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2011年1月19日 (水)

1960年の英国海軍

前回のエントリー「破断界を越えつつあるか英国海軍?」に関連して
自己資料的に。

英国海軍は戦後衰退削減の一途を辿っているのは皆様ご承知と存じますが、
五十年前に遡ってその勢力の消長を回顧すべく、手持ちの資料に加え
英語サイトを見て参考にしつつ、海自と比較しながら纏めてみました。
一応現役艦のみをカウントしておりますが、甚だ不正確であり一応の目安として
お考えください。

1960年(昭和35年)
この時点の英国海軍は本国艦隊に加えて地中海艦隊と極東艦隊を保持し、水上
艦隊は依然として米海軍に次ぐ世界第二位の勢力を誇っておりました。
艦隊の主力を成す戦時計画艦に加えて戦後計画の新世代フリゲイトが就役を
開始し、その戦力の質量共に当然の事ながら未だ揺籃期と言える我が海自を
遥かに凌ぐものでしたが、米海軍との比較では空母艦載機、対空ミサイル艦
や原潜の分野において劣弱ぶりが顕著であり、斜陽の二文字を痛切に感じさせ
ずにはおれません・・・。

艦隊空母:5隻:
ハーミーズ(28,000t)、セントー(24,000t)、アルビオン(24,0
00t)、アーク・ロイヤル(43,060t)、ヴィクトリアス(35,500t)。
他にイーグルが近代化改装中(1964年復帰)。
大改装により面目を一新した戦前計画のヴィクトリアス以外はいずれも戦時
計画艦であり、米海軍ミッドウェイ級に準ずる第一級の能力を持っているの
はアークロイヤルと改装中のイーグルのみです。
ジェット機先進国でありながら、戦後のジェット機発達のペースを誤断して
セントー他の中型空母建造を継続した結果、これら空母が就役後程無くして
新型機の運用に困難をきたしたのは皆様ご承知のところであります。
艦載機は艦戦が双発複座のシーヴィクセンと亜音速のシーホーク及び
シーヴェノム、昼間迎撃と攻撃(核を含む)にシミター、AEW機にターボ
プロップ機のガネットと米国から供与されたAEW型スカイレイダー。
シーヴィクセンもシミターも遷音速機で、またシーヴィクセンが運用する
AAMは赤外線誘導のファイアストリークであり全天候性に欠けます。
超音速戦闘機F8UやSARHのスパローAAMを運用する全天候戦闘機
F3Hを擁する米海軍空母機群とは一世代遅れておりました。
なおアルビオンは翌年からコマンド空母へ改装されます(1962年再就役)。

コマンド空母:1隻:
ブルワーク(26,200t)。
英国海兵隊の強襲揚陸能力を画期的に向上させたのがコマンド空母。
能力の限界に達した中型空母の廃物利用的産物ではあるものの、転んでも
タダでは起きない英国流の真髄発揮であります。
ヘリコプターによる立体強襲能力獲得は米海軍と比べてもさほど遅れを取っ
ておりませんが、その動機は正規戦を主眼とした米海軍とは異なり、旧植民地
の紛争介入能力確保というところでしょうか?。

巡洋艦:2隻:
タイガー(1959年就役)、ライオン(1960年就役)。
他にブレイクが英国海軍最後の巡洋艦として艤装中(1961年就役)。
世界中に植民地を抱える「日の沈まぬ」大英帝国の海外発展の尖兵であっ
た巡洋艦も、戦後の植民地喪失と共にその数を打ち減らしてしまい、この
一万トン型軽巡洋艦タイガー級が最後になりました。
就役年を見ると新型艦のように思えますが、実際は戦時計画に基づき起工
しながら永らく放置され、新型の6インチ両用砲実用化で対空巡洋艦として
ようやく陽の目を見た姉妹なのです。
なお当時米海軍は対空ミサイル艦の整備を巡洋艦の改装と新型艦建造の
二本柱で急速に進めていて、英国海軍とはこれまた一世代差をつけておりま
した・・・。

駆逐艦:38隻前後?
デアリング級8隻、ウェポン級4隻、後期バトル級6隻、バトル級5隻、
C級15隻?。
C級については英語サイトでも退役年が全く解らなかった為、世界の艦船別冊
「イギリス駆逐艦史」の各艦解体年からの推定です。従って完全なる私見であり
ますのであくまで目安程度にお考えください。
駆逐艦については全艦戦時計画型で、いずれの艦も艦型は小型に過ぎて装備
の近代化を受け入れる余地がありません。
C級は高速フリゲイトに改造して活用の道も考えられるのですが、それ以前
の戦時建造型駆逐艦を改造後に着手した新型対潜フリゲイト建造と時期的
に重なってしまい、予算上の問題で着手に至らず・・・だったのでしょうか?

フリゲイト:70隻前後。
戦後計画艦:29隻:
ロスシー級(2,600t)3隻、ソールズベリ級(2,350t)4隻、
レパード級(2,520t)4隻、ブラックウッド級(1,535t)12隻、
ホイットビィ級(2,600t)6隻。
50年代に計画着手された完全な戦後世代のフリゲイトで、用途に応じて
多様なタイプが建造されました。
対潜高性能型に類別されるのがロスシー、ホイットビィの各級、対空型が
レパード級、対空警戒型がソールズベリ級、戦時量産を考慮した安価な
対潜型がブラックウッド級。
この中で今日の多用途フリゲイトのルーツとなったのがロスシー/ホイット
ビィ級になります。
戦時建造型駆逐艦改造艦:33隻:
タイプ15型23隻、タイプ16型10隻。
戦時中に大量建造された中型駆逐艦群を1950年代前半から中盤にかけて
対潜用に改造したもので、艦型装備を一変する大改造を受けた15型と予算
上の問題から装備の近代化に留めた16型に大別されます。
基準排水量1,500~1,700tの伝統的な任務・艦型の駆逐艦を、求められ
る性能が異なる対潜艦に改造するのは相当に無理のある事と思われ、費用
対効果はあまり芳しくなかったのではと推察されますが・・・。
戦後のソ連海軍潜水艦大増強に直面し、既存の駆逐艦の対潜能力向上に躍起
になったのは米海軍も同じでしたけれど、彼らは英国海軍のように艦型を一変
させるような大改造までは行ないませんでした。
費用対効果を重視するある意味においての堅実さの表れのようであります。
それに比べてタイプ15型の些かやり過ぎと思われる大改造後の姿は、
英国海軍伝統の進取の気概未だ健在と申せましょうか。
・・・しかしそれでいて空母の艦橋構造物は米空母に比べて実にクラシカル
だったりしますから・・・、英国人の発想ってよくワカラン!
しかし私は彼らのそういう部分が大好きでもあります(笑)。
大戦型フリゲイト:少なくとも8隻:
ベイ級2隻、ロック級少なくとも6隻。
原型のリバー級は1950年代末までに英国海軍から退役し、改良型のベイ級
とロック級が主にペルシャ湾に派遣されて英国の中東における権益保護に
当っておりました。
また当時の中東は英国の保護国もまたまだ多く、この地域における安全保障
には米国よりも英国が深くコミットメントしていたのです。

潜水艦:41隻前後:
戦後計画艦:7隻:オベロン級1隻、ポーパス級6隻。
戦時計画艦:34隻前後:A級15隻、T級19隻前後。
この時期、米海軍は既に10隻以上の各種原潜を保有し、ソ連も最初の
SSNノヴェンバー級の就役が始まっておりましたが、英国は戦時計画艦が
まだまだ主力。
勿論水中高速型への改造を実施してはおりますけれど・・・。

一方この頃の海自はというと・・・
国産護衛艦:18隻:
DD:あきづき型2隻、むらさめ型3隻、あやなみ型7隻、
はるかぜ型2隻。
DE:いかづち型2隻、あけぼの、わかば(旧帝国海軍丁型駆逐艦)。
供貸与護衛艦:24隻:
DD:ありあけ型2隻、あさかぜ型2隻。
DE:あさひ型2隻。
PF:くす型18隻。
対潜最重視を標榜しながら、有効な対潜兵器はあきづき型に搭載された
ウエポン・アルファのみ。
あやなみ型計画時に導入を検討した英国製スキッドは米国の反対で
ボツに。
英国海軍の対潜攻撃兵器は当時最新鋭のリンボーがHigh、スキッド
がLowの位置付けでした。英海軍では対潜が二義的な艦に搭載する
スキッドすら装備出来ない海自護衛艦の当時の対潜能力が察せられ
ます・・・
対空兵装もジェット機に対抗出来るレベルではなく、まだまだ全てにおい
て発展途上、第二次大戦の面影を色濃く残す陣容そして装備でありま
した。

潜水艦:国産艦1隻(おやしお)、貸与艦1隻(くろしお)。
たった2隻では水上部隊の対潜訓練標的と要員訓練で目一杯の状況で、
哨戒任務などまだまだ先の話でありました。

本来は現在に至るまで十年毎に書き連ねていくつもりだったのですが、
ここまでで早や140行! 相当に端折って書いてるのにこんな行数だ
もんなぁ(ニガワラ)。
紙面も尽きてしまいましたので1970年以降についてはまた次回。

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コメント

戦後フランス海軍 戦後イタリア海軍辺りの
勢力変化もみたいですね。
戦後ソ連海軍の成長からソ連崩壊とロシア海軍編
戦後アメリカ海軍の勢力消長とか

ドイツ海軍は東西分断から

投稿: tike | 2015年2月28日 (土) 17時43分

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