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2011年2月 2日 (水)

1980年の英国海軍

前回エントリー「1970年の英国海軍」の続きで、今回は1980
年時点の英国海軍勢力を振り返ってみます。

まず1971~80年の英国海軍関係主要トピックスは下記の如し。

1971年
最後の中型空母「ハーミーズ」のコマンド空母化改装開始。
シンガポールを根拠地とした英国海軍唯一の海外派遣艦隊である極東
艦隊解散。

1972年
空母「イーグル」、コマンド空母「アルビオン」、対空巡洋艦「ライオン」退役。
対空巡洋艦「タイガー」、対潜ヘリ巡洋艦への改装を終え再就役。
イーグル退役に伴い、遷音速全天候艦戦シーヴィクセン退役。

1973年
空母「ハーミーズ」、コマンド空母への改装を終え再就役。
新型SAM・シーダートを装備した大型ミサイル駆逐艦「ブリストル」就役。
英国海軍第二世代の攻撃型原潜「スイフトシュア」級一番艦「スイフトシュア」
就役。

1974年
英国海軍初のオールガスタービン推進フリゲイト21型一番艦「アマゾン」就役。
最後の戦時計画型潜水艦「アンドリュー」(A級)退役。

1975年
シーダートSAMを装備する42型ミサイル駆逐艦一番艦「シェフィールド」
就役。

1976年
コマンド空母「ブルワーク」退役。

1978
英国海軍唯一の艦隊空母「アークロイヤル」、地中海ラストクルーズを終える
(11月)。
英国海軍最後のファントム飛行隊No.892sqnとバッカニア飛行隊No.
892sqn閉隊(12月)。
対潜ヘリ巡洋艦「タイガー」退役。
V/STOL戦闘攻撃機シーハリアー量産型1号機初飛行。

1979年
「アークロイヤル」退役(2月)。
22型フリゲイト一番艦「ブロードソード」就役。
コマンド空母「ブルワーク」再就役。
英国海軍最後の対潜ヘリ巡洋艦「ブレイク」退役。

1980年
軽空母「インヴィンシブル」就役。
初のシーハリアー実戦飛行隊No.800sqn編成される。


2隻の艦隊空母イーグルとアークロイヤルの退役、スエズ以東からの軍事力
撤退実行によって大英帝国時代の最後の残光も消え、ソビエト原潜を仮想敵
として対潜戦にその役割を完全にシフトした時代の英国海軍。
この10年間の変遷はまさにドラスティックの一言。
オールドネイビーの殻を脱ぎ捨て脱皮したニューネイビーはシーハリアーや
シーダートSAM、シーウルフ短SAM、スキージャンプ甲板を備えた軽空母や
強力な対潜フリゲイトや新型攻撃原潜と、より軽快なフットワークが身上でしょうか。
この辺りの割り切り方は我々日本人にはなかなか真似の出来ない英国人気質
の真骨頂であります、両国民共に基本は保守的で伝統墨守だと思うのですがね。

そんな英国海軍1980年時点での主要戦力は下記の通り。

戦略ミサイル原潜4隻:レゾソリューション級。

攻撃型原潜:12隻:スイフトシュア級6隻、チャーチル級3隻、
ヴァリアント級2隻、ドレッドノート。

ディーゼル潜:17隻:オベロン級13隻、ポーパス級4隻。

軽空母:2隻:インヴィンシブル、ハーミーズ。

コマンド空母:1隻:ブルワーク。

ウィキペディア英語版によると、1976年に退役し予備艦になっていたブル
ワークはペルーとの売却商談が進められたものの結局破談。
その後インヴィンシブルの就役遅延に伴いピンチヒッターとして1979年
初頭に再就役。インヴィンシブルが戦力化した1981年春に再び退役し予備
艦になったそうです。
南米といえばABC三大国と言われるブラジルとアルゼンチンは当時各1隻
ずつ英国製マジェスティック級軽空母を保有し、アルゼンチンとチリは米国製
ブルックリン級大型軽巡を保有。
それら三国に次ぐ南米第四の国・ペルーも、オランダ海軍から購入した一万
トン級巡洋艦アルミランテ・グラウとアギレを保有しておりましたが、更なる国威
発揚に役立つ大型軍艦が欲しかったのでしょうか?
しかし、ブルワークの売却商談が行なわれていたと思われる1976~78年当時の
ペルーは軍政下そして経済不振で、中古とはいえあのような大型軍艦を購入
する余裕は無かったと推察されますが・・・やはり国威発揚の先走りなんですかねぇ。
ただ純粋に想像してみれば、売却されペルー軍艦となったブルワークがどの
ような使われ方をされたのか実に興味深いのです。
素直にヘリコプタ強襲艦として周辺諸国への戦力投射の睨みを効かせたのか、
はたまたカタパルトとアレスティングギアの再装備を行い、米国から中古の
A-4を購入して空母として運用するつもりだったのか?
元々ブラジルやアルゼンチンの空母に比べてより艦隊空母に近い性能・大きさ
の艦ですから、実際に空母として運用を始めたら特に同じ太平洋岸のアルゼン
チンは焦ったかもしれませんね。

ミサイル駆逐艦:13隻:42型(バッチ1)7隻、ブリストル、カウンティ級5隻。

英国海軍初の本格的艦隊防空ミサイル艦として鳴り物入りでデビューしたカウ
ンティ級も、主兵装シースラグSAMの性能不足と乗組員の多さやCOSAGの
維持コストの高さなどから費用対効果に乏しく、国防予算削減に伴ってバッチ1
に属する艦が早くも3隻退役を余儀なくされています。

フリゲイト:49隻:22型(バッチ1)2隻、アマゾン級8隻、
リアンダー級26隻、ロスシー級8隻、トライバル級3隻、
ホイットビィ級2隻。

1950年代にはいくつかのタイプが同時に建造され任務の相互補完に当たっ
た英国海軍フリゲイト群も、リアンダー級において一応の収斂が成されて以後は
この路線で整備が進められております。
アマゾン級は抗堪性の低さや発達余裕の無さからリアンダー級ほどの評価は
得られませんでしたが、当時最新の22型はアマゾン級で不評だった点を克服
した高性能の対潜フリゲイトに仕上がっていました。

ドック型揚陸艦:2隻:フィアレス級。

この他に予備艦として対潜ヘリ巡洋艦タイガーとブレイクを維持。

この時点での英国海軍主要戦闘艦艇(空母、潜水艦、水上戦闘艦、ドック型
揚陸艦)は合計100隻で満載排水量は約45万トン。10年前と比較して16
~19隻、約7万トン減で、以外と削減幅が小さいのです。
艦隊空母や巡洋艦は姿を消してしまったものの、潜水艦は大して数を減ら
しておらずまた原潜増により排水量ベースではむしろ増加、駆逐艦/フリゲ
イトに関しては数こそ10隻以上減らしているものの新造艦は退役艦に比べ
て排水量がかなり大きく、こちらも排水量ベースでは大きな減少になっていな
いのが大きな要因でしょう。

さてこの時期の我が海自の勢力は下記の如し。

DDH:3隻:しらね型1隻、はるな型2隻。
DDG:3隻:たちかぜ型2隻、あまつかぜ。
アスロック搭載DD/DE:24隻:やまぐも型6隻、みねぐも型3隻、
たかつき型4隻、DEちくご型11隻。
アスロック非搭載DD/DE:16隻:あきづき型2隻、むらさめ型3隻、
あやなみ型7隻、DEいすず型4隻。
SS:13隻:涙滴型8隻(ゆうしお型1隻、うずしお型7隻)、在来船型
5隻(あさしお型4隻、おおしお)。

護衛艦はアスロック搭載率が6割を越え、大型対潜ヘリHSS-2ヘリを3機
搭載するDDHと涙滴型潜水艦は10年前には全く無かった新装備。
DDGはSAMシステムをターターDシステムにアップグレードして経空脅威
に対する対処能力が大幅に向上。
対空、対潜に限れば10年前と比べれて大きな進歩です。
英国海軍との比較でも、主要戦闘艦艇に限定すれば隻数で100対59、満載
トン数で約45万トン対約17万トン。
英国海軍は10年前には海自の概ね4倍以上の勢力でしたが、この時点では
2.5倍程度でその差は確実に縮まっているのが実感出来ます。
勿論これは単なる隻数と排水量ベースの話であって、攻撃型原潜とシーハリ
アー搭載軽空母及びコマンド空母/ドック型揚陸艦による戦力投射能力、
艦隊の長期の洋上展開を支える補給艦など後方支援艦艇はなお隔絶した
差があって、トータルでの彼我の戦闘実力に大差があるのは皆様ご存じの
通りです。

そして80年代に入ってすぐに打ち出された更なる海軍力削減方針、その只中
で生起したフォークランド紛争を経て冷戦終結を見た1990年は次回にて。

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