勢力は、

DDH: 4隻:しらね型2隻、はるな型2隻。
DDG: 9隻:こんごう型4隻、はたかぜ型2隻、たちかぜ型3隻。
 DD:28隻:むらさめ型6隻、あさぎり型8隻、はつゆき型11隻、
FRAMたかつき型2隻、やまぐも型1隻。
 DE:12隻:あぶくま型6隻、ゆうばり型2隻、いしかり、ちくご型3隻。
 SS:15隻:おやしお(Ⅱ)型3隻、はるしお型6隻、ゆうしお型6隻。
LPD: 1隻:おおすみ型1隻。

護衛艦総数は53隻で、対潜ヘリ搭載(搭載可能)率約55%、アスロック
搭載率約94%、SAM搭載率約75%、SSM搭載率約81%。
何より目を惹くのはイージスDDGの就役。
潜水艦は全艦ハープーンSSMを搭載し、海自史上初のドック型揚陸艦が
就役。
主要勢力の隻数自体は微減しましたが満載ベースの排水量合計は約32
万トンで、1990年比で約25%増。
それだけ個艦の規模(すなわち能力)が大きくなった事を如実に表しております。
英海軍との比較でも隻数では上回り排水量合計は9割近くまで接近。
対陸上投射火力では比較にならないほど劣弱(そもそもそういう能力付与は
考慮外なので比較の対象にする事自体ナンセンスなのですが)ではある
ものの、洋上対潜/対空能力では互角もしくは上回るレベルに到達して
います。

さて次回は英国海軍の趨勢一応の最終回、21世紀の最初の10年間
の英海軍の動静について。

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コメント

このブログを見て驚きました。非常によく調べていると思います。
>海自と英海軍の比較
確かにドクトリンが根本的に異なるので、比較にはなりませんね。

投稿: アシナガバチ | 2011年2月19日 (土) 17時39分

アシナガバチさん、はじめまして。
ここでやっている事は手持ちの資料と
英語サイト廻りで拾った情報を纏めて
載せただけなので、ごくごく表層しか
書けない自分が歯がゆいところでして・・・。
人に見せるというよりは情報を整理して
書く事で、自分の頭の中を整理している
感じです。

英海軍との比較対象は本来仏海軍が相応しく、
英海軍の次に仏海軍を取り上げて、その中で
比較出来たらなぁと思っております。

投稿: みさっち | 2011年2月19日 (土) 22時21分

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