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2006年2月 7日 (火)

オーストラリア海軍のミサイルフリゲート近代化計画

豪 ADI 社が近代化改修を施していたオーストラリア海軍のミサイルフリゲート
・HMAS Sydney が、改修作業を終えて洋上公試を開始しました。新たに導入
したシステムを 2 ヶ月がかりでテストした後、艦を海軍に引き渡すとの事。
ttp://www.kojii.net/news/news060203.html

Sydney(シドニー)はアデレード級ミサイルフリゲートの3番艦で1983年に就役。
70年代末~80年代末、米海軍に51隻が就役したO.H.ペリー級ミサイルフリゲ
イトの同型艦です。
このクラス、外見はよく言えば機能重視、悪く言えば軍艦としての様式美や威容
に欠けるなど、軍艦ヲタの中でも好悪が分かれる艦型でありますが、私はこの
クラスの艦型も性能も非常に素晴らしく感じるところで・・・。
艦隊防空用SM1ミサイルを装備し、上級艦の指揮下においてなら強烈度紛争へ
の投入も可、中周波ソナーと曳航ソナーにより沿岸・大洋両方での対潜戦に従事
でき、運用コストが安価なのとヘリコプター2機の運用能力により、排他的経済
水域(EEZ)哨戒も沿岸での対テロ戦もOK。
欲張らなければ一粒で二度も三度も美味しい類の艦であります。
米海軍を早期退役した艦が少なからず同盟・友好国海軍に引き渡されて主力艦
の地位を占めるのも当然でしょう。

さて、オーストラリア海軍の保有する水上戦闘艦艇は大別して3つのカテゴリーに
分けられます。
A:低~強烈度紛争に対処可能な艦(艦隊防空能力を有する)
→ミサイル駆逐艦(現在保有せず)。
B:低烈度紛争対処及びEEZ哨戒を主たる任務(我が国海上保安庁のヘリコプター
搭載型巡視船と同様)とする艦(対空防御は個艦レベル)
→アデレード級ミサイル・フリゲイト6隻、アンザック級フリゲイト8隻。
C:沿岸哨戒を主たる任務とする艦→フリーマントル級哨戒艇15隻。

上記の記事のシドニーの改修は、カテゴリーAの艦不在の穴を埋める為のもので
あります。
その内容は、艦隊防空用ミサイルをSM1MR(射程40km、既に生産も終了し、
賞味期限もギリギリ)を本来イージス艦用のSM2MR(射程70km)に換装、
さらに新規に短射程(30km)の最新型対空ミサイルESSM用VLSを8セル
(ESSMを最大32発収容可能)搭載。
対空ミサイルの更新に伴い、既設の二次元対空レーダーをアップグレードと
いった具合。
これらの改修は6隻全てに実施される訳ではなく、1・2番艦は改修を行わず
退役となります。
ただ、いくらミサイルの射程を延長し、二次元対空レーダーの能力を図ったところ
で、三次元レーダーを搭載せず(艦隊防空用ミサイルの全能力発揮には三次元
レーダーが必要不可欠)、個艦防御に毛の生えた程度の従来型戦闘システム
しか持たないのでは、せっかくのSM2ミサイルも宝の持ち腐れと成りかねません。
艦隊防空を考えないのなら、SM1とそれに関連する装備を全て撤去して、代わり
にVLSの数を倍の16セルにするのも一考と思いますが・・・。

艦の余命(艦齢35年としてあと10年強)とコスト、課せられる任務の様態を考え
合わせた場合、今回の改修以外に良策が思い浮かばないのも事実で、オースト
ラリア海軍としても窮余の一策なのでしょう。
SM2MRに加えてESSMを新たに搭載するのは、前者の全能力発揮が期待
できないのを見越しての保険の意味?。

ちなみに本家本元の米海軍には30隻が在籍しておりますが、イージス艦が水上
戦闘艦のデフォルト(水上戦闘艦91隻中イージス艦は61隻)とあっては、システム
としても旧式で整備に手間のかかるSM1とその関連装備は全て撤去。
おかげでミサイルランチャーを撤去された前甲板はスカスカで、元々薄いと酷評
する向きの多かった軍艦としての威容もさらに薄く、見かけの武装はコーストガード
の大型カッター(巡視船)並み・・・。
米海軍の場合、所期の艦齢を全うする事なく、近い将来全艦退役の運命にありま
すので、現任務の沿岸での対テロ戦や麻薬密輸対処に今の装備で間に合ってい
る以上、先の見えているフネにカネをかける必要はないからですが、写真を見る
たび激しく違和感を覚えてしまいます。
主砲のない戦艦を見ているようで。

オーストラリア海軍はかつてパース級というミサイル駆逐艦を3隻保有(1965~
67に就役、前述のSM1MRを装備)して海軍の主力としていましたが、寄る年波
には勝てず今世紀初頭に退役。
これによりオーストラリア海軍から三次元レーダーを搭載する艦が不在になり、
艦隊防空能力を喪失。
一時は米海軍を早期退役したミサイル駆逐艦キッド級4隻(イージス巡洋艦と同
船体ながら、防空システムがイージス以前のもので能力が劣り、加えてトマホーク
の搭載が艦のキャパ不足で不可能な為リタイア)を購入する案も検討されました
が、今中古艦を導入すると、次世代新型艦の導入時期が先送りになると造船業界
を中心に反対意見が起こり結局見送り(その後台湾への引渡しが決まり、最初の
2隻が昨秋に就役)になり、今日に至っております。
その結果、相応の経空脅威が存在する海域への艦艇派遣は極めて限定的
(米軍の絶対的航空優勢下が絶対条件)となりました。
一方、独立主権国家たるもの、同盟国の米国が介入しないEEZ等の問題(オース
トラリアの場合、対東南アジア、特に昔から色々摩擦対立のある対インドネシア)
でも軍事力の行使に踏み切らざるを得ない事態を想定しなければなりませんので
(我が国の場合なら竹島で対韓国、尖閣で対中国)、渡洋作戦が大前提のオース
トラリア海軍にとって、艦隊防空体制が甚だ不安な現在の状態はそうそう放置
できる問題ではありません。
海軍はイージス艦3隻の取得を決定し、その1番艦は2013年に就役予定。
これら3隻が完全に戦力化し、カテゴリーAの艦隊防空任務を遂行可能になるまで
のストップギャップを勤めるのが今回のシドニー、そしてこれに続く残り3隻の改修
なのであります。

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