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2006年9月 8日 (金)

なかなか豪気なフネだよ19DD

去る9月1日、防衛庁の来年度予算概算要求の概要が公表されました。
私的に注目していたのは、弾道ミサイル防衛に当たるイージス艦の直衛
任務に就く新型護衛艦建造の件。
この新型艦は、イージス艦が弾道ミサイル探知/迎撃時に、艦のレーダーや
戦闘システムのリソースの大半を突っ込む必要があり、その際の通常航空攻撃
に対して個艦防御レベルの対処しか出来ない恐れがある為、相応の僚艦防空能力
を備えた護衛艦を建造して、イージス艦の主として対空直衛任務に付ける意図で
要求されるフネです。
そのキモであるレーダー&戦闘システムが果たして国産なのか米国製なのか・・・、
それが軍ヲタの議論の的なのであります。

前者の場合は、冷戦中の1980年代半ばより、営々粛々と開発を進めてきた
多機能レーダー(対空及び後述の国産艦対空ミサイル射撃管制を行う)システム・
通称「FCS-3型」になります。
コレはソ連軍の対艦ミサイルによる空海からの同時飽和攻撃に直面する海自が、
その対処への解答として開発に着手したモノです。
当時すでにイージス艦の導入が内定していたものの、それだけでは敵の同時飽和
攻撃に対処困難であった海自が、イージス艦以外の護衛艦にもそれに伍する多
目標同時処理能力を備えた(俗にミニ・イージスと渾名される)レーダー&戦闘
システムが必要・・・しかし当時米国にも西欧諸国にもそのようなモノが存在しな
かった事から、国産開発に踏み切り、平成16年度予算で建造される新型ヘリコ
プター護衛艦(基準排水量13,500トン、通称16DDH)から実艦装備が始ま
った最新鋭装備であります。
レーダーはやはり国産開発で、先述の16DDHから装備が始まるACDS(新戦闘
情報処理システム)に連接されて運用されます。
西欧諸国でもその後同種のレーダーシステムが開発され、ドイツとオランダが共同
開発した「APAR」は、新型ミサイル・フリゲイト・ザクセン級(満載排水量5,600
トン)/デ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン級(満載排水量6,048トン)に搭載さ
れて海自より一足早く実艦装備が始まっておりますが、「FCS-3型」はそれにも
優るとも劣らない高水準の装備であるとも言われております。

使用する艦対空ミサイルは、開発当初は航空自衛隊の国産アクティブレーダー
誘導式空対空ミサイル・AAM-4をベースにしたモノを予定していたのですが、
弾道ミサイル防衛能力導入に伴う予算の圧迫により、計画は凍結中(計画中止の
引導は正式には渡されていなかったよーな?)。
この新型ミサイルは、ミサイル本体にレーダーシーカーが付いているもので、艦
からの終末誘導は不要(ミサイルが自前のレーダーシーカーで終末誘導)な為、
FCS-3型の多目標同時処理(迎撃)能力発揮に最もふさわしい艦対空ミサイル
と言えましょう。
が、いかんせん無い袖は振れません・・・、従って使用するミサイルは最新型の
個艦防御用艦対空ミサイル・ESSM(射程30km、終末誘導には艦からの射撃
管制が必要なセミアクティブ・レーダー式)になります。
FCS-3型は、元々は使用周波数の違いからESSM運用には射撃管制レーダー
が別途必要だったと記憶しておりますが、16DDH型に搭載の「FCS-3型改」
は、前述の「APAR」のメーカー・タレス社製のミサイル管制用モジュールを組み
込んで、従来型のパラボラアンテナ型射撃管制レーダーを不要にしております。
これにより、イージス艦用のエリア防空用艦対空ミサイル・SM2(射程70km、
終末誘導はESSMと同様)も理屈の上では運用可能ですけれど、レーダーの
探知距離(最大200kmとか言われてますが)からして、ちょっとキビしいのか
なぁ?(イージス艦のそれは2倍以上)
ちなみに前述のAPARの探知距離はFCS-3型改よりもさらに探知距離小です
が、別途に遠距離三次元対空捜索用レーダー「スマートL」と組合わせる事で、
実用的なSM2の運用能力を獲得している模様です。

一方、米国製導入となると、イージス艦装備のフェーズド・アレイ・レーダーの
末弟に当たる「SPY-1F」がその対象。
コレは海自のイージス艦や米海軍イージス駆逐艦装備の「SPY-1D」の小型
軽量化タイプと言えるもので、ノルウェー海軍が建造/計画中の新型フリゲイト・
フリチョフナンセン級(満載排水量5,100トン)から実艦装備が始まります。
小型軽量で比較的安価な半面、性能もスペックダウンされておりまして、弾道
ミサイル探知/迎撃能力はありませんし、運用する艦対空ミサイルもフルスペッ
ク(イージス巡洋艦用のSPY-1A/Bと先述のSPY-1D)のイージス艦が
使用するSM2ではなく、ESSMになります。
小型軽量ゆえの探知距離の小ささから、SM2の全能力発揮が期待できない
からでしょうけれど。

某艦船雑誌では数ヶ月前、SPY-1F&イージス戦闘システムがイージス艦直衛
の新型護衛艦の装備として決定のような書かれ方をしておりまして、調達形式が
従来のFMSから商業ベースに切り替わる為、調達コストが安い(加えてソース
コードの開示もOKなんていう、本当なら非常に美味しい話もちらほら)、また従来
のイージスシステムと基本は同一なので要員訓練にもプラスとかなんとか・・・。
ただし、レーダーに使用している技術は、SPY-1系のパッシブ・フェーズドアレイ
式よりも国産の多機能レーダー(アクティブ・フェーズドアレイ式)が冗長性・拡張/
発展性共に優れておりますので、就役する2010年代前半から最低30年は
第一線で運用する艦の装備としてのSPY-1Fには甚だ?。
それに長い期間と費用をかけて開発し、ようやくモノになりそうなレーダー&
戦闘システムを、16DDH型x2隻(2番艦は今年度予算で予算成立済み)のみで
終わらせてしまっていいのか?なのが、私の思うところでございました。

さて、この度公表された来年度予算概算要求の概要(PDF文書)の24ページに、
問題の新型護衛艦(基準排水量5,000トン、通称19DD)の概略図が載って
おりました。
満載ベースに直すと6,700~6,800トンといったところで、先述のドイツやオ
ランダの新型艦よりも大型です。
向こうは艦隊の主力艦ですが、こちらは艦隊の主力艦(イージス艦)を護衛するフネ。
予算難と言いつつ、西欧諸国から見ればなかなか豪気な計画です。

印象的には、平成3~13年度予算で合計14隻が建造された「むらさめ/たか
なみ型(基準排水量4,550/ 4,650トン)の艦橋構造物に多機能レーダー
を取り付け、マストをそれまでのラディス構造から搭状のステルスマストに変更
しただけの、あまり新味はないよーなデザインですな・・・。
以前言われていたような、船体も含めて従来の護衛艦にはない革新的なスタイル
にする案は予算の壁に阻まれてアカンかったんでしょーな。
それでも建造予算の要求額は1隻848億円也・・・、先述のたかなみ型護衛艦の、
平成13年度予算での最終艦の建造費は643億円でした。

問題の「FCS-3型改かSPY-1Fか」ですが、形状から察するに前者のよーな
気がしないでもないですが・・・、いやそうであって欲しいと切に願う次第。
せっかくの国産先端技術システムの灯を消さないで欲しいなぁ・・・。

さて、ここまでダラダラと書いてきましたが、本日の本題は実はここからなんです
が・・・。
しかし紙面も尽きてしまったようなので、明日以降にまた改めて。

護衛艦とは関係ないですが、今回の来年度予算要求概要で激しく気になったのが、
航空自衛隊の主力戦闘機・F-15の近代化改修の件(1機約40億円)。
来年度の要求額はゼロ・・・(今年度は2機)。
調達計画も終焉近いF-2支援戦闘機を一括調達(通常5機程度を調達のところを
、来年度は倍の10機を要求し、トータルでの調達コストを下げる)する事の煽りを
食らった格好です。
約100機を改修なんて大風呂敷を広げておいて、フタを開けたらこんな調子で・・・。
近代化改修のタイプを従来計画の2タイプから、先進的な1タイプに統一するから
仕切り直しで来年度以降に・・・なんて話もありますけれど、実際のところどーなの
かは全くわかりません。
弾道ミサイル防衛と、以前のエントリーで書いた平成21年度から調達開始予定の
次期戦闘機に予算を食われて、無い袖は振れずに計画中止なんて事にならなきゃ
いいけど。

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コメント

今時、このような対空対戦重装備の艦が必要なのでしょうか?
防衛庁は戦略上の必要性よりも一度、ついた予算は手放さないために装備を購入してる気がします。

投稿: アラメイン伯 | 2006年10月12日 (木) 11時53分

敵地攻撃能力を持たない、専守防衛を
今後も貫き続ける限り、MDイージス艦は、
敵性国家のミサイル恫喝に対抗できる唯一の、
宝石よりも貴重な国家資産です。
国家安全保障の根幹を左右する存在として、
英仏にとっての戦略原潜に匹敵する存在と
言えましょう。
その資産を万が一の経空脅威から守り通す
為には、19DDのような多目標同時処理能力を
持つフネの直衛配備は必要です。
北朝鮮相手なら確かに不要かもしれませんが、
中長期的には中国の存在を常に頭に置いておか
ねばならず、また北と異なり、中国は東シナ海
限定ではありましょうが、MD任務群への攻撃能力を既に持ちつつありますので・・・。

ただ、今後建造される海自のDDすべてを19DD
タイプに・・・などと言っていたら護衛艦の
所要の建造計画が成り立たなくなりますので、
19DD型はMDイージス艦直衛用に4隻、次期中防
においてのDDG「はたかぜ」型の代替艦調達で、
予算上の問題からイージス艦の追加建造を
見送るのであれば、SM2の全能力発揮が可能な
ように、レーダー・戦闘システム共にバージョンアップしたフネを2隻、せいぜいこの6隻で
調達は終了でしょう。

投稿: みさっち | 2006年10月12日 (木) 22時34分

艦載SAMがSA2かESSMか、ということは艦の基本的な性格に関する事なので、予算要求の段階になってまだ決まっていない、などということが本当にあるのでしょうか?どうも「某海事誌」が大チョンボの照れ隠しに、ぼかしているだけだと言う気が…。

発表されたイメージ図をみると「改むらさめ/たかなみ型」とも言える姿で、「あまり新味はないよーな・・・」は私も全く同感です。しかし逆に言うと「あめ・なみ」クラスの近代化改装、という楽しい夢が見えてきたようにも思います。

今の建造ペースでは、護衛艦は47どころか35くらいに減ってしまうので、これまで近代化改装には腰が引けていた海自も、ぜひ積極的に取り組んでもらいたいと思います。ファンとしても納税者としても…。

投稿: はなかぜ | 2006年11月19日 (日) 08時11分

19DDの搭載SAMは差し当たりESSMでしょうね。
MD戦闘グループのとりあえずの展開海域が日本海中部
ですので、空自戦闘機の防空の傘の下での行動になりま
すし。

「あめ・なみ」クラスの近代化の必要性については私も
同感です。
ただ、「あめ・なみ」クラスにFCS-3型改をそのまま
搭載すると、トップヘビーになるとか聞いた事がありますが
・・・。
海自の場合、財務省のお役人様の目が厳しくて将来余裕を
見据えた設計はハネられるなんていう話を耳にしますし、
現状の装備品でギリギリなのかもしれませんね(涙)。

また、仮に次期防で「あめ・なみ」クラスの近代化改修が
予算化され、オーバーホールの時期に合わせて実施すると
なっても、一番艦「むらさめ」の改修が完了するのは今から
十年後ぐらいになるでしょうし、そうなると残余の艦齢と
照らし合わせてのコストパフォーマンスはどうなのか?と
いう話になりそうです。
海自の場合、「つき」クラス2隻のFRAM事業は費用対
効果の点で「失敗」と判断された過去がありますし・・・。

私的には、FCS-3型改をベースにした、重量的制限の小さい
一面/ニ面回転式のアクティブフェーズドアレイレーダーを開発して(連接する
戦闘システムはACDSをそのまま使用)、艦齢的にまだ余裕
のある「なみ」クラスに搭載・・・なんてのを妄想しますが
・・・。そういうハンディなレーダーシステムでも、ESSM
を過不足なく運用するのは可能かなぁなんて。
またそういったシステムが開発できれば、万が一日本版LCS
を建造となった際に対空センサーとしてそのまま使えますしね。
オーバースペックなのならグレードダウンすればいいだけの話
ですし。
パッシブ式だと面倒な話ですが、アクティブ式なら比較的容易
ですしね。

投稿: みさっち | 2006年11月19日 (日) 11時23分

「軍事研究」誌では、当然のようにFCS3+ESSMと書かれていましたが、「世界の艦船」の方は今月号でも相変わらず未定となっていましたね。
ただ私としては、最近の欧州艦のように中・長距離SAMの混載(例えばASROC×12+SM2×12+ESSM×32)というのも想像しています。

投稿: はなかぜ | 2006年11月29日 (水) 01時05分

はなかぜさん、こんばんわ。
19DD型のエリアディフェンス能力が「限定的」という
但し書きがある事からも、将来はわかりませんが就役時
のSM2搭載はないと私は思っているのですが・・・。
欧州のAPARやサンプソン、EMPAR搭載艦はイージス
に準じた高レベルの防空中枢艦ですので中射程のSM2や
アスター30を搭載するのは当然ですけど、19DD型は
あくまで「限定的」なフネで、欧州の防空艦と現時点で同一
には語れないのではないでしょうか。彼女たちとの比較対象
はこんごう型とあたご型です。

MD作戦グループの行動海域が空自戦闘機の援護を充分期待
できる近海である事からも、サッカーでいうFWとMFの役割
は戦闘機とイージス艦(MD態勢に入っていない場合)に任せ、
万が一のDFの役割を果たすのが19DD型だと思います。
運用するESSMの射程は30~50kmでかぜ型DDGが
運用するエリアディフェンス用のSM1MRと遜色ないレベル、
DFとして機能させるにはこれで充分ではないかと思う次第です。

ESSMはなみ/さめ型でも運用できますが、搭載レーダー&
戦闘システムの能力上、ESSMを単に「従来型シースパロー
より機動性が向上した短SAM」としてしか運用できず、
ESSMのせっかくの多目標同時処理向きの誘導方式(中間は
慣性&リンクアップ、終末がSARH)と射程を生かせない
(イージス以前の防空システム艦がSM2を運用してもその能力を
「殺した」ような運用しかできないのと同じ)ゆえのFCS-3型改
&ACDS搭載艦の建造なのでしょう。
ただし、最低三十年を期待される就役期間中に中国・韓国絡みで
不測の事態が発生しないとは限りませんので(北朝鮮相手なら
ESSMで十二分ですが、これら二国が本気で仕掛けてきた場合は
不安です)、大掛かりな改修なしにSM2(将来はSM6になるので
しょうが)を運用可能なポテンシャルをレーダー・戦闘システムに
持たせておくのは必要だと考えます。

投稿: みさっち | 2006年11月29日 (水) 23時30分

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