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2011年2月23日 (水)

英国海軍・SDSRに至る21世紀最初の十年

1960年から十年毎に区切って英国海軍主要勢力の消長を概観して参りましたが、今回はその最終回です。
破断界を越えつつあるか英国海軍?」で述べた昨秋発表のSDSRに至る、今世紀に入ってからの道程です。

2001~2010年の英国海軍主要トピックスは下記の通り。

2001年
新型SSN一番艦「アスチュート」起工。
元々はスイフトシュア級の後継であったはずが、計画遅延で結果的にトラファルガー級の代替になってしまいました。

2002年
シーハリアーF/A.2の退役を発表。
前回エントリーに書き忘れてしまったのですが、英海空軍は2000年に「ハリアー統合部隊」を発足させています。
これは海軍のシーハリアーと空軍のハリアーGR.7/9を統合運用化して、空軍所属ハリアーを軽空母への随時展開を制度的に担保するものでした。
レーダー誘導AAMを運用可能で防空/制空能力に長けたシーハリアーと、搭載量大で対地精密誘導兵器を運用可能なハリアーGR.7/9の組み合わせによって、軽空母は従来よりもより自己完結的な航空打撃力を付与されたはずでしたが・・・。
しかし英国海軍軽空母が運用される実戦環境は、米国と組んでの湾岸・イラク戦争型とアフリカの旧植民地の内戦等に対する人道的介入の二つ。
双方共に必要なのは空軍のハリアー運用能力(対地攻撃能力)であって、艦隊防空能力も制空能力も必要とされないのです。
前者は米軍の圧倒的な航空優勢の元で戦いますから、シーハリアーの出る幕は無し。
後者は相手にまともな航空戦力など存在しませんから、こちらでもシーハリアーの出番は無し。
一方対地攻撃能力においては、第一世代のシーハリアーよりも第二世代のハリアーGR.7/9が確実に勝っています。
国防予算が依然として削減されている現状ではせっかくのハリアー統合部隊も企画倒れで両手に花は無理、ならばより実効性、必要性の高い空軍ハリアーを残すという内幕ではなかったかと推測しますが実際は果たして?

計画中の新空母搭載機に米国と共同開発のF-35Bを選定。
超音速ステルスV/STOL戦闘攻撃機F-35B計画は絶賛大炎上で、昨秋発表のSDSRで英国海軍がF-35Bから米海軍型F-35Cに鞍替えを明記したのは皆様ご存知の通り。

本年限りで22型フリゲイトバッチ2が全艦退役、6隻中3隻を海外売却
(ルーマニア2隻、チリ1隻)。

フォークランド戦勝の立役者であるドック型揚陸艦「フィアレス」退役。

2003年
新型DDG一番艦「デアリング」起工。
仏伊との防空艦共同開発計画から脱退した英国独自の新世代艦隊防空艦がようやく起工です。
しかしその調達数は当初の12隻から8隻へ、最終的に6隻にまで切り下げられてしまいます。
独自設計とはいえ艦隊防空システム自体は共同開発計画のものを引き継いでいて、VLSも米国のMk41ではなくシルヴァー。
従ってトマホークやSM-3は現状では物理的に運用不能であり(シルヴァーA70型はトマホークを運用可能と言われておりますが、米国が他国開発の武器システムでトマホークが運用されるのを黙って見ているのかちょっと疑問)、この辺を今後どうしていくのか要注目。
新空母の去就如何では、英国海軍水上戦闘艦へのトマホーク装備もあり得ると思うのですが、その際は米国製VLSを追加装備するのか(艦の発達余裕はどの程度を見込んでいるのか)、それともシルヴァーを撤去してVLSを米国製に全面換装するのか?

新型ドック型揚陸艦一番艦「アルビオン」就役。
1998年に就役したヘリコプター揚陸艦「オーシャン」とコンビを組む新世代の揚陸艦です。

2004年
特記事項無し

2005年
軽空母「インヴィンシブル」退役、2010年まで予備艦として保持。
有事の際には現役復帰可能なようにモスボール保存されておりましたが、その期限は延長される事なくオークションで売却という、これまたフォークランド戦勝の立役者にとって寂しい末路でした。

2006年
シー・ハリアーF/A.2退役。
これで英海軍航空隊から艦載用固定翼機は一旦全廃です。
F-35C導入で復活の予定ですけれど、これは新空母の去就如何。
英国の今後の財政状況と次期総選挙の結果次第でどう転ぶか知れたものではありません。
何しろ我が国と異なり、冷徹にあっさり切り捨てるのが英国流ですので。
またこれで軽空母搭載ハリアーは空軍機のみとなりましたが、その空軍ハリアーも昨年末に退役してしまって、現在ただ一隻残る軽空母「イラストリアス」はその存在価値を事実上失った形に。
2014年までに退役とされておりますが、存在意義の無くなった艦をあのドライな英国政府があと3年も就役させておくとは思えず、実際には相当に前倒しされて今年の年末にはイラストリアス退役という外電に接する事になるやもしれませんね。

前年及び本年に23型フリゲート計3隻が退役、チリに売却。
古い艦で艦齢16年、新しい艦で艦齢9年での退役売却です。
この3隻の早期退役は御多聞にもれず国防予算削減によるもののようですが、本級よりも22型バッチ3を退役売却したほうが・・・
なんですけれど。
チリに売却するにしても、かの海軍は既にバッチ2を1隻購入して運用していますから要員訓練や補給面で都合が良いと素人は思うところです。
艦齢だってこの時点でまだ20年未満ですし。
この3隻の艦の状態が特別悪くて修理が高く付き、費用対効果が宜しくなかったなどの裏事情の故なのでしょうか?

2007年
特記事項無し。

2008年
特記事項無し。

2009年
新空母一番艦「クイーンエリザベス」起工。
新型DDG一番艦「デアリング」就役。

2010年
新型SSN一番艦「アスチュート」就役。
軽空母「インヴィンシブル」除籍、同「アークロイヤル」退役。
スイフトシュア級SSN最後の現役艦「セプター」退役。

そして本年(2011年)には、4月末までに22型バッチ3全艦(4隻)
が退役。
トラファルガー級SSNは2009年末に退役した「トラファルガー」に続き「タービュレント」が退役予定。
このエントリーの翌日(2月24日)に42型DDGバッチ3の「マンチェスター」が退役予定。
バッチ2最後の現役艦「リバプール」は来年まで現役に留まるようで、マンチェスターが去りリバプールが残るのは艦のオーバーホール時期の差異によるものなのかもしれません。
一方就役艦(予定)は45型DDG2隻のみ。

これからの10年間、果たして英国海軍はどのような消長の途を辿っていくのか。
前述のように財政状況の更なる悪化と次期総選挙の結果次第では、空母計画の完全中止(2隻共海外売却)と次期新型ミサイル原潜の建造数切り下げ(例えば常時戦略パトロール実施を放棄して、場合によっては母港内からSLBMを発射する態勢をとるとか・・・それなら2~3隻建造でもなんとかなるかも!?)すら絵空事では無いように思えます。
その前段としては空母の英仏共同運用の可能性もあり(噂レベルでは色々囁かれておりますけれど)、また任務部隊に空母不在時の対地攻撃火力維持の為に上述した水上戦闘艦へのトマホーク搭載が考えられるところでしょう。

英国海軍の動静には興味が尽きないところであり、今後も個人的に目を惹くトピックスがあれば、随時書いてまいりたく存じます。

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